○○たがりの少女ss深夜の路地裏、18ほどの少女は走るように歩いていた。
家に帰ることも億劫になりフラフラと繁華街を歩いていたときのことである。
突然異様な空気を感じたのだ。
直感的に誰かに付けられていると感じた。
振り切るように歩いていたがいつまで経っても異様な感じが付き纏う。
背筋がゾッとする感じ。
正体不明な。
堪らずに振り返った。
すると。
もうそれは眼前にいた。
しかも、少女の目線の高さがその者の股間の位置にあった。
少女は叫んだ。
思い切り。
叫んだ。
なんてハレンチな!
こいつはまるで股間を見せびらかすかのようにM字開脚をして宙に浮いているではないか。
(なんで、浮いてるの?)
「どうしたい?」
「ひゃっ!」、いつの間にかそいつは私の真横に立っていた。
「どうしたい?」
「ど、どうしたいって、ど、どういう意味?」
「あれ?」
真っ白な髪に病的に灰色じみた顔。
骨が浮き出てる。
特殊メイクかな?
「まあ、良いかぁ」
そろそろ帰らないと。
と少女が思っていたら、突然身体を抱かれた!
「え!ちょっ!(お姫様抱っこ)」
「人目につくといけないからなぁ」
路地裏に連れ込まれた。
「さて。どうしたい?」
ドン!
(え?これって俗に言う壁ドン?でもこんな醜悪な顔でされてもね)
少女は全くときめかなかった。
「ちょっとまって!顔が近い!一体何なの!?さっきから私を付けて!私に何か用ですか?この不審者!警察呼びますよ」
「え……あ………あれ………あー……」、謎の男は激しく動揺している。
「うぉまえ、うぉれのこと、好きじゃないのかぁ?」
いきなり何を言い出すのかこいつは。
「ひ、人違いじゃありませんか?」
「クドラク」
「………………………え?」
「うぉれの名前!」
「クド……ラク……………」
(………え)
「あの、ゲームの。ソウルハッカーズに出てた…」
(そんなわけない!あれは創作物だ!現実の話じゃない!)
「う、嘘だ!そんなわけないもん!」
「この姿見て気づかなかったのかぁ?」
「うっ………違う……そんな夢のような………そうか………これは………夢だ…………」
壁に寄りかかって目を瞑った。
だが、言葉が入り込む。
「うぉまえの気持ちは伝わっていた。その思いの強さが、形となってこの世に存在することができるようになったんだろうな。だからうぉまえに聞こうと、思ってたんだ。どうしたいのかなって」
「わ、私は、ただ、キ、キスした……ん!?」
唇に何かが重なった。
だが目を瞑っているからわからない。
そんなはずがない。
そんなはずがない、と思いながら。
でも、もしそうだとしたら。
本物だったとしたら。
これが夢で無いのだとしたら………。
「吸って……良いか…?」
「え、な、何を?」、と、薄く目を開ける。ドキリとした。確かに、その顔は、私が良く知っている顔だった。
なんで、気づかなかった?
なんで、気づけなかった?
「クドラク…」
頭が働かなくなった私は素直に頷いた。
私よりもずっと背が高い彼は、少し屈んだ状態で私の右の首筋に顔を埋めた…。
「んっい、痛っ!!」
ぐいと私の首を左に傾け牙を突き立てる。
熱い!!
そういえば、彼は、吸血鬼だった。
吸うって、そういうことだったんだ。
軽く、キスマーク付けるだけかと思っていた…。
妙に現実味が無い。
だから余計な思考がぐるぐる回る。
熱い。
熱い。
熱い。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ゴクリ、ゴクリと、聞こえる…。
私の血を飲んでいる…。
クドラクが。
クドラクが。
身体が、熱くなる…。
熱い、キスをされているようで。
「あん…………っ!?」
思わず変な声が出て口元を抑える。
嫌だ、恥ずかしい!
でも、心臓の鼓動が激しくなって抑えられない!
あ……でも、ちょっと………吸いすぎ………。
知らぬ間に少女はクドラクの背中を抱きしめていた。
クドラクはそれを感じ取る。
愛されている。
受け入れられている。
恐れもせずに。
それは、妙に感慨深いもので、暖かさを感じた。
血の味も暖かかった。
粗方吸ったときにはもう、少女の身体は骨と皮のようになっていた。
だが、表情はとても安らかだったそうな。
「うわあああああああああああああああ」
END.