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    えんどう

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    えんどう

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    ▽王様の生身に触りたかったぐだおの話

    ##1000-3000文字

    王様の生身に触りたかったぐだおの話▽七章の時に触っておけばよかったな〜という話
    ▽ぐだキャスギル





     出逢ったのは、四千年以上前のメソポタミア文明の頃、ウルクという国だった。初めて見た彼の王は玉座で一秒の隙もなく責務をこなし、強引な魔術師の手引きがなければ話すらできなかっただろう。しかし事情を説明する間も惜しんで手合わせをさせられ、〝まだ早い〟と断ぜられた。その上で以降はやはり協力は一蹴され、不要と拒絶されると同時に役に立ちたければ相応の功績を上げよと言われ、祭祀長に一任させる形で謁見は終了した。途中愉快な女神の乱入で王と共に戦うというその時点ではあり得ない出来事もあったが、その後祭祀長の手を借りて地道に〝功績〟を上げ続け報告をし続け、あれ程頑なだった王の気を引くようになり、王は道ゆきに同行するまでになり、王自らがうっかり死亡した際には助けに来ることを予見されるほどの信用を得、共に戦う事はないと最初に断ぜられたにも関わらず共に戦い、立香を庇う形で致命傷を負い、自らを囮として命を落とした。更には幽体で最終決戦の手助けもされ、その後、生死の概念があやふやである神代に於いてでももう生き返らぬ事を言外に教えられ、戦いの終結を告げて王は逝ってしまった。逝ってしまったのだ。完全に。身体を失い、もう二度と、手の届かぬところへ逝ってしまった。生死があやふやな世界であったからこそ、立香は当たり前のようにまたあの賢王に逢えるのだと思っていたのかもしれない。だが、ギルガメッシュが自らを使い、ティアマトを罠に嵌めたあの時と同じように自分の手は届かなかった、届かぬところへ逝ってしまったと理解したのは、少し遅れてからだったように思う。ウルクでの暮らしは確かに楽しいものであった。あの激戦を経ても尚、あの国は良い国だった。同時に、出逢ったすべての者に対しても、なんの悔いもないと思えるくらい、楽しかったのだ。それを告げた時、王は非常に満足気であり、誇らしげだった。最大の財宝であろう聖杯を立香たちに与えるほどに。そして今生の別れをし、皆とも別れ、立香たちはカルデアへと帰還した。もうあの王には二度と逢えないのだ、という、事実だけが立香の中に残った。もう、二度と逢えないのだ。もう、二度と。英霊として、サーヴァントとしてまた逢える可能性、というか既に全盛期と合わせて二人共いるのだが、その賢王に今回の記憶があるようには思えなかった。特異点での記憶を持たないサーヴァントも多いから、あの王もそうなのだろう。どちらにせよ少なくとも、もうあの生前の王には二度と逢えない。手が届く事はない。その時ようやく、この感情がなんなのか気づいたように思う。今までの人生の中でそれなりに感じた事はあったが、ここまで鮮烈なのは初めてで、自分でもよく解っていなかったのだろう。ああ、これがそうなのか。
     その後、元々カルデアにいた、初期に召喚できていた王があの王と記憶を同じくする、同一人物である奇跡のような事は起こったが、ついぞ〝生身〟の王の身体に触れる事が叶わないのは同じだった。あの時伸ばした手は届かず、彼は満足気に笑って死んでいったのだ。自分の生きた意味を立香に刻み、未来を託して満足気に死んでいった。それは、今思えばとんでもない事だと思う。あの最初の謁見を思えば当然だ。共闘する事を拒否し戦力としても不要とさえ言った立香と共に戦い、あまつさえ自分の命を犠牲にしてまで立香を救い、最後の神であるティアマトを屠る手助けをした。
     しかし、生前の賢王である〝生身〟のギルガメッシュに触れた事はない。手が届くほど間近に寄った事はあるが、その時の自分はそんな事は微塵も思わず、ただ距離が近いなあ、程度にしか思っていなかったように思う。握手くらい、しておけばよかった。そんな事、ふざけるな不敬だと罵られるのは目に見えていたが。
    「……………………ちゃんと触っておけばよかったなあ……」
     英霊として顕現したギルガメッシュとは毎日のように触れ合ってはいるが、エーテル体であるサーヴァントと生きた人間(半分以上は神であったから人と言うには語弊があるが、人間、と呼びたい)は根本的な存在として違う。あの時代を〝生きた〟ギルガメッシュにはもう二度と触れる事は叶わない。それはやはり、惜しく思う。
    「…………何を言っている?」
     背後から聞き慣れた声がした。あの頃と一分一厘も違わぬ声に振り向けば、身を起こしたギルガメッシュが不思議そうな顔をして両手を広げていた。
    「ギルガメッシュ王? いったいなにを、」
    「貴様が触れたいと言ったのではないか。立香。であれば望みを叶えてやるのが王というものよ」
     その言葉を聞いた立香はふと笑い、膝立ちでベッドを進み、伸ばされた腕の中に収まり背に腕を回した。普段は自分よりも背の高いギルガメッシュが自分よりも下になり、立香は冠を取り去った金糸の上へ顔を寄せ、ギルガメッシュは立香の胸元へ頬を押し当てて腰へ手を回す。エーテル体と言えどギルガメッシュの身体は触り心地が良いなどというものではないほどにあたたかく、やわらかく、うつくしい。きっと生前のギルガメッシュもそうなのだろう。こうして抱き締めるなどあり得なかっただろうが、せめてその手のひらにくらい触れて、同じ感想を抱きたかった。その感覚をこの身に刻んで、還りたかった。
    「…………貴様、我と共に在るというのに考え事など随分な不敬者よな」
    「王様の事を考えてたんですよ」
    「……そうか。であれば赦そう。精々存分にそのちっぽけな頭で偉大なる我の事を思考するが良いわ」
     生前の貴方に想いを馳せていました、と言えば気を悪くするだろうか。ギルガメッシュにとってもそれはもう二度と取り戻す事のできないものだ。余計な事を言わぬよう口を噤んで、立香は抱き締める腕に力を込めた。
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