年末年始 正月は嫌いだ。
名前も知らない、顔も見たことあるようなないような、ようするに悟にとって興味がない他人が、代わる代わる下手くそな笑顔を貼り付けて挨拶にくるからだ。親よりもずっとずっと年上の人間が、年端もいかない悟に媚びへつらう姿は滑稽でしかなく、居心地が悪いったらない。それが息苦しくて小さい頃は逃げ出したりしていたが、年を多少重ねれば自分の立場というものも理解してくる。
五条家相伝の術式を持つ跡取り、今後この世界の中心に立つことが確定しているのだから、いまのうちに悟に顔でも媚びでも売っておこうと考えるのは自然な流れだろう。
ただ、理解したからといって受け入れられるかどうかは別問題だった。大人しく座っていることだけは了承したが、嫌味を返したり、あからさまに不機嫌になったりしては生意気だと陰で言われたりしていた。
1937