夏が少し好きになる夏の熱い陽射しと蒸し暑さ
ジリジリとアスファルトが焼ける匂いとセミの鳴き声
晴れ晴れとした青空に真っ白で大きな雲
そして、日本の予想外の暑さに驚く男…氷室辰也
アイスを食べている紫原と共に2人はコンビニの外で話し込んでいる。
「なぁ、アツシ」
「何〜、室ちん」
「日本の夏の暑さは異常だな」
「うん」
氷室の話に興味無いというように
適当な相槌を打ってアイスの袋を開ける紫原。
「アツシ、それ何本目だ?」
「3本目〜」
「腹壊さないのか?」
「平気だし」
そうか…と、アイスを食べる紫原を横目に
ロサンゼルスとは違う日本の夏の気候に体が堪える。
「でもさー、室ちん住んでた所も暑いんでしょー」
「そうだな…でも、こんなに湿度は無いかな」
苦笑しつつ、汗を拭いながら氷室はポツリと呟いた。
「せっかくだから…日本の夏はアツシと楽しみたいな」
その呟きが耳に入った紫原は
ふーん…と興味無さげに返事をしつつ氷室の顔を見る。
「それならさー…オレの家来れば?」
「え?」
「東京のさ、オレの家に来れば良いじゃんって」
氷室は紫原の唐突な誘いに驚く。
「…それは、日本流の口説き文句かい?」
「ちげーし!勘違いすんなし!」
「違うのか…」
少し残念そうな氷室を無視して話を続ける。
「毎年、家の近くでお祭りあるから室ちんも一緒に来れば丁度いいってだけだし」
「アツシ…」
照れ隠しからか、紫原はそう言った後そっぽを向いて袋からお菓子を取り出し食べ始めた。
「ありがとう、嬉しいよアツシ」
「ん〜…」
思った以上に喜ばれ、照れくさくなり素っ気ない返しをしてしまう。
「そうだ…小さい頃に日本からのお土産で貰った物があるんだけど、それ日本のお祭りにある物みたいなんだ…名前がわからないんだけど…」
紫原はそう話す彼を見つつ
柄にも無い事したかも…と、少しだけ恥ずかしい気持ちと後悔に似た気持ちが彼を襲う。
まぁいいか…と開き直り、お菓子を食べる手は止まらない。
「向こうで探せばあるんじゃないの」
「そうだな…アツシ、一緒に探してくれるかい?」
「別にいいけど」
嬉しそうに笑う氷室の顔を見ると
暑さ以外の理由で顔が徐々に熱くなっていく。
「…ほんっと暑いし」
「そろそろ帰ろうかアツシ」
「うん」
室ちんが楽しみなら何でもいいや
終