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    転生の毛玉

    あらゆる幻覚

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    転生の毛玉

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    【創作/ヌビアの子】年上組の話を書こうとしてたのになぜか最年少コンビがずっと会話して終わった

    ##創作

    drank「な、エルベ、お酒って美味いんやろか」
    研究区から居住区に帰る道中、ラナークはエルベにそう尋ねた。エルベは金と赤の眼をラナークに向ける。
    「なんでまた」
    ラナークは八重歯を見せながらカラカラと笑った。
    「今日、ハトラ主催でな、飲み会すんねやって」
    「飲み会?誰が出るんだ」
    エルベが食いつくと、ラナークは、ええと、と首をひねった。
    「ハンザがな、引き摺られてってん」
    「それで今日いないわけだな」
    ハンザは、エルベ・ラナークと行動をともにする事が多い。特にダラダラと時間を持て余したり、寄り道をしたり…ということが能動的に好きなわけでもないハンザは、そういう行動の好きなエルベやラナークについていくことで時間を消費している、というわけだ。そのハンザが、今日はいなかった。もっとも、あの堅物ハンザのことだから、引きずられでもしなければ飲み会になど出ないだろうが────エルベはぼんやり考えた。それから、再度ラナークに尋ねる。
    「あとは?」
    「トゥニャと、ラリベラ……双子もおるんちゃうかな」
    「ラリベラも?珍しい、成人メンバーほぼ全員じゃねぇか」
    エルベは声を上げた。ラリベラは、6人の弟妹を酷く溺愛している。それこそ、ヌビアの子全員に対する招集命令がかかったときにも、『居住区に弟妹全員が安心して過ごせる家を用意しないんなら、俺は断る』と言い放ったというほどである。そのラリベラが居住区に帰るよりも飲みに参加するというのは、そうそうないことだった。ラナークは、あーな、と間延びした声で補足した。
    「なんか、ハトラが根回ししたんやって」
    「根回し?」
    「ラリベラんところの長女ちゃんにな、お兄ちゃんも飲み会連れていきたいんやけどええやろかーって、そんな感じのこと声掛けたんやって。そしたら当然優しい妹ちゃんは行ったらええやんて言うやろ?」
    「それで妹の気持ちを無下にも出来ず…か」
    納得して間もなく、ン、とエルベは首をひねる。
    「ハトラなら、そんなことしなくてもラリベラを連れていけるだろうに」
    ハトラは、『野望』のヌビアの子だ。自分が『こうさせたい』と思ったことはなんでも叶う。それこそハトラがラリベラに対して「飲み会に来て欲しい」と強く願えば、『パワー』のラリベラでは対抗敵わない。ラナークは、さぁ、と肩をすくめた。
    「大方、そこまで強い野望にならんかったか、妹から言われて来たってことにしたかったとか、そんなもんちゃう?」
    そうかもな、とエルベは呟いて頷いた。一番掴みどころがないヌビアの子。それが、ラナークやエルベのハトラに対する評価だ。考えたところで無駄だ、という気がした。

    「成人したら、俺もトゥニャと酒が飲みたいな」
    気分を変えるように、エルベはそう言った。
    「せやなぁ」
    トゥニャ。出会って間もない頃は、出会う人間という人間を毛嫌いして引き籠もっていた彼だが─────実際、今もオフの日はもっぱら引き籠もっているのだが─────、その根っこは案外にして暖かかった。『博愛』であるラサにトゥニャが惚れ込んでから、特にヌビアの子に対しては随分態度が丸くなった。少なくともエルベとラナークは、そう感じていた。
    「でも、トゥニャってなんの酒飲めるんやろ」
    「さぁ…」
    トゥニャは、『感覚』のエルベの子だ。感覚が鋭すぎるがゆえに、苦労しているところを何度も見ている。当然、味覚も普通を遥かに上回って鋭い。味の濃いものを受け付けられない彼が、どんな酒を飲むのか、二人には想像がつかなかった。
    ちらっ、とラナークはエルベを見やる。『記憶』である彼は、『感覚』を兼ね備えていた頃のヌビアの子としての記憶を保持している。その目線の意味を理解したエルベは、ため息を吐きながら答えた。
    「ラサには、好き嫌いがないだろ」
    「ん?せやな、うん、そうなん?」
    「そう。『博愛』は人だけじゃなくて万物に向くからな」
    「そお、それで、……どういう意味?」
    「つまりな、ヌビアにはどんだけ鋭い味覚があろうが、好き嫌いもなかったってことだよ。だから、トゥニャがなんの酒なら飲めるか、なんか知ったこっちゃねぇ」
    「はぁーん。そういうもんなんやなぁ。ありがと」
    ラナークは、エルベが『記憶』としてヌビアのことを語ることを好まないことを知っている。それでも、本気で拒まれているわけではない。そのことに少し安堵しながら、頭の後ろで手を組んだ。

    「双子は、どんなん飲むんやろ」
    「さぁな、あっまいカクテルとかじゃねぇの。成人したとて、あいつらとは飲みたかねぇな。ますますうるさそうだし」
    「言うたるなや」
    ラナークは笑う。エルベも本気で嫌がっているわけではないらしく、口角を上げて小さく笑っていた。
    「勝手なイメージだけどさ」
    「何や」
    「双子はさ、酒、強そうだよな」
    「分かるわぁ」
    『カリスマ』としての性質を差し引いても、アイールとテネレはかなりはっきりとした自我を持っている。言いたいことは言うし、楽しむことは徹底的に楽しむ。そんな二人が、酒でベロベロになっているところなど、エルベとラナークには想像もつかなかった。

    「はーあ、俺らも早う飲めるようになりたいなぁ」
    「まだ四年弱あるだろ」
    二人はそう交わしてから、じゃあと手を挙げる。居住区につく頃には、星が光り始めていた。
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