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    まみや

    @mamiyahinemosu

    好きなように書いた短めの話を載せてます。
    現在は主にDQ6(ハッ主)、たまにLAL。

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    まみや

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    DQ6、ハッ主。ED後、モブ視点のふたりの話。ミレーユさんも出てくる。

    ##6(ハッ主)
    #ハッ主
    masterOfTheHack

    ニセ王子 知らない人がいた。
     森の中の、キノコがよく生えている、ぼくのとっておきの場所に。
     ぼくや、父ちゃんや母ちゃん以外の人が、こんなところにいるだなんて思いもしなかったから、ぼくはびっくりした。
     しかも、その人は、オレンジ色の服のすそを袋みたいにして、その中にたくさん、山ほど色んなキノコを入れていたから、ぼくは思わず叫んだ。
    「キノコどろぼう!!」
     するとその人は振り返り、驚いたように目をまん丸にしてぼくの顔を見た。
    「ここはぼくが見つけた場所なの!!」
     さらにそう言えば、その人はしばらくぽかんとしていたけど、おかしそうに、あっはっは、と笑い、ぼくの方に近づいてくる。思わず身構えると、その人はにっこり笑って「ごめんね」と言った。
    「ここ、君がいつもキノコ取ってる場所なの? なんか沢山生えてそうな所だなと思って来てみたら本当に生えてて、嬉しくなっていっぱい取っちゃって…ごめん、取りすぎたから君に返すよ。でも、オレもキノコちょっと欲しいんだ、料理に使いたいから」
     だめかな、と言いながら、その人は服のすそを傾けて、持っていたキノコをぼくが持っていたカゴにざざ、と流し入れる。
     母ちゃんに、キノコを取ってきてほしいと言われて渡されたカゴが、あっという間にキノコでいっぱいになった。
     カゴの中身をよく見てみれば、どれも食べられるキノコばかりで、毒キノコはひとつも入っていない。全部使えそうだ。
     おつかいが早く終わったのは嬉しい。早く終われば、その分、好きなことをして遊べるし。
     でも。
     ぼくはその人が持っているキノコの山をちらりと見た。ぼくにカゴいっぱいのキノコを渡しても、まだその人のキノコはたくさん余っている。
    「まあ、別に持って行ってもいいけど…ひとりでそんなに食べられるの? いっぱいありすぎじゃない?」
     ぼくがそう言うと、その人は、大丈夫、と頷いた。
    「ふたりで食べるから。それに、余ったら乾燥させれば結構もつしね」
     この人、本当にキノコに詳しい人なんだ、と思った。毒キノコを見分けられて、料理の仕方も知ってる。森に詳しいのかもしれない。
    「どこから来たの? キノコのことよく知ってるね。ええと、……」
    「ああ、オレはレックっていうんだ。出身はライフコッドっていう、山の上の小さな村。山の中でキノコや、あと山菜なんかもよく採ってたから、結構詳しいんだぜ」
     よろしく、と言って、レックはまたにっこりと笑った。
     青い髪に、茶色い瞳。結構カッコいい、優しそうな人だ。
     でも、よくよく見ると、この人、どこかで見たことがあるような。会ったことはないはず、たぶん、本とか、絵とか、……ああ、そうだ!
    「肖像画の人だ!」
    「ん? 肖像画?」
    「勇者様の…レイドックの王子様の、肖像画の人!」
     大魔王を倒し、世界を救ったという、レイドックの王子様で、勇者様。その人の肖像画が売っていたから、と言って、父ちゃんがサンマリーノの街へ行った帰りに、お土産に持って帰ってきたことがあった。
     目の前のレックは、その肖像画に描かれた王子様とそっくりだった。
     ぼくの父ちゃんは木こりだ。サンマリーノから少し離れた森で、ぼくと母ちゃんと一緒に暮らしている。
     木を切ったら、サンマリーノの街へ売りに行く。サンマリーノには父ちゃんのお得意様の大工さんの家があるからだ。急ぎの時はたまに向こうからうちへ取りに来ることもある。
     つい昨日も、大工さんが木を取りに来た。すごく大きな兄ちゃんで、ハッサンっていう人だ。ぼくを見るといつも何かおやつをくれるから、ぼくはハッサンさんが好きだ。もっと前は、ハッサンさんじゃなく、ハッサンさんの父ちゃんが来てたけど、ちょっと怖くて、ろくに話しかけられなかった。
    「へえ、王子様の肖像画に、オレが似てるって?」
     レックはそう言うと、にっと笑った。なんだか悪いことを企んでいるみたいな、そんな顔で。
    「えっ、な、何」
    「そりゃそうだ、だって、オレはその昔、レイドックの城に王子様のフリをして忍び込んだことがあるくらい、王子様にそっくりなんだからな」
     ふふん、と得意げに鼻を鳴らすレックに、ぼくは思わず眉を顰める。
     ということは、本物じゃ…ない!?
     そういえば、いつだったか、そんなことを父ちゃんと母ちゃんが言ってた気がする。王子様はしばらく行方不明になっていたけど、一度、帰ってきたと思ったら偽物だったって事件があったって。
     でもその後、本物の王子様は、大魔王を倒した勇者様になって、ちゃんとレイドックに帰ってきた。
     いずれ王様になる、世界を救った、偉い、王子様で、勇者様。お前も頑張ってこんな風に偉い人になるんだぞ、と、父ちゃんはぼくに、サンマリーノで買ってきたという王子様の肖像画を見せながらそう言った。
    「だから、オレは実は悪い奴なんだよ」
     ニセ王子で、キノコどろぼうだ。どうだ、怖いだろ、と言って、ヒヒヒ、とこちらを見ながら怖い顔で笑いかけてくるレックにおもわず背筋がぞぞ、と震える。
     まさか、噂の偽物が、ぼくの目の前に現れるだなんて!
     その腕に、ぼくはパンチをくらわせた。レックが、いてて、と言って笑う。
    「えいっ、悪者! キノコはやるから、さっさと家に帰れ! ええと、ライフ…コッド? だっけ?」
     ぼくが首を傾げながらそう言うと、レックはまた怖い声でぼくに喋りかけてくる。
    「そうだ、ライフコッドだ! ……でも、オレは悪い奴だから、正体がバレて、ライフコッドも追い出されちゃってさ」
     レックはそう言うとしょんぼりと肩を落とした。なんだか本当に悲しそうで、ぼくはまたパンチを繰り出そうとした手を思わず止める。
    「えっ、じゃあ、今の家はどこ? もしかしてサンマリーノ?」
     不思議に思ってそう聞くと、レックはまたにっこりと笑った。
    「ええとね、……今作ってもらってるとこ」
    「え?」
    「オレはとっても悪い奴だから、サンマリーノからハッサンっていう大工さんを騙して連れてきて、ここの近くにこっそり家を建ててもらってるんだ」
     レックのその言葉に、ぼくはまた驚いた。
     そうだ、ハッサンさんは、昨日木を取りに来て、……でも、元々の注文にはない急な発注?だったとかで、父ちゃんは困ってた。それで、何かふたりで色々話して、結局、今うちにある木を全部渡して、今日は父ちゃんは朝早くから木を切りに行った。
     ハッサンさんは昨日はサンマリーノには帰らなかったようで、森の中の少し開けた場所に何か小屋みたいなものを作っていて、どうしてなのかなと思っていたけど。
    「あれ、お前がハッサンさんを騙して作らせてたのか!?」
    「へへっ、そうなんだ、実は。ほら、ハッサンって、王子様と一緒に旅してた仲間だろ? おまけにあいつはオレと違ってすごくいい奴だから、オレが王子様のフリして頼んだらころっと騙されてくれてさ。……まあ、ちょっと申し訳ない気持ちはあるから、せめて料理でも作ろうかなと思って、キノコ集めてたんだけど」
     なんてこった、ハッサンさんが!?
     ぼくはそれを聞いて、慌てて駆け出した。ハッサンさんの所へ一目散に走り、どうやら家の壁を丸太で組み立てているらしいハッサンさんに声をかける。
    「ハッサンさん!!」
    「ん? おう、どうした、坊主?」
     作業の手を止めてこちらを見てくるハッサンさんに、ぼくは言った。
    「ハッサンさん、騙されてるって! さっきレックって人に会って、その人が言ってた、自分はニセ王子なんだって、悪い奴だから、帰る家がないからハッサンさんを騙して家を建ててもらってるって!」
     ハッサンさんは、目をまん丸にしてぼくの言うことを聞いていた。でもしばらくぽかんとした後に、おかしそうに、あっはっは、と笑いだす。
     それはさっきのレックとそっくりだった。
     ぼくに、キノコどろぼう、と言われた時のレックと。
    「な、何で笑うのさ!」
    「あいつ、そんなこと言ってたのか? 自分がニセ王子だって? ……ま、確かにそうかもな」
     くっくっく、とまだおかしそうに笑い続けるハッサンさんに、大丈夫なの、と言うと、何が、と返される。
    「だって、ハッサンさんを騙してるって言ってたよ」
    「ああ、……いいんだよ、別に。そんなのとっくにわかってることだからよ」
    「どうして!? 偽物なのに」
    「偽物で、帰る家がなくなっちまって、寂しいあいつのことをどうにかしてやれるのは、オレしかいねえからさ」
     そう言って、ハッサンさんは苦笑した。
     だから、いいんだよ、と言って、ハッサンさんはそれ以上何も言わずに再び作業に戻る。
     ぼくがぼんやりとその姿を見ていたら、後ろから、がさ、と枝や葉を踏む音が聞こえた。
     振り返ると、そこには。
    「こんにちは」
     きれいな女の人が、ぼくに向かって微笑みかけてそう言った。
     この人も、知らない人だ。この森でこんなに知らない人に立て続けに会うなんて、生まれて初めてだ。
    「だ、だ、誰」
    「あら、驚かせたかしら? ごめんなさいね。私、ミレーユって言うの。あそこで、家…かしら?を作ってるハッサンの知り合いよ。……ねえぼく、ハッサンがどうしてあの家を作っているか、知ってる?」
     ぼくは頷いた。そして、ミレーユに、ニセ王子がハッサンさんを騙してあの家を作らせていて、でもハッサンさんはわかってやってるらしい、という話をした。ミレーユは真面目な顔で頷きながらぼくの話を聞いて、そして困ったような顔で笑う。
    「そうだったの。ありがとう、教えてくれて。あなたはこの森に住んでいるの?」
    「うん、父ちゃんが木こりをしてるの」
    「そう、それは……お騒がせしてごめんなさいね。私、ハッサンもそうなんだけれど、ニセ王子とも知り合いなのよ。実は昔、侍女のふりをして、あの子と一緒にレイドック城に忍び込んだことがあってね、……だから私も本当は悪い人なのよ。でも、本当はハッサンだって一緒に兵士のフリして忍び込んだんだから」
     そう言ってミレーユはウィンクをした。その言葉にぼくは目を丸くする。
    「え、じゃあ……じゃあ、皆、悪い人!?」
    「うふふ、そうなのよ、実はね」
     ミレーユはそこまで言うと、ハッサンさんの方へ向かって歩いた。そして近くによると、「ハッサン」と声をかける。
     ハッサンさんはこちらに向かって顔を出すと、「ミレーユ!?」と驚いたように叫んだ。そして、眉を顰めると、ううん、と唸る。
    「……お前が来たってことは、もしかして、大ごとになってんのか」
     それを聞いて、ミレーユは、「まあ、ちょっとね」と答えた。
    「おばあちゃんがレイドックの王妃様に呼ばれてお城に行ったわ。私はおばあちゃんから、あなたを探すように言われて、サンマリーノのご実家に行って、ご両親からお話を伺って、教えてもらってここに来たの。……この森にいるのね、困ったニセ王子は」
     そう言ってミレーユはこちらをちらりと見た。ミレーユはいたずらっ子みたいな顔で笑っている。ハッサンさんは、決まり悪そうにがりがりと手で頭をかいた。
    「……あいつ、何があったのか頑として言わねえから、よくわかんねえんだけど……今はキノコ取りに行くって言ってたから、そのあたりをウロウロしてるはずだぜ」
    「あら、そうなの? ……どうも、お見合いがあったらしいわよ、昨日。王様がね、あの子ももう結婚を考えなきゃならない年だし、でも縁談の話を本人に直接持って行っても断られてばっかりだから、こっそり、どこかのご令嬢とのお見合いをセッティングしたんですって。結構美人で、一度会えばきっと気が向くだろうと思ったそうよ。あの王様らしいといえば王様らしいんだけれど…でもあの子、それを知って珍しくすごく怒って、お見合いには行かずに、もう帰らないって言って、そのままどこかへ行っちゃったんですって。今までそんなこと一度もなかったから、王様も王妃様もずいぶん慌てたみたいで、それで、また行方知れずになった王子様を探すためにおばあちゃんが呼ばれたってわけ」
     ミレーユのその言葉を聞いて、ハッサンさんは、あいつ、と言ったまま黙りこくった。そんなハッサンさんに、ミレーユは、ふふ、と笑う。
    「あらあら、嬉しそうな顔しちゃって」
    「…………昨日、突然うちに来て、気が済んだら帰るから匿ってほしいって言われたんだ。あと、お願いだから一緒にいてほしいって。でもそれ以外は何も言わねえし、ずいぶん思い詰めた顔してたから、まあよくわかんねえけど、とりあえずバレにくそうな所に家でも建てるかと思って、建て始めてはみたんだけどよ、……どうすっかな」
    「そう、……いいんじゃない、気が済むまでのんびりさせてあげたら。あの子、あんなに頑張って自分の国も世界も救ったんだから、これから一生、大好きな恋人のあなたとのんびり過ごしたってきっと罰は当たらないと思うわ。そうね、せめてこの家は完成させてあげたら? そうそう、レックが戻ってきたら、よかったらうちにも遊びに来てって言っておいてくれないかしら? おばあちゃんからそう言われてるの、おいしい料理を振る舞ってあげるからって。おばあちゃん、明後日には帰るって言ってたから、それ以降ならいつでも。そうだわ、折角だし、他の皆にも声かけてみようかしら」
    「そりゃあどうも、……話してみるぜ、多分行くって言うんじゃねえかな」
     ハッサンさんのその言葉を聞くと、わかったわ、じゃあね、と言ってミレーユは帰って行った。
     ぼくは、目の前で交わされた、ハッサンさんとミレーユの会話を頭の中で整理して、考えて、……。
    「…………レックは、本当は、本物の、王子様……? いや、でも、ニセ王子ってことも本当…?」
    「お、よくわかってるじゃねえか」
     ちなみにオレはニセ兵士だぜ、と言って笑うハッサンさんに、うう、と呻く。
    「父ちゃんが言ってたんだ。レイドックの王子様は、偉い人なんだって。勇者様で、大魔王を倒して、世界を救って、かっこよくて」
    「おう、そうだぜ」
    「……でも、ニセ王子で、キノコどろぼうで、家出して、帰るところがないからハッサンさんに家を作らせてる」
    「違いねえ」
    「…………いい人なの? 悪い人?」
    「ま、どっちもだな」
     ハッサンさんはそう言って頷き、小さな声で、「別にどっちでもいいんだよ」と呟く。
    「どうして?」
     ぼくがそう聞くと、ハッサンさんは少し照れたように笑ってこう言った。
    「そりゃあお前、……馬鹿野郎、そんなこっ恥ずかしいこと大人に聞くもんじゃねえ」
     ほれ、ガキは早いとこ家に帰れ、とハッサンさんに追い立てられて、ぼくはしぶしぶ家路に着く。
     でも、途中でふと振り返ったら、いつのまにか帰ってきたらしいレックがハッサンさんの近くにいて、そして次の瞬間には、ハッサンさんがレックをぎゅっと抱きしめている姿が見えて、ぼくはやっとわかった。
     ああ、そうか。
     きっと、ハッサンさんは、レックのことがすごく大事なんだ。
     父ちゃんや母ちゃんがぼくのことを大事にしてくれて、抱きしめてくれるみたいに。ハッサンさんも、レックのことを。
     レックが本物でも、偽物でも。たとえ、どんな人だったとしても。
     はやく帰ろう。
     帰って、母ちゃんに、ぼくも、抱っこしてもらうんだ。ぼくも母ちゃんをぎゅってして、父ちゃんが仕事から帰ってきたら、やっぱり抱っこしてもらおう。そう思って、もう振り返ることなく、ぼくは走った。
     それで、あの家に、また明日、遊びに行こう。ハッサンさんの家づくりを見るのは面白い。それに、今度はレックに、この森の、もっと違う場所を教えてあげよう。キノコや山菜がいっぱい生えてる場所。王子様は、……いや、ニセ王子のレックなら、きっと喜んでくれる。そんな気がする。
     ああ、楽しみだな!
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