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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ4リメイクで追加されたED後の話。ソロとピサロの殺伐とした友情。一応設定としては、ソロはシンシアと、ピサロはロザリーと暮らしています。

    #DQ4
    ##4

    誰も知らない ソロさまはいつも、ふらっと遊びに来られる。
     ピサロさまとは少し違うあやかしの笛の音が聞こえた時は、ソロさまが来られた合図。沢山のお土産を抱えて、「やあロザリー、元気?」と優しい笑顔でこちらに問いかけてこられるので、こちらも、「ええ、おかげさまで」と微笑み返す。
     私がソロさまにお茶をお出しすると、ソロさまは手にいっぱい抱えていたお土産を並べて、「これはアリーナから、サントハイムで評判の焼き菓子。こっちはトルネコから、エンドールで流行りのネックレスだって。あとバトランドの戦士が皆持ってるお守りと、これなんだっけ……あ、これはマーニャがカジノで当てたっていう……えっ、バニースーツ!? あいつ、こんなもの……」と、なぜか頭を抱えつつ解説をしてくださる。
     ソロさまは今、勇者として世界を救う旅を終えた後、故郷の村でシンシアさまと共に、木こりとして暮らしておられる。切った木材をブランカの城下町や、エンドールのトルネコさんの店に売ったりして生計を立てておられるらしい。
    「で、今日は、ピサロは?」
    「ピサロさまなら、今日はデスパレスにおられます。会議があるそうで」
     ソロさまはそれを聞くと、そう、と言い、お茶を一気に飲み干すと立ち上がられた。
    「よし、じゃあ俺、ピサロに会ってくるよ。ありがとう、ごちそうさま」
    「いいえ、こちらこそ。どうぞ、またいらっしゃってくださいね」
    そう言うと、ソロさまは塔からお出になり、すぐにルーラでデスパレスへ飛んで行かれる。それを見て、今日はきっとピサロさまのお帰りは遅いわね、とひとりごちた。


    「まだ寝ていなかったのか」
     すっかり夜の帳が下りたころ、おかえりなさい、と声をかけた私に、帰ってきたピサロさまは驚いたようにそう言った。
    「ええ、きっとお疲れかと思って……お茶を淹れますわ、今日はソロさまが持ってきてくださったお菓子があるんです、アリーナさまからだとか」
     どうぞ、とおいしそうな焼き菓子をお皿に載せて出せば、ピサロさまは、ほう、と言ってまじまじとお皿を覗き込む。
    「あの娘、とんだじゃじゃ馬だが、王族らしく舌は肥えているからな。いただこう」
     そう言うと、ああ、疲れた、と言いながらピサロさまは椅子に腰掛け、焼き菓子をかじって、美味い、と一言呟いた。それを見て私は笑う。
    「相変わらず、お強いですか、ソロさまは」
    「木こり仕事で力を鍛えているのか、以前より一撃が重い。他は相変わらずだな」
     ソロさまは、私たちに会いに来られると、必ずピサロさまに勝負を挑まれる。私たちに会いに来るのは口実で、きっとピサロさまと戦うのが一番の目的なのだと思う。
     以前、私たちが暮らしているこの塔の屋上で、ピサロさまとソロさまが戦われた時。直接見てはいなかったけれど、激しい剣戟の音と、雷や炎、氷、ありとあらゆる魔法の放たれる音が村中に響き、やがてそれが終わった後、2人とも満身創痍で、絶句したものだった。どうしてこんな、と問うと、ソロさまは困ったような顔で私に笑って、「ごめんなロザリー、ピサロのこと頼むよ。じゃあ、俺帰るわ」と言って、ルーラですぐに帰られた。
    「……ソロさまは、やはり、ピサロさまのことをいまだに、許せないのでしょうか」
     だから何度もピサロさまに勝負を挑まれるのでしょうか、と私が言って、ピサロさまの前にお茶が入ったカップを置くと、ピサロさまは、どうだろうな、と呟く。
    「あいつは何も言わない。恨み言も、文句も、……ただ、戦えと言う。戦っている時のあいつの目は、深淵を覗き込んだかと思うほどに昏い。ただの推測だが、おそらく、私を憎みながら、己を責めてもいるのだろう。己が勇者でなければ、あの時もっと力があれば、村を滅ぼされずに済んだのではないかと。……私もそう思った、私が魔族を束ねる立場でなければ、もっと自分に力があれば、お前を救えたのではなかったかと。ロザリーよ、人間にも魔族にも、よい者と悪い者がいる、世界を救った勇者にも、魔族の王にも、美しい心と醜い心がある。あいつはきっと、自分の心の天秤が負の方に傾いている時に、私の元を訪れるのだろう。そして、私と戦って、気が済んだら、天秤が正の方に傾くのだろうよ。……私と戦い終えた時のあいつの顔は、晴れ晴れとしているからな」
     難儀なことだ、とピサロさまは呟くと、ふう、と一つため息をついて、カップのお茶を飲み干された。
    「ところで、この菓子以外にもまた何かもらったのか? ……まあ、私と戦うのが目的で来ているのだろうが、あまり土産を沢山もらっても借りが増えたようで気が引ける」
    「ええ、そうなんです。今度は何かお返ししないといけませんね……ええと、確か、お菓子と、ネックレスとお守りと、バニー、スーツ? と仰っていましたわ、でもバニースーツって何なのかしら、ピサロさまはご存知ですか?」
     私がそう言うと、ピサロさまは絶句され、頭を抱えられる。そして、
    「ソロめ、ロザリーにそんなものを、……今度はこちらが戦いに赴かねばな」
    と、それはそれは恐ろしい顔で言い、唸られたのだった。
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