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    えんどう

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    えんどう

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    ▽流血表現があります

    ##5001-9999文字

    王様がぐだおの鼻血を舐める話▽王様がぐだおの鼻血を舐めます
    ▽ちょっといかがわしい
    ▽ぐだキャスギル





    ――か、……つか、りつ……
     誰かが名前を呼んでいる。酷く焦ったような、切羽詰まったような、悲痛な声だ。それでも耳に心地よく響く、愛しい低音。この声を、オレは知っている。
    「――起きろ、起きぬか立香! 目を開けよ!」
     怒鳴るような声と裏腹に優しく揺らされて、すっかり爆睡していたらしい意識は錘を引きずるようにのろのろと覚醒する。瞼を開けるのも億劫だったが、呼ぶ声が緊急事態を告げている。起きねば。
    「ん⌇⌇⌇⌇……」
    「立香!」
     とりあえずもう眠ってはいないことをアピールしようと唸る立香の声を聞いたその人は、あからさまに安堵を滲ませて揺する手を止めた。もうちょっとで目を開けるからもう少し待ってほしい。割とべろんべろんに疲れていたのだ。ああでも、この人がこんなに慌てるような事態なら早く起きないと。
    「お……うさま……」
     おはようございます、と不明瞭に言いながら目を開けて身体を起こそうとする。が、掴まれたままの肩はベッドに押しつけられ、その試みは阻害された。
    「…………? 王様?」
    「無理に動かずともよい。意識はあるな。どこか痛むところは? 何があった? 立香、貴様今日はいつもの周回だと言っていなかったか? 何故我を連れて……いや、それはもうよい。待て、今ダ・ヴィンチを呼ぶ。話はそれからだ。大人しくしていろ」
    「あ、あの……」
     口を挟む隙もないまま矢継ぎ早に言葉を繰り出されて状況が把握できない立香を置き去りにして、ギルガメッシュは通信機でダ・ヴィンチを呼び出す。突然の通信に何事か問うダ・ヴィンチの声に「いいから来い」の一点張りなのはどうかと思うが、何かよほどの一大事なのだろう。ダ・ヴィンチもすぐに察したらしく、短く了承の返事をして通信を切った。
    「……立香、どこか痛むか?」
    「え? いえ、別にどこも……」
     深い眠りの途中で起こされた怠さはあるが、それ以外はいつもと変わらない。ベッドに乗り上げて立香を覗き込んでいるギルガメッシュのふたつの紅色に浮かんでいる心配とか不安とか苛立ちとかそういうものを綯い交ぜにした視線を向けられる理由が解らない。なぜそんな顔をしているのだろう。
    「王様? 何かあったんですか? どうしてそんな……」
     押さえつけられていて起き上がることはできないが、せめてそんな顔をやめさせられないかとその頬に触れようと手を伸ばし、
    「……………ん?」
     しろい頬に触れる寸前で手を止めた。手がおかしい。
    「んん?」
     目の前へ手を寄せて手のひらと手の甲と、手首を返して見比べるように見る。なんだこれ。
    「んんん」
    「なんだ、やはりどこか痛むのか」
     立香の行動に眉間の皺を深くしたギルガメッシュが覗き込んでくる。さっきから身体のことを聞いてくるのはコレのせいか?
     乾いて黒ずんでバリバリになっていたが、右手にべったりと血が付着していた。
    「や、オレはどこも怪我してないですけど……この血、どこ、か ら…………」
     言いながら頭を動かして横を向いた立香の語尾が消える。目の前に、手と同じに乾いて黒ずんだ血液と思われる染みが、枕からシーツへと大きな水溜りの跡を残していた。
    「なん……っ、じゃ、こりゃああああああああ」

       ✿ ✿ ✿

    「あっはっはっはっは! いや⌇⌇王サマが血相変えて『すぐに来い』なんて言うからまた立香君がレムレムしたのかと思ったよ!」
    「いい加減にそのよく回る舌を収めよ。できぬと言うなら我が二度とその口開けぬようにしてやるが?」
    「そんなに恥ずかしがるなよ、間違いは誰にでもあることだぜ?」
    「ずびばぜん……王様に話したことなかったんで……」
    「いや誰も悪くない! キミくらいの年頃の男子にはたまにあることだ。そして血だまりの中で人が倒れてたら誰でも驚く! まさかそれが鼻血だとは思わないさ!」
     ベッドの縁に腰掛けている自分の左隣に座り、大笑いするダ・ヴィンチにバシバシバシバシと背中を叩かれながら、立香は鼻を押さえて笑顔を作る。
     本当に時々だが、立香は何もしていないのに鼻血が出ることがあった。それ自体は大したことはないのだが、今回はどうやら寝ている間に出たのがそれなりの出血量で、ダ・ヴィンチの言う通り血だまりの中に行き倒れているような状態で寝ていたらしい。部屋に帰ってきて人が血だまりの中に倒れていたらそりゃ驚く。ダ・ヴィンチの言う通りだ。ギルガメッシュも例外ではなかったらしい。あれは自分のことを心配してくれていたのか、と先程の様子を思い出して申し訳ないと思いつつも嬉しくなるのは止められない。めちゃくちゃ心配してくれてたんだな、あれ。
    「ま、念の為後で検査だけしておこうか。鼻血、止まりそうかい?」
     問われて、立香は下を向いていた顔を上げて手を離す。数秒、鼻には何の違和感もなく、止まったか、と思った瞬間。
    「あ」
     鼻の奥が生温かくなって、てろ、と鼻から液体が垂れるのが解った。あちゃーと言いたげなダ・ヴィンチの表情とギルガメッシュの眉間の皺を見るにまだ鼻血は出ているようだ。ダ・ヴィンチからティッシュを渡される。鼻の下へ当てると、血液がじわっと紙に染み込むのが解った。
    「ま、安静にしてなよ。なんなら食事も運んでこようか? まだ食べてないだろ?」
    「大丈夫、止まったら食堂行くよ」
    「そうかい? じゃあ私は戻るよ。落ち着いたら医務室においで。後は任せたぜ、王サマ」
     仏頂面のギルガメッシュへ言い、ちょっと笑ってからダ・ヴィンチは部屋を出て行く。ドアが開いて閉じ、ロックがかかる音を聞いてから立香は目だけ動かしてギルガメッシュを見る。腕を組んで見下ろしてくるギルガメッシュは眉間の皺こそなくなったものの表情は固い。
    「あの……すみませんでした、……心配、かけて」
    「……よい。ダ・ヴィンチめも申していたであろう。誰も悪くない、と」
     そうですね、と呟くように返して、立香は隣を示してシーツを軽く叩く。いつまでもただ立って見下されているのも居心地が悪い。組んだ腕をほどいてギルガメッシュが歩み寄ってくるのを見、なんとなく安心する。先程までの刺々しさが和らいだような気がする。元々立香に対して怒っていたわけでもないようだが、勘違いさせてしまったことは申し訳なく思う。あんなに慌てることなんてそう滅多にあるわけがない。
    「いい加減止まらぬのか、ソレは」
    「その時によりますけど、そろそろ止まるんじゃないですかね」
     ギルガメッシュが隣に座り覗き込んでくる。寝起きに見たような心配そうな表情ではなくそこはかとなく面倒臭そうだ。立香自身も今の自分の状態を面倒臭いと思っているので気持ちはよく解る。腹も減ったしさっさと寝たい。何より、せっかく隣に恋い慕う相手がいるのにこれでは何もできない。手を握るくらいならできるか。握っておこうか。
     鼻を押さえる右手と反対の左手で、赤い布の上にあるギルガメッシュの手の甲に触れる。特に拒絶されなかったのでそのまま指の隙間に指を差し込んで握り込む。握り返す力を感じて口許が緩んだ。
    「――そういえば、血で魔力供給できるって本当なんですか?」
    「ああ、魔術師であれば血などの体液にも魔力は含まれているからな」
     指を挟む指を動かして出っ張った骨をぐりぐり押す。すらりと細い指を形作る骨の感触がなんとなく癖になる。覗くように表情を窺うと、穏やかというのか、フラットというのか、特に不快を露わにはしていなかったので、遠慮なくその感触を楽しむことにした。
    「へえ、じゃあこんな出し方しちゃったらもったいないですね」
    「魔術師であれば、と言ったであろう。貴様のささやかな魔力なぞ、腹の足しにもならぬわ」
    「ひど……そこは非常食くらいにはなるって言ってくださいよ」
    「寝言は寝て言わぬか。非常時にそんな雀の涙ほどの魔力を摂取したところでどうする」
    (あ、笑った)
     時々見せるようになった、支配者然とした笑みではなく邪気のない子どものような笑顔に目を奪われる。素直にかわいいと思うし、気を許されているようで嬉しい。鼻血が出てなかったらこのタイミングで押し倒すのも吝かではない。鼻血さえ出ていなければ。などと立香が内心で悔やんでいるとも知らないギルガメッシュの指が動く。立香の動きを真似るように、親指が立香の小指の縁を撫でる。好きにさせてもらえているだけで僥倖だと思っていた立香はなるべく顔に出ないように驚く。そしてかわいいことをするのはやめてほしい、とも思う。やってほしい、けどやめてほしい。複雑な男心だ。鼻血が止まれば解決するのだが。
    「だが……ふむ、そうさな、」
     悶々としている立香をよそに涼し気な声で言ったギルガメッシュは、立香の方へ上体を屈めて寄せ、顔を覗き込むと同時、鼻を押さえている立香の手を押し下げる。何事かと思う間に手を離した立香の鼻腔からまたつっと体温と同じ温度のぬるい液体が溢れ流れ出てくる。
    「王様、あんま近寄ると汚れますよ」
    「なに、味見もせず評価するのは偏狭にすぎると思ってな」
    「味見? って、」
     どういう意味ですか、と続けようとした立香へギルガメッシュは更に顔を寄せ、金糸を飾る目を伏せる。光に透けるような睫毛に気を取られ、キスするのか、あ、味見ってそういう、などと立香は思考したのだが。
    「――んんんん」
     唇へ来ると思っていた感触はなく、代わりに鼻の下の皮膚をぞろりと濡れたものが這った。
    「んなっ……!」
     間近にギルガメッシュの整いすぎた顔があるので、この感触は彼による接触で間違いはないだろう。だが、人体と人体が触れ合ってこんな濡れて少しひやりとした感触があるものは立香にはひとつしか思い浮かばない。
    「ぎゃあああ! なななななにしてんですかっ」
     剥き出しの肩を掴んで押し返そうとするがびくともしない。間近で焦点は合わないが、真紅の瞳は愉快げに歪んでいるように見えた。
    「味見だが?」
    「そんなもん味見しないでください」
     ギルガメッシュの声は笑っている。立香の反応を楽しんでいる。楽しげなのは良いのだが、楽しまれている側はそれどころではない。確かに血液での魔力供給の話を振ったのは立香だ。だが、こんな展開は予想していない。血を舐められたことも衝撃だが、舐められた場所も衝撃的だ。いくらそこに血があるからとは言え、それの発生源は鼻の奥だ。お世辞にも綺麗な血とは呼べない。本当に味見がしたいと言うのなら、指先に傷をつけるくらいするのに。
    「何、これはこれで」
    「や め て く だ さ い」
     思い切り肩を押すがやはりびくともしない。筋力Cのくせに!と思わず言いそうになるのを堪える立香をよそに、ギルガメッシュは丁寧に立香の血と皮膚を舐め、小鼻にくちづけるように唇を押し当てる。立香が柔らかさを感じたと同時に、鼻孔へ先程より熱を持った舌が押し当てられた。そして。
    「ヒッ」
     ちゅる、と鼻腔内に溜まっていた液体を吸われて短い悲鳴が立香の口をついた。自分の意志と関係なく吸い出される感覚で背筋にぞわぞわと寒気が走る。目に映るギルガメッシュは瞼を閉じていて、場所がそこでなければじっくり見ていたい顔だったのだが。
    「王様、ほんとマジでちょっと勘弁してください、血なら他のとこから出しますから」
     我ながら情けない声で言うと、ギルガメッシュの瞼が三分の一ほど持ち上がる。こんな状況だろうがぼやけていようがその赤色は綺麗だ。立香の肩を押さえ込んでいた手の力が抜け、やっと解放されるのか、と思ったところへおまけのように啜り上げられ「ギャッ」と潰れたような悲鳴を上げる羽目になった。それを喉の奥で笑ってようやく、ギルガメッシュは立香から離れる。鼻が冷たい。
    「もう、ホント勘弁してください……」
     深い溜息をつきながら肩を落として先程と同じ言葉を繰り返す立香へ向けられるギルガメッシュの目はやはり笑みの形に歪んでいる。その笑みは無邪気なものではなく、嫣然として邪悪だ。邪悪だけれど、だからか、蠱惑的で困る。
    「足らぬなあ」
    「鼻血以外ならいいですよ……」
    「血はもうよい」
     笑んでいた唇を少し尖らせれば幼さが浮かんで毒気が中和される。その返答もありがたい。立香とてこれ以上出血部位を増やしたいわけではない。鼻血ももう垂れるほどではなくなってきたようだし。
     言葉にはせず安堵した立香に気づいたのか、ギルガメッシュは目を細めてにこりと笑う。
    「程度は知れた。あれならば直接胎に入れた方がまだマシだ」
     ギルガメッシュの細く長い指が、とん、と下腹部を覆う黒いパーツの中心辺りを示す。それが何を意味しているのか理解が及ばなかった立香は指の示す肉の薄い腹を見、はら、と口の中でギルガメッシュの言葉を繰り返し、無言の間を置いてから思い至ってばっと顔を上げた。
    「アレも……」
    「体液には相違ないゆえな。まあ、立香の場合どちらにしろ気休めではあるが」
     膝に頬肘をついて見上げる笑みを見下ろす。悪戯を思いついた子どものような笑顔に見える。挑発的にも。
    「気休めだがなにせ止めよと言っても聞かぬものなあ、立香。質より量という言葉もあろう?」
    「あ、あー……へへ……」
     覗き込む目から目を逸らして曖昧な笑みを浮かべる。確かにいつも制止の言葉を聞くし、聞くということはやりすぎなのだろうし、止めていない。後で冷静になってから罪悪感を抱くのだが、最中はそれどころではない。けれど本当に拒絶したいのなら力づくでどうにでもできるし、そもそも最初から拒否すれば無理強いはしないのだから、心の底から嫌がっているわけでは……。
    「…………やめた方がいいですか?」
     気になり始めるとはっきりさせないと気持ちが悪い。本当に嫌なら……努力は、したい。
     眉尻を下げて不安げにおそるおそる問うた立香を見、ギルガメッシュは数度瞬いてから堪えきれずといった風に、くっと喉の奥で笑った。
    「言わねば解らぬ阿呆ではあるまい?」
    「王様が言ったんじゃないですか⌇⌇……」
     こちらへ向けられている、笑みを敷く紅玉が熱っぽい。シーツの上へ投げ出している手の甲を細い指の腹がなぞった。くすぐったい。
    「……間違ってたら嫌なので訊きますけど。
     誘ってますよね?」
     悪戯にくすぐる指を絡め取って手のひら同士を合わせる。もう押さえていなくても血は流れてこないようだ。答えを聞くより前に、上体を寄せて薄く開いている唇へ近づく。笑ったまま、真紅が瞼に覆われて、残りの数センチを詰めた。触れて、触れて、お互いほとんど同時に口を開いて組み合わせれば立香は後頭部に指の感触を感じた。混ざりあう生ぬるい唾液を互いに飲んで、息を継ぐ。
    「――血の味がするんですけど……」
     飲み込んだ唾液にわずかに残る鉄っぽい味に立香は苦笑いのような気まずそうななんとも言えない顔をする。立香に言われ、「ん?」と疑問形で呟いたギルガメッシュは自分の口の中をもごもごと舌で探って、溜まった唾液をこくりと飲み込む。それからいたずらっぽく笑って少し濡れた唇を開く。
    「ああ、貴様の味がするな、立香」
     おまけのようにその唇を舌が這い、立香は思わず生唾を飲む。それを見留めたギルガメッシュの笑みが愉快げに深くなる。
    「やっぱり訊きますけど、誘ってますよね?」
    「貴様に負わされた無駄な心労の分、責任はとってもらわねばなあ」
    「そんなもん、いくらでもとりますよ」
     両肩を掴んでいやに真剣な表情をする立香をギルガメッシュは笑う目で見やる。数秒、立香はそのまま真剣な表情でいたが堪らなくなって相好を崩し、それにあわせてギルガメッシュの身体をゆっくりと押し倒した。
    「とは言え、責任なぞというつまらぬ名目で抱かれるのも興醒めよなぁ」
    「解ってますよ。それはそれ、これはこれです。オレは王様が好きでこうしてるんですから」
     言葉をかわす合間に唇を重ねる。離れるたび、少し乾いた薄い皮膚が貼りつきあって名残惜しむようだった。何度目かでまた舌を擦りあわせ、深くくちづける。漏れる甘ったるい声を聞きながら、息が苦しくなるまで繰り返した。
    「ん……ふ、殊勝な心がけ、というヤツだな」
    「本当のこと言ってるだけですけどね」
    「貴様は本当に……」
    「どうかしました?」
     くふふ、と抑えきれなかったとでもいう風に楽しげに笑うギルガメッシュへ疑問符を乗せた眼差しを向けながら、しろい頸を隠す金の装飾に触れる。鎖をなぞって布の下へ指先を差し込むと、体温のあがったしなやかな身体がふるりと震えた。
    「構わぬ。続けよ」
    「……本当にいいんですよね?」
    「何を今更……、言わねば解らぬか?」
     繰り返し念を押す立香を呆れを込めた声と視線を投げ、押し当てるように肩を掴んでいたギルガメッシュの手が離れる。気づいた立香の目が追う先で、手はそのままするりと下方へ伸ばされ、いつの間にか剥き出しになっていた腹の上をつと這う。先程は隠されていた臍の縁をなぞるようにして、更に下へ。その艶めかしい動きに立香は思わず生唾を飲む。指は臍の少し下、下腹部の中ほどで止まった。
    「特に許す。存分に注ぐが良い、立香」
     目眩を起こしそうな色香に立香は一度目を瞠り、瞬きをして、「ああ」とか「うう」とか言葉にならない呻きを漏らす。その人は愉快そうに笑っているので、揶揄われているのは解っているのだが。いや、揶揄うというより、煽られているのか、これは。腹の底からふつふつ湧いてくる感情にこのまま押し流されるとまたしっちゃかめっちゃかにしてしまうと思うのだが、それも許されるのだろうか。腹に乗せられている手へ手を重ね、上から押すと身じろいで「ん」と甘たるい声を漏らす。
    「……立香、貴様もう鼻血はいいのか」
     蕩けたような声のまま、はぁ、と熱く湿った息を吐いて問われ、水を湛えた赤を見下ろす立香は数秒固まる。
    「そういえば大丈夫みたいですね。王様が舐めてくれたんで止まったのかも」
     舐められたと言うより吸われたのだが、そこは些細な違いだろう。もう動いても血が垂れてくることはなさそうだ。検査の文字が頭をよぎったが、目の前に横たわるギルガメッシュと天秤にかけるまでもなく。あとで絶対ちゃんと行くから、と自分に言い訳をして唇を塞ぐ。頬に触れてきた両手のひらが熱い。
    「そうか……ならば、また出た時は申すがよい。貴様の味は、存外、悪くない」
     ぺろ、と鼻の頭を舐められる。向けられるのは笑顔で、今日はやけに上機嫌だなと思考する。不機嫌でいられるよりは億倍いい。だが、こう色気全開で誘われるのも理性的な意味で問題だ。
    「なんなんですか、煽りすぎですよ、オレをどうしたいんですか」
    「逐一反応するのが愉快でな。許せ」
    「いいですけどぉ……やめてって言ってももうやめませんからね」
     拗ねたようなやや膨れ面で、恨みがましげにも見える表情で見つめる立香へ向けた目を大きく瞬いて、ギルガメッシュは堪えきれず吹き出す。
    「それではいつもと変わらぬではないか」
    「もー! オレだって努力しようとは思ってるんですよ 確かにできてませんけど!」
    「故にいらぬと言っておろう。殊勝な心がけは買うが」
     ギルガメッシュは眼前にある立香の顔を両手で挟み、むにむにと揉んでその顔を笑ってから軽く引き寄せる。引き寄せられるままくちづけて、わずかに押し戻されて離れる。
    「御託はもうよい。……いつまで焦らすつもりだ?」
    「!!」
     膝を立てた脚と脚の間へある立香の大腿へ、ギルガメッシュがぐいと下腹部を押し当ててくる。布越しに感じる質量に両目を見開いた立香の顔に熱が集まる。勿論嫌だとかそういうわけではなく、嬉しい。照れ臭いほどに嬉しい。興奮で熱いのだ。顔だけでなく。
    「……また鼻血出そう……」
    「なぁに、その時はまた我が舐めてやろう」
    「じゃあその時は王様に責任とってもらっ……さっきと逆ですね」
    「逆だな」
     ふは、と緩みきった情けない顔で笑う立香につられるようにギルガメッシュも相好を崩し、そのまま流れるようにどちらからともなく唇を重ねる。戯れるように互いに衣服を脱がせあって素肌に触れ、縺れながら真新しいシーツに沈んでいった。
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