似た者同士の内緒話「私たち、似た者同士、かもしれませんね」
一人で夜空を眺めていたところ、探しに来たティオから出た言葉にアルティナは首を傾げる。
「そう、でしょうか?」
「ええ。何となくですが、そう思います」
そう答えるティオの目は優しくて、まるで妹を見守る姉のようだとアルティナは思う。
「私も、貴女のような素敵な女性になれるでしょうか…」
「なれますよ、貴女らしい、素敵な女性に。…かつて私は、エリィさんに対して同じことを思っていました。でも、言われたんです。貴女は貴女らしく在れば良いのよって。だから私は背伸びして無理をするのは止めました。そんなのは私らしくないから」
「ティオ、さん…」
「だから、アルティナさん。貴女もきっと、大丈夫です。あの人の隣に並んでもつり合うだけの素敵な女性に、きっとなれます」
そう断言すると、ティオはアルティナの帽子を取り、横の髪を持ち上げて何やら弄り始める。
「あの。何をしているのですか…?」
「いえ。髪型だけでも変えてみれば少しは違うかなと思ったのですが、なかなか難しいですね…」
前にエリィさんに教えてもらったのは、とぶつぶつと呟きながら悪戦苦闘していたティオは、しばらくしてからこれでよし、と満足げに呟く。
「ハーフアップ、という髪型にしてみました。よく似合ってますよ、アルティナさん。生憎鏡を持っていないので今はお見せ出来ませんが」
「ええと。…ありがとう、ございます。帰ったら見てみます」
「どういたしまして。…あ」
「あの、どうかしましたか?」
「今流れ星が見えたんです。…あ、また」
「流れ星、ですか。流れ落ちる前に3回願い事が言えたら叶う、でしたか?」
「よくご存知ですね」
「前にミリアムさ、お姉ちゃん、が、教えてくれました。…まあ、本当に叶ったりは、しないと思いますが」
「良いじゃないですか。ダメで元々、叶ったら儲け物、てすよ」
「はあ。そういうものですか…」
「ええ、そういうものです。ほら、アルティナさんも一緒に探しましょう!」
ティオの言葉に再び空を見上げれば、次々と流れ星が降ってくる。
その光景に目を奪われていれば、少し遠くから二人を呼ぶ声がして。
そういえばアルティナさんを探しに来たんでした、と茶目っ気たっぷりに言ったティオと共に教官の元へと歩いていけば、探したぞ、と言われるその言葉の優しさに胸がドキドキする。
そしてふと髪に目を止めたと思ったらよく似合ってるな、と言われ、何だかくすぐったいと思いながら礼を言えば、ポンポンと髪型が崩れないよう優しく頭を撫でられて。
隣でティオが良かったですね、と言うのに頷けば、訝しげな表情の教官に何がだ?と聞かれたけれど、内緒です、とアルティナは答え、一行は支援課のビルへと戻るのだった。