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    えんどう

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    えんどう

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    ##夏の話
    ##5001-9999文字
    ##GO後の話

    いちめんのひまわり▽ひまわり畑に行く話
    ▽go終わったぐだおとよくわからない存在になった王様が旅をしてる設定のやつ
    ▽ぐだキャスギル





    『次の街に向かう前に、寄り道してもいいですか?』
    『構わぬが、観光か? 珍しいな』
    『はい、受付の人にオススメされて、気になったので』
    『そうか。ならば我は』
    『宿で待機、とか言わないでくださいよ? 一緒に行きましょう。そう時間はかかりませんから』
     ――――というのが、今朝の会話である。それから立香は荷造りをして、宿で朝食を食べ、バスを二つ乗り継いだ。どこが『そう時間はかからない』のか?
    「王様、着きましたよ」
     ガタゴトと今にも壊れそうな音を立てて走るバスが停まり、立香はギルガメッシュを促して網棚から荷物を下ろす。軽々と背負われる荷物の重さを、ギルガメッシュは知っているが、手は出さない。
    「えーと、ここからしばらく歩くみたいですね」
     地図を広げて、現在地を確認する立香は先に立って歩きだす。後に続くギルガメッシュは、手をそれぞれパンツのポケットへ突っ込み、この場に不釣り合いな革靴の底で土を踏んだ。
    「どのくらい歩く?」
    「そんなにかからないみたいですよ」
    「具体的に言わぬか。貴様のそれに従って三十キロを歩かされたこと、忘れてはおらぬぞ」
    「いやあ、あれはオレもマジかーって思いましたよう」
     刺を含んだギルガメッシュの物言いに、立香は目の端に留まる程度振り向き唇を尖らせる。そうしているとまるで子どもだが、あれは子どもの悪戯と言うには邪悪すぎる行軍だった。今も既にギルガメッシュの思う『時間がかからない距離』を大幅にオーバーしているのだ。確認はしておきたい。
    「地図も見てますから、もうすぐ……」
     立香が不自然に言葉を切り、地図をぐしゃっと握って持ち、駆けだす。突然のことに反応が遅れたギルガメッシュの視線の先で、立香は背負った大きなリュックを揺らして駆けて行ってしまう。急に走りだすな、とか、どこへ行くのか、とか、ギルガメッシュが問う前に走って行った立香は坂の頂上で振り返り、満面の笑顔でギルガメッシュに手を振る。満面の笑顔だ。目的地を見つけたのだろうか。
    「王様ー! はやくはやく!」
     急かされようともギルガメッシュの歩く速度は変わらない。立香もそれは解っているのだろう、しばらくは待ったが、痺れを切らしたのか駆け寄ってきた。ギルガメッシュの前で立ち止まり、手を伸ばしてギルガメッシュの手を掴む。
    「なんだ? 逃げるものでもないのだろう?」
    「逃げませんけど、早く見せたいので走ってください」
    「我は走ら……待て、引っ張るな」
     ぐいっと強めに引かれてギルガメッシュの発した文句に、立香は振り向いて、にへ、と笑い、問答無用で走りだした。ギルガメッシュが「待て」だの「こら」だの言っても立香は足を止めない。地面を蹴るのにあわせて上下に揺れる大きなバックパックを、目的地まで見続ける羽目になった。人気がないのが幸いだ。
    「――着きましたよ」
     スピードを落として立ち止まり、立香はギルガメッシュを振り向く。手を引かれて隣に並んだギルガメッシュは、立香の言葉に視線を上げ、
    「――」
    「すごいでしょ?」
     紅い目を瞠り、眼前に広がる黄色を見下ろすギルガメッシュに、立香は満足そうに笑って己も一面の黄色を見下ろす。その黄色は、見渡す限りに敷き詰められた花だった。花、だと思う。
    「ひまわり畑だそうですよ。百万本だか二百万本だか、とにかくたくさん植えられてて、でも知ってる人もあまりいない、隠れた名所だって宿の人が」
     立香の言葉を証明するように、周囲には二人の他誰もいない。このような場所ならば観光ルートに含まれていても良さそうだが、行程を思えばルートに組み込むには些か遠すぎる。それ故の人気のなさだろう。一面の黄色のほかは、立香とギルガメッシュだけだ。
    「近くまで行ってみましょう」
     そう言うと立香はまた歩き出した。今度は花畑へ向かって坂を下る。当然のように握ったままのギルガメッシュの手を引いて。
     一面の黄色だったひまわり畑は、近づくにつれ色を増やしていく。葉や茎の緑、筒状花を含む中心部分の濃い茶色、敷き詰められているようだった花はそれでも近づいて見れば隙間があり、その隙間からは土の色が見えた。
    「でっっか!」
     ひまわりに近づいた立香が、笑いながら声を上げる。その言葉の通り、ひまわりは立香よりも、ギルガメッシュよりも高い位置に花を咲かせており、同じ地面に並ぶと見上げなければ花が見えないほどに大きかった。
    「王様より大きいですよ」
    「何故貴様が嬉しそうなのだ」
    「いやいや、花に負ける王様ってかわいいとか思ってませんし」
    「この我が花に負けると?」
    「身長ですよ? 身長。王様は花より綺麗ですとも」
    「言わされているな? 減点だ」
    「いやいや、本心ですって」
    「昔はかわいげがあったと言うに……息をするように世辞を言う男になど、誰がしたのであろうな?」
    「王様では?」
     立香が笑う。つられて笑う。立香の背後には一面のひまわりが咲いていて、その真ん中で笑う立香にはよく似合っていた。ひまわりは陽のある方を向くという。ならば似合うのもなるほど、と思えた。立香は、日なたのような男だ。太陽の血ならば己にも混じっていたはずだが、立香のそれとは何もかもが違う。
    「王様」
    「なんだ」
    「入ってみません?」
    「は?」
     入るってどこへ。いたずらっ子のように笑う立香が指をさす。その先にあるのは。
    「――」
     こういう時、待て、と言って聞く人間ではないことはよく知っている。だから制止が遅れたし、繋ぐ手を振り払うなど考えもつかないギルガメッシュは、来た時と同じように立香に手を引かれて一面の花の中へ突っ込む羽目になった。飛び込んだ花畑は、ギルガメッシュの背を越すほどに伸びた花が陰を作り、ほんの僅か、照りつける太陽で上がりきった気温を和らげた。立香の背負うバックパックに、花と茎と葉の形の影が落ちている。ガサガサガサガサと服と葉の擦れる音が、靴が土を踏む音と混ざって聞こえるほかは、隔絶されたように何も聞こえない。足がもつれないよう気を払いながら振り向いた後ろは、もう道など見えはしなかった。
     大輪の花が作る日陰の中を、ガサガサと進んでいく。手を引く立香は前にいて、顔が見えない。
    「――」
     ぼそっと立香が何かを呟いて立ち止まる。続いてギルガメッシュも足を止め、立香の後ろ姿を見遣る。ごそごそと何かを取り出したあと、その後ろ姿が振り返り深い蒼の瞳と目があう。朗らかに笑う。
    「立香?」
    「王様、ここでちょっと待っててください」
    「は、あ?」
     待つ?ここで?
    「すぐ戻りますから」
    「え」
    「動かないでくださいね」
    「いや待っ……」
     すぐ戻りますから!と言い置いて、立香はまた茎を掻き分けながらどこぞへと行ってしまう。ギルガメッシュが伸ばした手は空を切った。ギルガメッシュはひとり、大量の花が咲き誇る中に取り残される。上を見れば青空を区切る黄色い花があり、正面にも左右にも後ろにも茎と葉しか見えない。完全に置き去りだ。いや、戻ると言ったのだから戻ってくるのだろう。ギルガメッシュは溜め息をついて、その場にしゃがみ込み、数秒躊躇ってから地面に腰を下ろした。朝から歩きっぱなしで、さすがに肉の身体には疲労が蓄積されていた。
     
       ❂❂❂
     
     立香がギルガメッシュを置き去りにして、三十分か四十分か一時間か。時刻を確認するものを持っていないギルガメッシュには何分が経過したのか解らないが、立香が戻るのをただ待つだけの時間はいやに永く感じられた。立香は一向に帰らない。動くなと言われたから動かずにいるが、いつになったら戻るのか、立香にこの場所が解るのか、そもそも何をしに行ったのか、考えど答えの得られない問いが頭の中を廻る。太陽が動いたのだろう、影の形は立香と別れた時より少しずつ変わっている。いつまで待たせるのか、まさか、まさかではあるが、本当に、
    (置き去り、ではあるまいな……)
     それこそ何故、である。が、可能性が全くないかと問われれば、答えに窮する。可能性が全くないことなど証明しようがない。立香はまだ戻らない。ギルガメッシュを取り囲む大量のひまわりが風に揺れる。ガサガサと葉ずれの音がして、立香が戻ったのかと顔を上げるのはこれで何回目だろうか。立香は一向に戻らない。
    (もしも、万が一、億が一、)
     そんなことはあるはずがないと解っていても疑念は湧く。何せ一向に戻らないのだ。こんなところにひとりで置き去りにされて、立香がどこへ行ったかも解らない。こんなことになるのなら連絡手段を持っておくべきだった。どうせ片時も離れないのだからと高を括っていた。片時も、だと?どこがだ。
     もしも、もしも立香が戻らなくて、本当にこんなところに置き去りにされたら。もうとっくにここから去っていて、バスなり列車なりに乗っていたら。
    (いかん。気が滅入る)
     ウルクに比べればこんな暑さは暑さでもないはずだが、ジリジリと隙間から照らされて汗が首筋を伝う。探しに行くべきか。でも立香が動くなと言ったのだから、この場所なら把握していて迎えに来れるということだろう。ならば動かずに待っていた方が良いのだが、もう待つのもうんざりだ。なのに待つことしかできないとは、滑稽すぎて涙が出そうだ。
    「立香…………」
    「はい」
     ガサッ、と葉ずれの音、それと同時に声がして、弾かれたように顔を上げる。瞬くギルガメッシュの視線の先に、立香がいた。
    「すみません、売店の人がなかなか離」
    「立香……!」
    「えっ」
     立香の驚いた声が耳元でする。立ち上がる勢いのままに立香を正面から抱き締めたギルガメッシュは、無遠慮な力でぎゅうぎゅう締め上げる。
    「お、王様?」
    「待たせすぎだ、大莫迦者」
    「あ、え、す、すみません……」
     待たせ、待たされすぎたのはその通りだが、立香はギルガメッシュの行動の真意が解らない。想像もしないだろう、ギルガメッシュが立香に捨てられたのかと思ったなどと。
     抱き締めた身体には熱もあり、感触もある。汗に混じって嗅ぎ慣れた匂いもする。本物だ。
    「――――…………………して、何をしに行っていたのだ、貴様は」
    「えっ? ああ、えっと、花を」
    「花?」
     腕を緩めて身体を離したギルガメッシュと立香の間に、大輪の黄色が咲く。否、咲いたのではなく立香が差し出した。
    「この先の売店でひまわりを売ってるって聞いてたんで。ちょっと買ってきました」
    「……なぜ畑の中に入ったのだ」
    「ここ突っ切った方が近道なんですよ」
    「ではなぜ我を置いて」
    「王様、ちょっと疲れてるみたいだったから、あんまり連れ回すのもな〜って……この辺涼しいからちょうど良あ痛っ」
     ごん、と立香の頭蓋にギルガメッシュの手刀による衝撃が響いた。
    「なっ、なんで!?」
    「うるさい。貴様の説明不足は悪癖だぞ」
     頭を押さえて目を白黒させる立香にギルガメッシュは幾分険のある目を向ける。なんてことはない、ギルガメッシュの不安など全て杞憂で、立香の思いやりが裏目に出ただけの話だった。立香はギルガメッシュの身体を思いやり、ギルガメッシュはそれが思いやりだと気づかずに勝手に不安がっていたのだ。これは正直恥ずかしい。とても理由は言えない。
    「そりゃ売店の話はしませんでしたけどぉ……殴らなくてもいいじゃないですか……」
    「やかましい。連絡を怠った貴様が悪い」
     だからこれは完全な八つ当たりである。立香はなぜギルガメッシュがここまで機嫌を悪くしているか解らない。頭を撫でながら首を傾げる立香は、やや拗ねたような表情を浮かべる。「驚かせたかったのに」と呟く声を聞いて少し心が痛んだ。立香が抱えているひまわりが、こちらを向いている。
    「…………」
    「?」
     す、と右手を差し出したギルガメッシュを、立香は顔と右手を交互に見、頭の上に疑問符を浮かべたような顔をする。
    「……その花は、我に献上するのであろう?」
     花を贈られて喜ぶような性質ではないが、贈り主次第ではある。それに。
    「…………あまりに貴様が戻らぬ故、置き去りを疑った。…………赦せ」
    「……………………」
     顔を背け、最後の方などほとんど聞こえないような小声で呟いたギルガメッシュを、立香は大きな眼をぱちぱちと瞬いてから凝視する。今はその蒼く澄んだ視線に晒されるのは座りが悪い。
    「王様」
    「……なんだ」
    「こっち向いてください」
    「……」
    「はやく」
    「……」
     幾らか強い声音で言われ、後ろめたいものがあるギルガメッシュは渋々従う。ギルガメッシュを見る立香はにこり、と笑って、
    「――ッ!?」
     べちん、と額の辺りで骨に響くような音がして、それからじわりと痛みが広がる。咄嗟に額を押さえたギルガメッシュは、何が起こったのか解らないという顔で立香を見る。今し方ギルガメッシュの額を打った右手をまだ宙に浮かべたままの立香は、満面の笑顔だ。
    「今のはさっきの仕返しです」
     それから、と、立香が一歩近づいて、まだ目を白黒させているギルガメッシュをするりと抱き寄せる。片手に花を抱えているため、べたりと密着したりはしなかったが、片腕でもギルガメッシュの腰くらいは余裕で抱けた。
    「ごめんなさい、不安にさせて。驚かせて……喜んでほしかったんですけど、上手くいきませんでした」
     耳元で、鼓膜に馴染む中低音が「慣れないことするもんじゃないですね」と苦笑う。吐息が耳朶を掠めてくすぐったい。
    「王様ってめちゃくちゃ頭良いのにたまに莫迦になりますよね」
    「なん」
    「オレが王様を置いて行く? そんな訳ありませんよ。なんでそんなことも解らないんですか」
     ぎゅう、というよりはもはやぎちぎちと締め上げるように腕に力が込められる。声のトーンが少し下がっているのは、もしや、
    「お、こっている、のか?」
    「オレだって怒る時は怒りますからね」
     苦しい、と言ったが立香には黙殺された。怒っているのか。疑ったから。
    「りつ、」
    「でも、王様を不安にさせたのは、ほんと、ごめんなさい」
     腕の力が一度緩んで、またぎゅうと抱き締められる。今度は苦しさを感じさせない、立香のいつもの抱き方だった。それに何故か安堵して、ギルガメッシュは立香の肩へ頭を預ける。
    「オレが王様を離すわけないじゃないですか。現世に残るようにお願いしたのはオレですよ? 死んだって離しませんよ」
     莫迦ですね、と、囁くように言う声が優しくて、胸の奥底がじわりと熱を持つ。立香の腰へ回した腕で服の裾を掴むと、耳元で、ふと笑う音がした。
    「安心しました?」
     つけあがるな、と、言うべきところではあるが、胸の熱に邪魔をされて声にはならなかった。代わりに肩へぐりぐりと額を押しつける。
    「いたたたたた王様痛い痛い痛い」
     と言いながらも引き剥がしたりはしない立香に、今度はギルガメッシュが小さく笑い、服を離して身体も引く。「痛え〜」と言いながら肩をさする立香は半笑いで、なんとも間抜けた顔をしていた。
    「次の街へ着いたら我のスマホを買いに行くぞ」
    「え?」
    「連絡さえ取れればこんな……目に遭わずに済んだのだ」
    「あれ? 王様、タブレット持ってませんでしたっけ」
    「あれは蔵だ」
    「あっ……」
     えーゆーおー!と立香が叫び、ギルガメッシュは今まで立香が気づいていなかったことを知って笑う。その笑顔を見て立香が安堵したのは、見ないふりをした。
    「じゃあ王様、これ持って」
    「ん?」
     ばさりとひまわりの束を押しつけるように渡され、ギルガメッシュは反射的に受け取る。大輪の花が十本ほどだろうか。一様に同じ方向を向いていた。
    「やっぱ似合いますね」
    「我は貴様の方が似合っていると思うが」
    「オレが? いやいや王様ですよ」
    「いや貴様が」
    「いや王様が」
     そこまで言うと立香はもう半分以上笑っていて、ギルガメッシュも笑いを堪えられなかった。ふたり笑いだし、ギルガメッシュは立香に来た時と同じように手を掴まれて引かれる。今度はただ引っ張られるだけでなく、隣へ並んで茎を避けて歩いた。立香の横顔に花を翳したギルガメッシュは、やはりこれは立香の方が似合うと思い、眩しげに瞳を細めた。風が吹き、ひまわりを揺らす。握られた手に少しだけ力を込めると、強く握り返された。
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