「ああ、そうだ。お前ら全員、明日は休みな」
「…………へ?」
クロスベル警察、特務支援課ビル。
いつものように始業前のミーティングをしていた最中、突如発せられたセルゲイの言葉に呆気に取られたロイドの口をついて出たのは、何とも間抜けな声だった。とはいえ、他のメンバーもポカンとした顔をしていたため、誰からも笑われることはなかったのだが。
「あの、課長。なぜ突然、そんなことを?」
「ここんとこずっと働き詰めだったからな。本部からの特別な計らい、らしいぞ」
「そ、そうですか。でも課長、そういう事はもう少し早く言って頂けると助かるのですが……」
「そうですね。エリィさんの言う通り、早めに言って頂ければ予定も立てやすいのですし」
「ほほう、お前らいらねえのか? 休み」
「いる! いりますっ。くれるってんならありがたく頂きますからっ!」
「なんだ、文句を言うからてっきりいらねえのかと思ったぜ。……話はこれで終わりだ。とっとと仕事にかかれ」
「は、はい……」
困惑した表情で顔を見合わせたロイドたちだったがセルゲイに急かされたため席を立ち、今日も支援要請がたんまりと来ていたため、仕事を始めれば翌日の予定など考える暇もなく。
明日は何をしようかという話題が出たのは、夕食の席での事だった。
「急に休みって言われてもな。う~ん、カジノにでもしけ込むか?」
「真っ昼間からカジノに入り浸るのはどうかと思うぞ、ランディ」
「そうね。警察官としてはあまり良くないわね。……ね、ティオちゃんは何か予定はあるの?」
「ミシュラムに、みっしぃを見に行きたいです」
「ティオすけはぶれねえなあ。……で、そういうお嬢はどうすんだ?」
「お祖父様の顔を見に行こうかしら。最近少し忙しいようだし」
「それで手伝うんだろう? それって、仕事をしてるのとあまり変わらないんじゃ……?」
「あら。そう言うロイドだって、見回りを兼ねて街をふらつくんでしょう?」
「ぐっ」
「ロイドとお嬢はほんと真面目だな。けどもう少し肩の力を抜いても良いんじゃねえか?」
「ランディさんは抜きすぎですけどね」
「ティオすけ~っ」
わいわいと明日は何をしようかという話で盛り上がる一同だったが、キーアはひとり黙って何か考えている。
そして顔を上げ、こんなことを言い出した。
「ねえ、ロイド。明日はみんなで一緒にお出かけ、しない?」
「キーア?」
「みんな一緒にお休みなんて、あんまりないでしょ? だからキーア、みんなと一緒にお出かけしたいっ」
キーアがこんな風にワガママを言うのは珍しい。
もしかすると、ここのところ仕事続きだったため寂しい思いをさせていたのではないか、と思ったロイドは、ぐるりと皆の顔を見渡して、こう言った。
「良いんじゃないか? 明日はみんなでお弁当を作って、ピクニックにでも行こうか」
するとそれまでてんでバラバラに明日の予定を話していた面々も賛成し。
こうして翌日は全員でお弁当を作り、セルゲイも引っ張って(会議があったんだがなあ、とぼやきつつもまあ良いか、とつき合ってくれた)アルモリカ村への道中にある休憩所へと行き。
途中でどこで聞きつけたのか、ちょっと時間が出来たからね、と今は任務でクロスベルにはいないはずのワジと、ここへ行けと司令に言われたのですが……、と戸惑った顔をしたノエルも合流して、釣りをしたり持ってきた本を読んだり、それぞれが好きなことをしながらのんびりと、休みを満喫したのだった。
なおワジ君は時間が出来たのではなく無理やり作ったし、司令にはセルゲイさんから話がいったと思われますw
お粗末さまでした!