三代目若社長の相棒狸三代目若社長の相棒狸
彼は若くして親から会社の一つを任された新米社長だったが、実情は周囲による「お飾り」に過ぎず、窮屈であった。
そんなある日、道ばたで野良猫を見つけ戯れに近寄ったが素早く逃げられたうえ、実は狸だった。触れもしなかったのに後日なんの勘違いか、「恩返しがしたい」と青年の姿で訪ねて来てしまい、知らん帰れいや帰りませんの応酬の末一晩泊めたらようやく冷静になり、八つ当たりを謝りしばらく同居することにした。それから転がるように懇ろになり、今ではすっかり化かされたのか、仕事も本腰入れて取り組み、どうにか経営も安定してきた。化け狸はやがてほぼ人として彼を支え続け、二人はいつまでも寄り添っていたのだった。
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