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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。前の話の続き。サンマリーノに到着してすったもんだ。

    #ハッ主
    masterOfTheHack
    ##6(ハッ主)

    本 3「透明なのに、宿代取られるの納得いかない」
     レックが財布の中身と宿屋の主人を交互に見ながら恨めしそうに呟くのに、おもわず笑う。
     地面に開いた大穴から真っ逆さまに下に落ちてやってきた、レックいわく、幻の大地。ダーマ神殿とやらの跡地から少し離れたところにある、サンマリーノという港町についたオレたちは、とにもかくにもまず宿屋に向かった。
     透明になったはずなのに、なぜか魔物には俺たちの存在がバレる。上の世界にいた時から戦い通しで、オレもレックもそろそろ体力が尽きそうだった。
    「前に幻の大地に来た時さ、ここじゃない町で宿屋に入ったんだけど、なんと!タダで泊まれたんだ」
     きっとここでもタダで泊まれるはず、と、いたずらっ子のような顔でうきうきと楽しそうに宿屋に向かったレックはしかし、宿屋の主人に話しかけると普通に金を取られてしまったようで、がっくりと肩を落とした。
    「…みみっちいこと考えるからだぜ、レック」
    「ええ!? だっておかしくないか!? オレたち透明なのに!」
     いっそ払わなきゃよかったかな、でもつい払っちゃった、と言ってため息をつくレックに笑って、まあ払っちまったもんはしょうがねえだろ、と言いながら2階の部屋に行き、空いている部屋に入る。
    「あー、……疲れた!」
     そう言って、ぼふん、とうつ伏せにベッドに飛び込むレックを見て苦笑した。
    「全くだぜ、……しかしまさか自分が透明になっちまうとはな」
     不思議だな、と言いながら、オレは自分の手をじっと見た。手が透けて向こうの景色が見える。
     オレの手の向こうで、うつ伏せでベッドに寝転がっていたレックは、やがてのそりとベッドの上で体を起こし、座り込んでこちらを見た。
    「……どうしようかな、これから」
     レックがオレを見て、少し不安そうな声色でそう言うので、オレはレックに近づいた。レックの近くのあたりのベッドのふちに腰掛けると、レックはオレを見上げながら、また口を開く。
    「この、幻の大地に来るんじゃなくて、元の世界をもっと調べるべきだったかなって思ってさ。ラーの鏡は、元の世界でレイドックの王様に頼まれたものだし。でも、この世界のことも気になるから、ここをウロウロして調べてみたいなとも思うんだ。だから、戻った方がいいのか、進んだ方がいいのか、ちょっと迷っちゃってさ」
     レックのその言葉に、オレは、うーん、と唸る。
    「そうだな、……でも、元の世界は、あの穴の他にはもう周りに川と海しかなくて、行き止まりだったろ? まあ、船でもありゃあもっと他の所に行けたかもしれねえけどさ。だから、戻っても仕方ねえし、とりあえずこのまま進めばいいんじゃねえか? いざとなったら元の世界へはあのダーマ神殿の井戸から戻れるし、ま、なんとかなるって! そんな心配しなくたって大丈夫だろ」
     オレはにっと笑ってそう言い、レックの頭を手でぽんぽんと叩いた。レックはそんなオレをじっと見た後、ふっと表情を緩ませる。
    「ハッサンはカッコいいな」
     そう言ってレックはオレの胸元に頭をもたれさせてきて、オレは思わず体をこわばらせた。
     ……レックは結構、人懐っこいところがある。オレもよく、弟みたいに思ってレックの頭を撫でたり、ハグしたりするから、人のこと言えねえんだけど、レックはオレに対して警戒心がないのか、はたまたそういうタイプなのか、ちょいちょいオレの近くに寄ってきて、触れてくることがある。まあ、家族と離れて寂しいとか、そういうのもあるのかもしれねえけど。
     な、…な、なんか、でも、これ、これは、いい雰囲気って、やつじゃ……いや、違うだろ、オレとレックはただの相棒で、兄弟分で、ただ頼りになるからって甘えられてるだけで……でも、これ、か、肩とか、抱いた方が、いいのか…? どういう感じなんだこれ!? わかんねえ! 自分がレックに謎の下心を抱いてるのと、レックがよく近くに寄ってくるせいで、普通の距離感ってやつが全然ぴんとこねえ!
    「……いやっ、別に、能天気なだけだって!」
     オレはそう言いつつ、ばんばんとレックの肩を叩いた。こ、これくらいなら変じゃねえだろ! たぶん!
     レックは、ハッサン、ちょっと痛い、と言って笑いながら、オレの胸元に頭を擦り付けてくる。
    「そんなことない、あの試練の塔でオレより先に行って、オレのことなんか放っときゃいいのに、…兵士になれなかったオレに声かけてくれて、いつも世話焼いてくれて、励ましてくれて、……オレももっと大人になったらハッサンみたいにカッコよくなれるかな」
     オレ、ずっと甘えてばっかりで情けないよな、と苦笑するレックの肩を、オレは、我慢しきれずにとうとう抱きしめた。
     いやいや、ちょっとかわいすぎるだろ!?
     手を組まないかって持ちかけたの、ちょっと強引だった気もするし、確かに気もウマも合うが、密かに怖がられてんじゃないかと思ったりしてたんだが、そんな風に思ってくれてただなんて、そんな、……嬉しい、いつになく頬が緩みまくるくらい、嬉しい。そして。
     ……このまま、押し倒してえ、という考えがオレの中にふっと浮かび、オレは慌ててその考えを打ち払った。
     何考えてんだ!? 最低にも程があるだろ!
     せめてキス………いやいやいやいや!!
    「……ハッサン? どうしたんだ」
     大人しくオレに肩を抱かれたレックが、首を傾げてオレにそう問いかけ、オレがそのとんでもない思考の淵からはっと覚醒した、その時だった。
     突然、ガチャ、と部屋の扉が開く。
     オレはその音にびっくりして、慌ててレックの体を引き離した。
     開いた扉から入ってきたのはふたりの男女で、オレたちがいるベッドとは別のベッドに向かい、ふたりで並んで腰を下ろす。
     どこかの裕福そうな奥様っぽい女、と、男は、何だろうな? 使用人か? よくわからねえけど、とにかく他人が突然部屋に入ってきて、オレとレックはものすごくびっくりして、思わず顔を見合わせた。
    「えっ!? ここ、オレたちの部屋なのに」
     レックが驚いたように言い、そして、「あっ、そうか、透明だから見えないのか!」と情けない声で叫ぶ。
    「なるほどな、人から見えねえとこういう問題があるわけか……」
    「……仕方ない、部屋うつるか……確かもう一部屋空いてた気がするし」
     見えない上に話しかけても気づいてもらえねえんじゃ、違う部屋に行ってくれと頼むこともできない。
     オレとレックがため息をついて、ベッドから立とうとしたその時。
    「奥様、もう我慢できません…!」
    「あっ、ダメよ、そんな…!」
     という声が聞こえて、男が女を押し倒し、
     …………!?!?!?!?
     いやいやいや、ええ!?!?
     どういうことだよ!? 何!?!?
     オレは思わず目を剥いた。目の前のベッドでは男が女を押し倒して、キスをして、服の下に、手を……
    「うわーーーーっ!?!?」
     オレは思わず叫び、目の前にいたレックの目を両手で塞いだ。どうしてそんなことをしたのか自分でもよくわからない。なんかとにかくレックに見せちゃいけねえ気がしてやってしまった。
     まあ、よくよく考えたら、レックはもう結婚してもおかしくない歳なんだから、別に隠す必要もないんだが。
     レックはそんなオレの叫びと、突然目を塞がれたことに驚いたのか、「うわあ!?」と叫んだが、やがて、冷静な声でこう言った。
    「……あの、ハッサン、手で塞いでも見える、透明だし」
    「あーーっ、そうだった!! クソッ!!」
     オレが謎の敗北感に打ちひしがれつつ悪態をついているうちに、レックは「うわ……」と言ったきり黙り込んで隣のベッドを凝視し始めた。
    「お、おい、レック! 何見てんだ、早く出るぞ、部屋!」
     オレがそう言ってベッドから降り、足早に扉に向かうと、レックが「えっ?」と言って、驚いたような顔でオレの顔を見てくる。
    「見ないの? ハッサン」
    「見るわけねえだろ! 覗きじゃねえか!」
    「そうなの? てっきりこういうのに興味あるもんだと、だって、あの本、の…」
     レックはそこまで言うと、目を見開いて、すごい勢いで、口を両手で塞いだ。そのまま、顔を真っ赤にして、完全に固まってしまったレックを見て、数日前の記憶が蘇る。
     オレが風呂に入ってる間に、荷物の中から忽然と消えた本の、記憶。
    「おっ、お、前、……見たな!? あの本!?」
     ぶわっと一気にオレの顔にも血が上る。
     やっぱり! おかしいと思ってたんだ! タイミング的にこいつしかありえねえって、でも、……あーっ、クソッ、見られちまってたのか!!
    「ごっ、ごめ、いや、だって、ハッサンがあの袋を適当に椅子に投げるから! 不安定になったせいで、本が袋から出て床に落ちたんだよ! それを拾っただけなんだって! 確かに見たけどちゃんと返したし!」
     でも、…ごめん、と手を合わせて素直に謝ってくるレックに、うう、と唸る。
    「…………いや、い、いいけど……いや、よくねえ……うわーっ、恥ずかしい……!」
     オレが頭を抱えて床に蹲ると、レックはベッドから降り、こちらに近づくと、慰めるようにオレの肩をぽんぽんと叩いてきた。
    「気にするなよ、ハッサン」
    「いやいや、お前、気にするっつーの!!」
    「うん、まあ、でも、とりあえずさ、今は」
     やっぱり、早くこの部屋出ない? と、レックが赤い、少し気まずそうな顔で言う。
     気がつけば、ベッドの上のふたりは随分と盛り上がっている様子を見せており。
     それをうっかり見てしまったオレは、顔をさらに赤くし、慌ててレックと共に部屋を出たのだった。
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