こどくの先肌寒い風が商店街を吹き抜ける。
空は晴天だというのに、陽射しの暖かさは感じられず、指先を服のポケットから出すことすら出来ない。
この寒さのせいか、はたまた周囲に並ぶ無機質なシャッターのせいか、もうすぐ13時だというのに、他に人の姿はない。
長い白髪を揺らし篁帝は、商店街の一角、とある喫茶店に訪れた。
『喫茶綺羅』と書かれた看板が店先に置かれているが、窓はなく中の様子は伺い知れない。
中に入るべく、木製の扉に手を伸ばす。先ほどまでポケットで暖まっていた温もりが、一瞬にして奪われるくらい扉の金具は冷えきっていた。
扉を開けると、薄暗い空間に落ち着いたジャズが流れていた。
上質なソファとアンティーク調のテーブルが3組。あとはカウンターの前に5人分の椅子が並ぶ店内。
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