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    えんどう

    @usleeepy

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    えんどう

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    ▽王様がご褒美をくれる話

    ##3001-5000文字

    王様がご褒美をくれる話▽ちゅっちゅしてるだけの話です
    ▽ぐだキャスギル







     カタカタとキーボードを叩く手を止め、椅子の背もたれに寄りかかり伸びをする。肩がそこそこの痛みを訴えてきて、肩に手を当てぐるぐると回す。長時間同じ姿勢でいたせいで固まっていた肩と、肩甲骨の辺りが少し痛む。画面を埋め尽くす文字軍は、見つめ始めて三日が経とうとしていた。後回しにした自分が悪いとは言え、もうそろそろ終わらせたい。実際、あと少しではある。
    「――終わったのか?」
     ぐるぐると腕を回す立香に、ベッドの上の人影が声をかけた。首を横へ向けてそちらを見れば、カーテンのようにベッドの上部から垂れている薄い幕の向こうにいるその人の顔は見えなかった。
    「いえ、あと少しです。ちょっと休憩しようかなって」
    「そうだな。もう三日になるか? うっかり過労死などしてはたまらん」
    「経験者は語る、ですか?」
    「たわけ。我が過労死などするはずがなかろう」
     クスクスと密かに笑う声が幕の向こうから聞こえる。立香はもう一度伸びをして立ち上がり、腰を軽く左右に捻ってからベッドへ向かう。幕が邪魔で顔が見えないのだ。
    「休憩ではなかったのか」
    「休憩ですよ? 王様を充電しとこうかなって」
    「充電?」
    「充電です」
     幕を潜ってようやく、隠されていた姿が現れる。立香を見ている真紅に笑いかけて、ベッドへ上がり込む。クッションにもたれてタブレットを見ていたらしいギルガメッシュは、這い寄る立香から目を逸らさない。もう一度、にへ、と我ながら緩んだ笑顔を向けて、ベッドへ倒れ伏しながら剥き出しの腰に抱きついた。
    「それが充電か?」
    「充電です」
     腹に押し当てた鼻で深く呼吸すると、ギルガメッシュに染みついている匂いがした。甘い。
    「こら、腹はくすぐったいと何度言えば解る」
    「解ってます、ちょっとだけ」
     二度三度深呼吸をして、その間時々ビクつく腹から顔を上げる。くすぐったいというのは噓ではないらしい。
     ごろんと仰向けに寝転べば頭の下にギルガメッシュの太腿がくる。「重い」と文句を言うのをやんわり無視して、立香を見下ろすギルガメッシュを見上げる。文句は言うけれど、拒絶したりしないのだから甘やかされてる、と思う。丸一日レポートにかかりきりになって三日、なかなかに疲労しているのを識っているのだろう。ご褒美というヤツかもしれない。
    「王様」
     見下ろす紅い瞳が立香を見ている。視線が絡む。見つめあって数秒、右手を伸ばして頬に触れると、なめらかな肌が手のひらに吸いつくようだった。ギルガメッシュは何も言わない。黙って立香に膝枕を提供している。膝枕もご褒美だけど、ご褒美というなら、
    「――――」
     ふに、と触れた唇同士が、触れるだけで離れる。本当は離れたくないのだけど、体勢的に無理がある、のと、あんまり触れてると余計に欲しくなるので、これで我慢。
    「気は済んだか?」
    「済みませんけど、我慢します」
     よっこらせ、と呟きながら身体を起こす。振り向けばギルガメッシュは何がおかしかったのか笑いをこらえるような顔をしていた。
    「何笑ってんですか」
    「いやさ、貴様が殊勝なことを言うものだからな」
    「オレだって我慢くらいしますよーだ」
    「ああ、そうだな。貴様はやる時はやる、やればできる男であったな。引き続き励めよ、立香」
     ぽす、とギルガメッシュのすらりと長い手が立香の頭に乗る。そのまま頭の輪郭に沿うように手が滑って、撫でられたと気づく。こんなことをされたら、拗ねて見せようかと思っていた幼稚な考えなど溶けてしまう。溶けてしまった。
     
       ✴︎✴︎✴︎
     
    「あ〜! 終わったぁ〜!」
     ターン!とわざと音を立ててエンターキーを押し、作成したレポートが電子の海に繰り出すのを見送って両手を挙げる。万歳三唱したい気分だ。
    「……喧しい、と言いたいところだが、完成させたのであれば野暮だな」
     少し離れたベッドから、ギルガメッシュの声がした。相変わらず幕で顔は見えないけど、声が穏やかなので少なくとも不機嫌ではないだろう。端末をスリープ状態に切り替えて、椅子から立ち上がって一通り身体を曲げて伸ばす。肩や腰に少し痛みがあるけど、寝れば治りそうだ。すぐにでも横になりたい。
    「おうさま⌇⌇」
     いそいそとベッドへ上がってギルガメッシュに近づく。
    「情けない声を出すな。そら、」
     数時間前に一度、立香から抱きついたが、今度はギルガメッシュが両手を立香へ伸べてくる。
    「充電、であろう?」
    「おうさま⌇⌇⌇⌇!」
     遠慮なくギルガメッシュの腕の中へ飛び込んで抱き締める。この場合、腕の中にいるのはどちらなのだろう。肩へ頭を乗せれば壁しか見えないが、腕の中の身体があたたかいのでよしとした。ぎゅうと抱き締めると二人の間の空間が減って、密着する剥き出しの肌がシャツ越しに感じられた。あたたかい。
    「長いのではないか?」
    「ガス欠だったんで」
    「そうか」
     納得してるはずがないのにそれきり何も言わずに立香の好きにさせているところに愛を感じるなどと言えば否定されるだろう。けど、こういう時に愛を感じるのだ。愛を感じて、同時に愛おしくもなる。
    「おうさま、」
     身じろぐと、立香の背へ回っている腕から力が抜けるのが解る。話が早い。腕の分だけ離れて、透き通って奥底が見えそうな真紅の瞳を正面から見つめる。実際奥底まで覗かれるとしたら立香の方だし、見たくても奥底など見えはしないのだが。
    「王様、目、閉じ……なくてもいいや」
    「ん?」
     綺麗な瞳はいくら見ても見飽きないのだから、わざわざ閉じなくてもいい。にへ、と笑って顔を寄せた立香に、不意をつかれたように目を瞬くギルガメッシュは、結局唇が触れても細めるだけで目は閉じないでいた。
    「ん……ぅん、」
     ギルガメッシュの口内で舌同士が擦れあう。そうしてようやく、眇められていた瞳が閉じる。軽く歯で挟んだ舌をちゅう、と吸えば手の下で肩が震えた。その肩を押し、舌は絡めあったままベッドへ押し倒す。と、ギルガメッシュの腕が立香の首へ回って、引き寄せるように後頭部に触れたので思わず口の端が緩む。
    「ん、ん……んぅ、……」
     ちゅ、ちゅと音を立てて舌先や唇を吸えば、気持ちよさそうな甘い声が漏れる。この三日間はほとんど触れあえなかったし、その前もなので何日ぶりだろうか。素肌を晒している頸に指先で触れれば喉仏が上下する。その指先でつつっと胸の中ほどまで撫で下ろすと、後頭部に回っている手が髪を緩く掴んだ。
    「ん、……りつか、」
    「何日ぶりでしたっけ」
    「さて……一週間ほどか」
     言われてみればそんな気がする。一週間も経っていたのか。ならキスだけで足りないのも納得できる。少し顔を離して、ぼやけていないギルガメッシュの顔を見下ろす。見上げる真紅の瞳がとろりと溶けてしまいそうだった。毎日一緒に眠ってはいたけれど、こう真っ正面から見つめるのは一週間ぶりかもしれない。多分そう。
    「一週間、寂しかったですか?」
    「ふ、それは貴様であろう?」
    「オレは寂しかったですよ」
     さらりと素直に答えれば、ギルガメッシュはぐぅと喉を鳴らして唇を一文字に引き結ぶ。立香が笑いかけると目を逸らした。
    「王様は?」
    「我は……我が寂しいなどと……」
    「寂しくなかったですか?」
     追い討ちをかけるように畳み掛けると、目を逸らしたまま白い頬をいくらか紅潮させて、
    「…………寂しくなど……ただ少し、物足りぬだけで……」
     もごもごと歯切れ悪く呟くので、それで充分と立香は抱きついた。体重をすべて受け止めたギルガメッシュが僅かに呻く。
    「オレは寂しかったので、もっと王様が欲しいです。いいですか?」
     いつの間にか肩へ降りていたギルガメッシュの手を片方掴んで口元へ運び、指先から手の甲へなぞるように唇で触れ、上目にギルガメッシュを見る。まだ赤みを残した顔のギルガメッシュは、熱の消えない瞳を何度か瞬き、短く「赦す」と応えて緩く微笑う。はにかむような笑顔にきゅうんと胸が高鳴った立香は、掴んだ手の指を絡め取って笑い返す。
    「ではギルガメッシュ王、いただきます」
    「よく味わえよ?」
    「もちろん!」
     互いに笑顔を浮かべたまま、どちらからともなくまた唇を重ねる。ギルガメッシュは立香の首へ回した手の指を鳴らし、それを合図にベッドの四隅に括られていた薄布が解け、ベッドを外界から覆い隠した。
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