当惑を綱渡りいつもの打ち合わせ合間の雑談、の筈が流れで俺はゲイだと口を滑らせてしまった。咄嗟に誤魔化そうと頭を回転させてみたが、彼の方が早く、とはいえ意外にもずけずけと踏み込むことはなく、ああそう、でも男なら誰でもいいわけないだろうし、今相手はいるの? とか至って軽く返してくれたのには安堵した。
そして時折、どんな子がいいのかなど聞かれたりして、こちらもネタ提供と割り切り正直に答えようとしたが、これまで片思いばかりで経験が非常に少ないことを痛感させられた。しかしある時、目の前の、不器用ながら誠実に物語と向き合う男と歩むのはどうだろう、と気づき。
その一瞬で俺は混乱と苦悩を背負い込むことになった。