カリスマ青が男ってマジ?「【カリスマ】青が男って、マジか?」
恐る恐る、どこか疑うように、トゥニャはエルベに尋ねた。
エルベは「あー、」と間の抜けた声を出した後、こっくりと頷く。トゥニャは目隠しの下の眼を丸くした。
「マジで?」
「マジで」
「【記憶】男、嘘ついてねぇよな」
「何でオレが嘘つくんだよ」
念押しされても、答えが変わるはずもない。エルベは、今度は小刻みに何度か首を縦に振った。
トゥニャはしばらく細く長く息を吐きだす。そして、口を開いた。
「……まさかとは思うが、ヌビアには、その、露出狂みてぇなケがあったわけじゃねぇよな」
「私を何だと思ってるんだ」
と、言い切ってから、エルベは(しまった)とでも言うようにわざとらしく口を噤んだ。トゥニャは敢えてそこには触れず、肩をすくめた。
「見られたり注目されたりして興奮するヘキでもあんのかって思っただけだ」
「……そんなの、ヌビアにあるわけ無いだろ。仮にあったとしても、【カリスマ】のアイールやテネレにその性癖が受け継がれるわけがない」
今度のエルベは淡々と答えた。ふぅん、とトゥニャは唇を突き出す。まだ納得していないかのようなトゥニャの素振りに、エルベは頭を掻いた。
「トゥニャ、前の出掛けるのにも来なかったもんな」
「出掛け……あぁ、【優しさ】男が主催したってやつか」
「そう、あの時、男子会って名目で集まったろ。アイールは来たし、何なら一緒に銭湯だって行った」
「マジかよ」
信じられない、という顔でトゥニャはエルベを見ている。エルベは、そんな顔をされても、という表情を返す。
「……他の奴らはみんな気付いてたのか?」
「ン、いや、そうでもねぇと思う」
「じゃあ、【記憶】男、お前はどうだった」
「……あんまり、思い込みは無かったな。男だとも思ってなかったけど、女だとも思ってなかった。ほら、……………ヌビアは、髪が長かったし」
エルベは一瞬自分の髪を触る素振りをして、やめた。トゥニャは、今はナスカの所有となっているであろう水面が如き美しい長髪をイメージする。エルベの持つ記憶が、自身の頭に触れるかのようなその動作を招いたことは明白だったが、やはり、そこには触れなかった。
「男………【カリスマ】青が、男、そうか…」
あらためて、トゥニャはブツブツと呟く。ライバル増えるかもしれねぇな、という呟きは、エルベは敢えて聞き逃した。