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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽教会でいちゃついてます

    ##1000-3000文字

    廃墟の教会でいちゃつく話▽廃墟の教会でいちゃつきます
    ▽ぐだキャスギル






     健在であればさぞ立派であったろう天井画は、今や見る影もなく崩れて大穴が空き、瓦礫の形に区切られた夜空が見える。足元に転がる石ころのような瓦礫にはところどころ淡い青が見え、これが元は天井画の一部だったことを教えていた。門戸を開け放したままで壊れたこの廃墟は、かつて教会だった名残を色濃く残していた。
     探索中に見つけた廃墟の教会。周囲には更に廃墟と化した村があるばかりで、その中でようやく見つけた一夜を明かせそうな場所がここだった。
     黒いインクの上へ白く輝く砂を撒き散らしたような夜空から壁へ視線を移せば、朽ちた救世主の傑像がある。ここまでの道のりを共にしてきたレイシフトメンバーは、なんとか原型を保っていた部屋へとめいめいに別れ、眠る者は眠り、見張りに立つ者は外へと出て行った。ギルガメッシュは前者の側で、見張りまでの時間、カルデアでもそうしているように立香と枕を共にしていた。のだが、気づけば隣で寝ていたはずの立香がおらず、またあの無用心者はフラフラと、と幾分憤りながらギルガメッシュが残滓を辿り見つけた立香は、やはりフラフラと無防備に聖堂内を散策していた。皆が寝静まるか教会の外へ出ている今、聖堂の中には立香とギルガメッシュのふたりしかいない。無用心にもほどがある。立香、と呼びかければ振り向いていつものように屈託なく笑われ、そこで怒りは失せてしまったが。
    「――王様、その布ください」
    「? 何をする気だ」
    「いいからいいから」
     歩み寄りながら首を傾げるギルガメッシュに有無を言わさず、立香は冠に付属しているひらひらとした長い布の裾を掴んだ。何をするのかと怪訝なギルガメッシュに立香はイタズラをする子供のような顔で笑い、布を前へと引いてギルガメッシュの頭へぱさりとかぶせた。ギルガメッシュの視界が白一色に染まる。
    「何をしている、立香。前が見えぬであろう」
    「ギルガメッシュ王、結婚しましょう」
    「は?」
     前後も脈絡も何もない、唐突な申し出にギルガメッシュは布の下で怪訝な顔をする。眉根を寄せて異星人でも見るような目で見るが、残念なことに立香には見えていない。
    「結婚ですよ。ここ、教会ですし」
    「何を言い出すかと思えば……」
     またたわけたことを、と呆れを隠しもせずに言い、花嫁のヴェールに見立てられた布を取り払おうと持ち上げたギルガメッシュの左手を、立香が捉える。何を、と思う間に素肌の薬指にくちづけられた。見えないから押し当てられた唇の感触だけだが。ふにゃりと少し乾いたやわらかく薄い皮膚の感触が薬指に押し当てられている。
    「オレは何にも持ってませんし、明日だってどうなるか全然解りませんけど、病める時も健やかなる時も、そばにいてください」
    「…………立香、それは、」
    「王様、こういう時は、はい、って言うんですよ」
     そんな返答は、できない。誓えない誓いなど、何の意味があろう。そも、誰に普うと言うのだろう。神などもういない。たとえ神がいようとも、永遠など誓えない。是と言えば嘘になる。嘘などついたところで何になろう。お互いに解りきった事だ。ごっこ遊びもいいところではないか。その通り、児戯よろしく戯れるように、立香は取り上げた手に指を絡めてくる。そして布をめくり上げ、
    「…………そんな顔、しないでください」
     いったいどんな顔をしていると言うのか。言われるような顔はしていないはずだが。そう言う立香の方がひどい顔をしている。泣き出しそうだ。その立香の顔が近づき、ギルガメッシュは眼を伏せる。誓いのキス、というやつか。何も誓った覚えはないが。
     誓いなど縛るだけだ。そんなもの、そんな呪いのようなもの、立香には必要ないだろう。立香の、未来には。今ここに在る事で十分だ。だと言うのに。
     唇が重なり、すぐに離れる。
    「――……我は神になど誓わん。そも、既に神など存在しないのだからな」
    「王様……」
    「故に……叶えたくば、それなりに努力して見せよ、立香」
     泣き出しそうだった立香は、一度驚いたように目を大きく開いたあと、ふは、と笑ってギルガメッシュを抱き締めながら後ろへと押す。朽ちかけの講壇に背が当たった。その上へゆっくりと押し倒されながら、立香の水面のように凪いだ瞳に見つめられる。見返せば蒼色は笑みのかたちに歪んだ。そのままに触れるだけのくちづけを交わす。
    「叶えてみせますよ。オレは何度だって王様に手を伸ばしますからね」
    「そうか。精々励めよ、立香。我がその手を取らぬ事は……もう、ないだろうからな」
    「――――」
     まだそんなに開くのか、と思うほど大きく大きく目を瞠る立香に強く抱き締められる。抱き返して背中を軽く叩いてやれば、その腕の力は一層強まった。苦しいほどに。
    「ギルガメッシュ王、好きです。大好きです」
     耳元で吐き出すような声がする。もう離しませんから、と絞り出すような声音で言われて笑みが漏れる。
    「そんな事、とうに知っておったわ、ばかもの」
    身体を僅かに離した立香にくちづけられながら、ギルガメッシュも眼を閉じた。
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