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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽眠い話

    ##眠たい話
    ##1000-3000文字

    早朝の話▽眠い話です
    ▽ぐだキャスギル





     例えば朝早く、まだ空気すら重く、静謐に満ちた時間に目が覚めた時。隣にその穏やかな、うつくしい寝顔があることに寝ぼけた脳はただただ嬉しく思う。睡眠を必要としていないのに、時間の無駄であるのに、立香の頼みを聞いて、永い夜はふたりで眠る。聞き入れられることが、赦されることが、ひどく嬉しい。
     赦されている、と思う。こうして隣で眠ることも、共に食事をすることも、触れることも、すべて、立香が望み、許容された。それはともすれば一方通行の、独善的なものになり得るようにも思うけれど、そうならないのは〝赦す〟ことに彼の意思が多分に含まれているからだろう。赦さぬことはどこまでも赦さない。それを侵せばどうなるか、その点はこちらの賢王とあちらの英雄王の間に差異はない。残酷にも冷酷にもなれる苛烈な王。そこは変わっていない。だから尚更赦されたことに価値が見い出せるのだけど。例えば、そう、なんとなく目が覚めてしまった夜中とも早朝とも言いがたい時間に、安らかに眠っているギルガメッシュの淡い黄金の髪に触れて、するりとまるい頭を撫でても、立香なら赦されるのだ。
    (別に誰かに自慢したいわけじゃないけど)
     けど、そこはかとなく誇らしい気持ちになるのは許されたい。これは誰に許しを請えばいいのだろう。自分だろうか。誰に見せるでもなく得意げな顔をして、眠るギルガメッシュの頭を優しくそっと撫でる。細くしなやかな黄金きんの髪は、まるい頭に押されてゆるやかにたわんでいる。指で梳くとしゅるりと指の間をすり抜け、さらさらと元の位置へ戻っていく。しなやかでやわらかなその感触は心地よく、ずっと触れていたいと思う。頬にかかる前髪を指先で梳いて、横へ流す。閉じた瞼を縁取る睫毛の色も、髪と同じに煌めくような金色なのだが、今は暗闇で白っぽく見える。その色を見ることも赦されている、と思えば口元が緩んだ。頬にそうっと触れると、少し冷えていた。
    「――ん、」
     閉じられた瞼が震えるのが見えた。身じろいだギルガメッシュが小さく唸って瞼をほんの少し、持ち上げる。その下に現れるはずの鮮やかな真紅も、今は彩度を下げ、鳴りを潜めている。
    「すみません、起こしました?」
    「……いや……」
     曖昧に返答するギルガメッシュは目もほとんど開いていないし、どう見ても眠そうだ。眠りの合間にただ僅かな時間意識が浮上しただけであれば放っておけばまた眠りに落ちるだろう。そう考えて手を離そうとした立香は、しかしギルガメッシュに手首を掴まれて完全に離れていないような距離で引き留められた。
    「王様?」
    「……よい。つづけろ」
    「?」
    「きさまの手は、あたたかい……」
     掴まれた手が少しだけ引かれ、指先からやわらかい頬に触れる。ギルガメッシュの言葉通り、目覚めたばかりの立香の体温は、ギルガメッシュのひやりとした頰より高い。
    「りつかの手は、あたたかい……」
     どことなく呂律の回っていない、むにゃむにゃとした声は微かに笑みを湛えているようで、起きている時にはあまり見せない稚い微笑がその美貌に浮かんでいて、そんな顔で、立香の手に僅かに頬をすり寄せるものだから立香の方は眠気のせい以外にも体温の上昇する原因が増えてしまって、あたたかい、どころか暑い気がしてくる。すり寄ったギルガメッシュの唇の端が手のひらに触れていた。
    「……目覚めるには、はやかろう……もう、しばし……」
     少し掠れた低音が紡がれるたび立香の手のひらに触れている唇も動く。それを指先で撫でると、今度はくすぐったそうに身じろいだ。
    「ええ、もう少し寝ます。王様も、いっしょに」
    「ん、……」
     手首を掴んでいた手が、今度は立香の服の胸辺りを掴む。くいと引かれたのと立香がギルガメッシュへ身を寄せたのは同時で、それに気づいた立香は顔がにやけるのを抑えられない。
     ギルガメッシュの頭を抱え込むように腕を回しながら、少し開いたままの唇に唇で軽く触れる。もうほとんど寝ていたギルガメッシュはまた僅かに目を開き、すり寄せるように、ねだるように、もう一度唇で触れる。触れるだけ。だけど、それだけで満たされる。赦されてるのはそうだけど、それはつまりギルガメッシュが立香にしてほしいことでもある、と立香は考えているし、そう振る舞って間違えたこともあまりないように思うので、正解なのだろう。結局、お互いに求めているものは同じか、似ているのだ。
     くちづけるうちに眠ってしまったらしいギルガメッシュの前髪を撫でつけてくちづけ、立香はギルガメッシュの頭を抱えて引き寄せながら目を閉じる。
     夢と夢の合間の、ほんの僅か。朝には忘れられているであろう戯れ。それでも立香の心をあたたかいもので満たすには充分だった。
    「おやすみなさい、王様」
     囁く声に返事はなかったが、身じろいだ身体が少し、近づいた気がした。
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