ラナーク誕「ラナーク、誕生日なんだろ。おめでとう」
ヌビア学研究所、敷地内。兼、オレたちの通学路。
ふと思い出したように、一緒に下校していたエルベがそう口にした。
「え……あ、あぁ。ありがと。知ってたんやな」
「ん」
エルベは歩きながらにカバンを探ったかと思うと、オレに向かってスナック菓子の包を差し出してきた。
「嫌いじゃなきゃ、コレ、やるよ」
「あ、えーっと、ありがとさんなぁ」
オレはそれを受け取る。
普段と異なるエルベの心の声は、特に聞こえない。断らないで欲しいとか、反対に断って欲しいとか、そういう声は何も聞こえない。
────ただ、いつも通り、薄らと『嫌わないでほしい』と思い続けているだけ。
ならば、貰えるものは素直に貰っておいたほうがいい。人間関係を円滑にするためだ。
1769