毎年クリスマスはあきらかに機嫌が上を向く友人を眺めながら、ラインハルトはちいさくあくびを噛み殺した。なにぶんまだ少年の域を出ない年頃だ。それに今日はクリスマスだ、学友と遊んできたものだから、余計に眠気が勝る。
主は来ませり、この世の闇路を照らしたもう妙なる光の主は来ませり。とくちずさむ友人は、うとうとと船をこぐラインハルトの髪を丁寧に梳かしていた。
この友人と出会ってから、切るタイミングを逃し続けた髪は、腰に届くほどに長く、日々の手入れは友人が嬉々としてやっている。
「自画自賛かな、カール」
あまりの眠さに、自分がなにを言っているのかも、あやふやであった。
「まさか」
うっすらと笑って、友人は纏めたラインハルトの髪の先にくちづけを落とす。
「私にとって光は拝するものだとも。今宵は……公然と光の到来を讃えられる日でしょう」
ふうん、と分かっているのか、いないのか、曖昧にうなずいてラインハルトの脳裏をよぎるのは、黄昏の浜辺にたたずむ女の姿であった。見知らぬはずなのに、なつかしさを感じる。これが敬愛するといえば、これを置いて他にないだろうという妙な確信が湧き上がる。
「ううん、卿への贈り物は用意したが、悪いな、どうにも眠い。あした渡そう」
もにゃもにゃと言いながらすやりと眠ってしまったラインハルトを、友人は腕の中に隠すように抱き上げて寝台まで運んだ。毛布をかけて、当然のようにその隣に滑り込んで、ぎゅうと抱きしめる。
おくりものはとっくのとうに貰っているので、わざわざ他に用意してもらわなくてもよいのだが、くれるというのなら、喜んでもらうだけである。