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    生大福

    @cream_daifuku24
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    生大福

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    ケーキバース創なず

    最近、紅茶の味がしない。
    サークル活動の一環で、育てている花のそばを通っても、匂いもしない、感じない。

    最初は一過性のものかと思っていたけど、3日4日と続いてしまうとなにか別の病気を疑ってしまう。
    ぼくはなんだかそれをみんなに打ち明けるのが怖くて、今日まで1週間、ずるずると過ごしてきてしまった。


    レッスンを終えて、調理室でお気に入りの紅茶を入れる。
    煮出すだけでアールグレイの深い香り…が漂ってくるわけでもなく。英智お兄ちゃんからもらったせっかくの茶葉なのに、その五感をまったく感じる事が出来なくて、満たされなくて、どんどん空っぽになっていく。


    「いい匂いがすると思ったら、創ちん…こんなところにいたんだな」
    「…に〜ちゃん」

    に〜ちゃんだ。そう言えば、仕事が忙しくて1週間も会ってなかったっけ。
    に〜ちゃんはちょっぴり甘苦い、キャラメルみたいな匂いがします。

    「…創ちん?」

    あぁでも、もうそんな匂いすら感じないんだ、ぼく。
    真っ暗で、無だ。なんにも感じない。
    目の前のにーちゃんは本物なのかな。
    足りない。目と耳だけじゃ、それを感じることは出来なくて__

    「創ちん!おい、大丈夫か」
    「…!?……はい」

    すぐそばで、ふらついたぼくを抱き抱えてくれたに〜ちゃん。
    気付いたら床にへたりこんでいたぼくを見て、飛んできてくれたらしい。

    やっぱりに〜ちゃんはやさしい。ぼくたちRa*bitsの、みんなのに〜ちゃんだ。




    __なのに。ぼくは不思議とお腹が空いてしょうがありません。
    使いものにならないであろう鼻腔を突く甘ったるい香り。
    なんで、すぐそばから、に〜ちゃんから、するの?

    「調子わるいなら、保健室で休むか?」

    どうしよう。頭がくらくらする。
    たぶん、この匂いのせいだ。
    あぁ、に〜ちゃん、とってもいいにおいがする。
    前はこんなにおいだったっけ?
    に〜ちゃんの髪はスポンジで、真っ赤な瞳はイチゴのよう。まるでケーキみたいです。

    「…に〜ちゃん、おいしそう」
    「おいおい、創ちんまで天祥院の真似か〜?おれは食用ウサギじゃないぞ〜?」

    意図せず出てきた言葉に、ぼくも内心後から動揺してしまう。なに考えてるんだ、ぼく。

    「…お腹空いてるんだったら、に〜ちゃんが何か作ってやろうか?簡単なやつだけど」

    こんなことを言っても、に〜ちゃんはさして気にしたりをする素振りもない。それどころか様子のおかしいぼくを気遣うばかりだ。
    このままじゃいけない。保身の為早く離れないとと思うのに、ぼくをこの場に縛り付けてくる、これは、なんだろう。

    「に〜ちゃん」
    「うにゅ!?ちょ、創ちん、急に押し倒してどうしたんりゃ…」

    あぁ、駄目だ。このままじゃ、ぼくは得体の知れない肉欲に任せて、このケーキを貪ってしまう。
    ダメ、だめ、やだ、大好きなに〜ちゃんにこんなこと、絶対しちゃいけないのに、ぼく…

    「食べちゃいたいぐらい、おいしそう」
    「__ひ、ぅ!?」

    首筋をひと舐めすると、ホイップクリームみたいな味がした。

    「創ちん、な、なにして…」

    久しぶりの味だ。ぼくはそれが嬉しくて、何度も何度も、に〜ちゃんを楽しんでしまいます。

    「ぁ、や、やだ」
    「大丈夫ですよに〜ちゃん…痕はつけませんから」

    クリームを分けた先は、色とりどりのスイーツとふわふわのスポンジケーキ。
    でもショートケーキで1番大好きなのは、血みたいに真っ赤な苺。

    「う…は、創ちん、いたいって、ぁ」
    この先は、どんな味かな、においかな?
    皮膚を甘噛みすると、に〜ちゃんは子ウサギみたいに肩を跳ねさせた。

    「創ちん…っ!」
    「__ぁ」

    怒ったようながなり声で、夢から醒める。
    目の前には、青ざめた顔のに〜ちゃん。
    肩のあたりには、痛々しい歯型がくっきりと付いていた。

    「あ、ぁ、ぼく、に〜ちゃんを、食べ…っ」

    __カニバリズム。
    言葉は聞いたことがあるし、意味も一応知っている事象。
    ぼくはおいしいケーキを食べていたんじゃない。
    に〜ちゃんを、人を、血肉を間違いなく食べようとしていた。
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