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    ハロウィンということもあり修道士ディミトリ、悪魔ベレスがバディのパロディ。性癖です。

    Daredevil/ディミレス 宇宙の何処かに存在すると或る星には人間が住まう地と人為らざる者が暮らす地が存在し境界が敷かれている。本来互いの世界に介入し合えない筈だが、人間が住まう『フォドラ』と呼ばれる大陸は境界に歪みが生じやすく、人為らざる者が介入して来ることもある。
     古代、境界を越えて『シリウス』という異邦の地から人為らざる者たる『女神』が舞い降り、女神はフォドラの人間を慈しんだ。そんな女神を信奉した人間らによって『セイロス聖教会』という宗教団体が造り上げられ、団体が提唱した『セイロス教』と呼ばれる女神を信仰する教義が広がった。フォドラ外の異国の地から他の教義が取り入られた現代も尚、国教としてフォドラの人々の心の拠り所となっている。
     そんなフォドラの中には女神を『凶星』と誹り、悪魔や悪霊や魔獣といった俗に言う『異端』を神として祀る女神と女神を信奉する人間を善しとしない、『闇に蠢くもの』と呼称される勢力が異端の力を利用してフォドラを脅かすことがあった。
     基本的にセイロス教は他教を廃することは無いものの、仇なす勢力に与える慈悲など存在しない。そんな勢力に対抗する組織が教会の本山に当たる『ガルグ=マク大修道院』に在籍する女神への信仰心が厚い修道士から構成されており、若き修道士ディミトリもその一人であった。

                        ◇
      
     大修道院の麓に位置する町は日暮れの後ともなると寝静まっているかのような静けさに包まれる。だが、飛竜の節の半ばから数週間は町は家々から漏れ出ている光に包まれ、思い思いの仮装に身を包んだ住民達が光の中を練り歩き賑わいを見せる。教会で勤めを終えたディミトリは宿までの帰路の途中、賑わう住民を目にし今年も『収穫祭』の時期がやって来たと自覚する。
    「しゅーどうしさま! おかしをくれないといたずらするよ!」
     道中、ディミトリに声を掛けて来たのは真っ白なシーツを被って悪霊ゴーストを模した仮装をし、バスケットを手に持っている子供達。セイロス教の信徒や修道士の中には異国から入って来た行事を忌む者も少なからず居るものの現代、娯楽扱いの民間行事として捉えている者も多くディミトリは後者の立場にあった。
    「……ん? 隣りに居るのは友人か?」
    「うん、おともだちのようせいさん! おかし、ようせいさんのぶんもありますか?」
    「あぁ、勿論用意しているぞ」
     輪の中にはバスケットを持った妖精達の姿も見受けられる。楽しげに過ごす妖精達の姿に子供達に危害を加えることは無いだろうと判断したディミトリはバスケットの中に妖精の分のキャンディも詰め込んだ。沢山の菓子を受け取って子供達と妖精達は顔を見合わせて笑い、その様子を前に今年も良い収穫祭になるだろうと。穏やかな心持ちで物思いに耽るディミトリの足元に小さな影が一つ。
    「にゃーん」
    「あ、ねこちゃん! ねこちゃんもおかしほしい?」
     小さな影は灰毛の翠色の瞳を宿した一匹の猫。いつの間にかやって来た猫は執拗に甘えた鳴き声を上げながらディミトリの足元に擦り寄った。だが、ディミトリは足元に擦り寄って来る猫を手で押し退けると特に菓子を与える訳でもなく、無言のまま歩を進め出す。
    「……? まぁ、いっか! しゅーどうしさまにねこちゃんもまったねー!」
     猫に対するディミトリの態度に疑問を抱きながらも子供達にとってさほど大事おおごとでは無かったのか、去り行くディミトリの背を見送ると妖精達を連れ立ち別の場所に菓子を貰いに駆け出して行った。

                        ◇
     
    「……ねぇ、このままだんまりのつもり?」
     受付を済ませ宿の部屋の前に辿り着いたディミトリに投げ掛けられた言葉が一つ。『声』を掛けて来たのは先刻、足元に擦り寄って来た『猫』でとたとたとそのまま後ろを付いて来る。だが、ディミトリは耳を傾けず扉を開けて中に入った瞬間、直ぐ様閉めて侵入を妨げる。着用しているカソック内側のシャツの襟を緩めながら部屋の奥に向かうと、窓際に設置して在ったベッドの上に『居る筈の無い』猫がそこに。
    「……」
     猫を目にした瞬間、ディミトリの口から溜め息が漏れ出でる。反応を前にした猫は「ふふん」と楽しげに笑い、そんな猫に対しディミトリは眉を顰めながら睨み付けると懐から取り出した小瓶の蓋をちらつかせる。
    「おっと、聖水は私に効果が無いことは知ってるよね? ……だっていうのに、私を濡らして何するつもりかなぁ?」
     言って、猫は悪戯っぽく笑う。「馬鹿を言うな」と一蹴したディミトリは小瓶を仕舞い、尚更に大きな溜め息を吐き出しながらベッドの上へと腰を下ろした。
    「ところで、妖精達には菓子をやっておいて私には無いってどういうこと? それよりも、いくら収穫祭とはいえ妖精達を放っておいて良いわけ?」
     それから、猫はディミトリの腕にこつこつ頭を押し付けながら訴える。ディミトリは猫の頭を撫で上げた後にぐっと後方へ押し退けると、おもむろに口を開く。
    「……妖精達は危害を加える様子は無かったのでな、放っておいても問題ないと判断したんだ。……お前より危険な悪魔などこのフォドラには居ないと思うが?」
    「む、心外だなぁ」
    「それに、猫の姿を取ってまで媚びて来る悪趣味なお前にあげる菓子は無いな。……ベレス」
     ディミトリから呼ばれた猫は「にゃーん」と、一際高い鳴き声を上げる。声を上げたのと同時に猫の背から黒みがかった灰色の羽が生えて自らの体を包み込む。暫くして羽が広がり、猫に代わって中から現れたのは紺色の長髪をたなびかせる端正過ぎる顔立ちの女。顔立ちだけで無く目に突き刺さるような輝きを放つ翠色の瞳、背負うおおきな羽と頭上に生えている歪んだ二本の角に加えて纏っている独特の雰囲気が『人為らざる存在』で在ることを示している。
    「悪趣味、か。この愛らしさが分からないとはねぇ」
     端正な顔立ちの女、――ベレスは妖しく微笑みながら問い掛けるもディミトリは口を閉ざし、眉を顰めたまま彼女を見つめる。
    「折角の綺麗な顔が台無しだよ。全く、契約を交わした頃はもっと従順だったじゃないか」 
    「お前と契約したのはあの時の最善の選択がそうだったからだ。契約の対価として寝床や、……生命力は提供しているのだから必要以上に馴れ合わうのは……」
    「やれやれ。私に懐いてくれた昔の可愛い君は何処に行ったのやら……」
    「……あくまで子供の頃のことだ!」
     むきになって反論するディミトリにベレスはくつくつと笑いながら手を伸ばし、彼の金髪に指を絡める。ディミトリは容赦なく振り払うもそのつれない態度が余計にそそるのか、ベレスは猫のようにディミトリの体に擦り寄って纏わりつく。
    「ベレス、いい加減に――」
     他愛の無いまるで痴話喧嘩のようなやり取りを交わす最中、突如として屋外から響き渡った轟音が二人の耳をつく。異様さを感じたディミトリは立ち上がり窓に向かうと屋外へと飛び降りる。音が聞こえた町の広場の方角へ走るとディミトリの視界に罪なき者を殺めようとする魔獣が飛び込み、異端を前に幼き日に体験した『地獄』の光景が彼の脳裏を駆け巡る。
     
    (〝……死にたくない〟)
    (〝痛い、熱い、嫌だ……〟)
    (〝助けてくれ、誰か……〟)

    「……っッ」
     同時に、抑えきれない程の怒りが込み上げる。その勢いのままディミトリは駆け出そうとするも、背後からやって来たベレスによって裾を掴まれ阻まれた。
    「魔獣をけし掛けて来るなんてね。形振り構わないやり方で収穫祭を台無しにしようとして来たのを見て闇に蠢くもの、だろうね」
    「……そうだな。……だから、俺が殺さないと」
     ディミトリは告げて駆け出そうとするもベレスは「行かせるものか」という意思表示を示すかのように裾を掴む力を強めた。
    「……おい、ベレス。 ……ッ、離せ!」
    「お菓子」
    「……は?」
     あろうことか、この状況下で収穫祭お決まりの言葉をベレスは告げてディミトリは思わず立ち尽くす。そんなディミトリに対しベレスは口元を尖らせてから言葉を続ける。
    「まだ貰っていないからね。だから、行かない。くれないのなら、……君も行かせない」
    「……こんな時に。……ふざけるのもいい加減に――」
    「『こんな時』だからこそ、私なりに君を落ち着かせようとしてるんだけど?」
    「……」
     滅茶苦茶な答え。にも関わらずベレスの言葉はディミトリの胸を突いて彼は溜まらず押し黙る。
    「今のまま突っ込んだら君、……死んじゃうよ」
     押し黙ったディミトリをベレスは真っ直ぐ見据えると訴え掛ける。投げ掛けられた言葉そして、瞳と瞳の重なり合いを通してベレスが言わんとしていることを感じ取ったディミトリは、彼女に対しゆっくりと顔を頷かせてから告げる。
    「……俺はまだ死ねない。……奴等を前にして頭が真っ白になっていたようだ。……すまない」
    「君が奴等を許容出来ないからこそ、様子が可笑しくなることくらい想定の範囲内さ。……それに、分かってくれたのなら謝る必要は無いよ。雇い主に死なれたら困るからはっきり言ってやったんだ」
    「結局、それが本音か」
    「ふふっ。私が困るから、だけが理由じゃ無いよ。君に死んで欲しく無いとは心の底から思ってるからね」
    「……どうだか」
    「むぅ、本当なのに。全く、本当に可愛げが……」
    「どうせ可愛くないさ。……それよりも、ほら」
     断ち切るように言って、ディミトリはカソックのポケットからキャンディを取り出すとベレスに差し出した。受け取ったベレスは包みから剥がすと自分の口に運ぶのではなく、ディミトリの眼前まで浮き上がり彼の口の中へと押し込んだ。
    「……?」
    「キャンディ一つで雇われるわけにはいかないね」
     ベレスの行為の意図が理解出来ずディミトリが問い正そうとしたその時、彼女の口付けによって唇が塞がれる。塞がれるだけに留まらず口内に舌をねじ込まれディミトリの舌にはベレスの舌がゆるりと絡み付いて、キャンディの砂糖が滲み出る睡液と混じり合い全体へと浸透していく。僅か数秒の口付けによって先程までぐちゃぐちゃとした感情が渦巻いていたのが嘘だったかのように、ディミトリの心は晴れやかになっていく――。
    「……対価は、これでもう十分だろう?」
     心地良さにこのまま浸っていたいとは思いながらもその想いを掻き捨て、ディミトリの方からゆっくりと唇を離す。
    「そうだね。貰った分はきっちり働いてみせるよ」
     そんなディミトリに対しベレスは微笑みながら答えるとふわり、と浮き上がる。浮き上がってそのまま、灰色の羽を羽ばたかせて飛び立った。その飛行速度はディミトリに瞬きのいとまさえも与えない。魔獣の上空へ辿り着いたベレスが右手を横に下ろすと何も無かった筈の空間から黄金の剣が現れ彼女は迷い無く手に取った。
    (……)
     剣を手に対峙するベレスの姿を前にして、ディミトリの脳裏に彼女と初めて出会った日の記憶が思い起こされる。
      
     幼き日、突如として故郷へ襲来した闇に蠢くものが使役する異端によって平穏は壊された。毎日、女神へと祈りを捧げて大切な人達と穏やかな日常を過ごしていただけにも関わらず突如として奪われる形で――。
    「お前は逃げろ」と。家が焼け落ちる手前父から助け出されたディミトリは異端に喰われ、絶望に嘆く人々の声を背負いながら炎の中をひたすらに駆けた。
     駆けても尚、逃げ場は見えない。いつしか息も絶え絶えになって体は地に落ちる。これが自分の運命ならば仕方が無いと『無理矢理』に言い聞かせてディミトリは目を閉じる。
    「……死にたくない。……死んで、いられない」
     だが、運命を諦めた筈のディミトリの口から零れ落ちたのは『生』への執着。
    (〝なるほど、つまり君は生きたいということだね〟)
     その声を発した瞬間、ディミトリの脳裏に尊大な声が響く。ディミトリ自身どうしてそうなったのか理解が及ばなかったものの、声の主の言葉によって消えかけの命に再び青い炎が灯る。
    (〝君は死を前にして「生きる」という意思を確立した。とはいえ、このままだと死ぬだろう。君は、……悪魔に魂を売ることになったとしても生きる覚悟はあるかい?〟)」
     そして、その言葉を告げられたのと同時に闇に染まっていたディミトリの視界に光が差し込む。光の中から現れたのは紺色の長髪をたなびかせる端正過ぎる顔立ちの女。目に突き刺さるような輝きを放つ翠色の瞳、背負うおおきな羽と頭上に生えている歪んだ二本の角に加えて纏っている独特の雰囲気。得体の知れぬ『人為らざる存在』に対してディミトリは恐怖を抱くも、恐怖よりも勝ったのは自身の声、想いに応えてくれた女に応えたいという感情。
    「……生きたい。……こんな、理不尽に奪われたまま死ぬなんて、……認めたくない!」
     自らの意思でその感情を抱いたのと同時に、ディミトリは女に向かって手を伸ばす。ディミトリが何も語らずとも想いを汲み取ったのか、女は口元を歪ませ彼の手を取ると小さく口づけを落とした後に、――告げる。
    「――君の想い、確かに受け取ったよ。というわけで、成立だ。……君と契約を交わした悪魔の私はベレスさ」
    「……ベレス」
    「早速こうして対価も頂戴したことだし、貰った分はきっちり働いてみせるよ」
     告げて、ベレスはゆっくりとディミトリの手を解放する。解放するや否や、異端が集まっている場所へ飛び立ち、彼らの頭上に辿り着く。ベレスが右手を横に下ろすと何も無かった筈の空間から黄金の剣が現れ、迷い無く手に取った。
     ベレスは一気に降下すると剣を振り下ろし、辺りは眩い光に包まれる。その輝きに充てられたのか異端は苦悶の声を上げながら光の中に融解して行った。

    「――はあぁぁっ!」
     ――その出会いから数年経った今も尚、ベレスは変わらぬ輝きを放ちながら悠然と剣を振るい屠っていく。涼しげな表情で容赦なく剣を振るう様は正に『悪魔』
     だが、その姿にディミトリが抱いた感情はこの世で見た何よりも『美しい』ということ。その美しさに幼き頃より信奉していた『女神』の姿を重ね見て、ディミトリの心は高ぶっていきベレスに続くように異端へと立ち向かって行く。
     
     これは、悪魔女神悪魔女神に魂を賭けて共に生きる決意をした青年が紡ぐ物語の断片。
     歪な契約を交わした二人はこれからも共に在り続け、自らの意思を示しながらフォドラに蠢く闇と戦い抜いて行くことだろう――。
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    たまを

    PROGRESS2024/6/30 「蒼の月導く夜明けの星」発行の同人誌収録の書き下ろしサンプルとなります。
    銀雪の章から4年。グロンダーズへ訪れたベレスと生き延びていたディミトリが或る切っ掛けで再会を果たし、生き延びた『意味』の答えを導き出す物語。
    ※展開上、架空のモブが登場します。
    ※銀雪題材のため甘い描写は薄いです。心の繋がりが無い訳ではないため、ディミレスになり得る可能性の線引でお読み頂ければと思います。
    【ディミレス/サンプル】ミッシング・リンゲージ

    瞼を閉じれば『彼』が思い起こされる。
    もう、九年の歳月が過ぎているにも関わらず鮮明に――。



    日課の鍛錬のため訓練場へ向かうと、一際賑やかな輪が視界に飛び込んで来る。
    「……うーん、こう?」
    「いや、こうだろ!」
    「そうだな、もう少し構える位置を下に。そうすれば間合いが捉えやすくなって、先手を踏み出せるからな」
    輪の中に居たのは数名の少年と青獅子の学級ルーヴェンクラッセの級長、ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダット。どうやらディミトリが少年達に剣の指導をしているようだった。
    「分かった、こうだ!」
    「……あぁ、そうだ! 皆、筋が良いな!」
    「へへっ、やったぁ!」
    「よしっ、そうしたら次は狙いをあの木人でく
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