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    s_toukouyou

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    s_toukouyou

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    甚五3

    #甚五
    veryFifth

    「というわけでね」
     どういうわけだよ。
     唐突に連れてこられた屋敷はめまいをするほどに広く、蒸発したと思っていた父親は左腕を失い寝たきり、ついでとばかりに語られたおのれに流れる血の厄介さ。いきなり詰め込まれた情報の多さに伏黒恵はずきりと痛むこめかみを押さえた。
     先ほど血の繋がらない姉が「父親の容態についてはまだ幼い子に聞かせる話ではない」と暗に匂わせた女性に連れられてこの和室から出ていったが、どう考えてもこちらが本命である。呪術がどうのという話がしたかったから、関係のない姉を引き離したのだ。そも、年齢を基準にするなら姉にも聞かせていい話ではない。
     最後にさらりと語られたそれが、どうやら本題のようであった。実に軽い口調で、伏黒恵の父親の本来の姓が持つ意味、おのれに流れる血の意味を語り、父親の実家を選ぶとはどういうことか、自らの庇護下に入ってもよいことなど、つらつらと説明して、さてこれからどうすると選択肢を恵の前に並べた青年は、にこにこと笑っているが実に胡散臭い。
     じと、とにらみつけると、サングラスの色硝子越しに銀瑠璃の瞳が笑みで答えた。
     そもそも、いけ好かないと思っていたとはいえ、父親の腕を落とした相手の発言である。どこまで信じていいのだか。いっそのこと今からでも110番でもするべきなのではないか、俺は。
    「どっちかっていうと俺の方が被害者なんだからね」
     思考を読んでいるかのようなタイミングで青年が不満げな声をあげた。
     被害者ぁ? とおもわず疑わし気に青年の全身に恵は視線をすべらせた。どこにも問題はなさそうだが。
    「もう治しただけ。いきなり後ろから刺されるわ、足めった刺しにされるわで、ほんともう」
     うんざりとした様子でぶつぶつとこぼされた言葉に動揺する。
     目をまるくした恵に気が付いて、座布団のうえで胡坐をかいた青年が、自身の肘に頬杖をついて、前髪をかきあげた。左眉の上に治りかけのかさぶた。縦に細長いそれに、恵はなんだか嫌な予感がしてごくりと唾を飲んだ。
    「ここにも一刺し貰っちゃったし」
    「……なんで、その、アンタを襲ったんだ?」
     それで生きているのかとか、そんな早く治るものなのかとか、そういった疑問は消化はできないもののひとまず飲み込んで、恵はその疑問を口にした。
    「あー、仕事らしいよ」
     俺が通報しないといけないのは実の父親のほうかもしれない。沈痛な面持ちで恵は110番するイメトレをした。被害者のほうがピンピンしているのだが、受理してもらえるのだろうか、この場合。
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