太陽よりも、顔も見たくない、なんて子供じみたことを思ったのはいつぶりだろうか。
キラキラと心身によくないオーラを放つ地獄から、「便所行ってくる」とだけ言って抜け出せば少しずつ親近感のある景色になる。ようやく肺に酸素を取り込めたような気分だ。
足取りも軽くなって、このまま友人に会いに行ってしまおうかなんて叶いもしない予定を立てようとしてひとり虚しくなる。だって、数少ない友人はみんなあそこに置いてきたんだから。
ここはもうリドゥではない。一時とはいえ確かに輝かしかった、あの世界の俺ではない。
明らかに金のかかっているあの場所には、少々不釣り合いな安いスーツ。少しでもマシにするために髭の剃り残しにはいつもより気をつかったけど、表情を隠すためにもいっそ伸ばしまくってやればよかった。そんな生えないけどな。
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