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    piiichiu5

    @piiichiu5
    大抵未完成小説をあげます。その後もし完成すれば完成品を支部にあげます。ネタバレに配慮ありません。

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    piiichiu5

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    途中まで書いた幽霊が見えるようになったミッチの話ですが、本誌の現状的に続きが難しそうなので……供養します😭🐉……お前までそっちに行くんじゃねぇ……😭

    幽霊が見えるようになったミッチの話(未完)ある日、幽霊が見えるようになった。

    普通の人間にとっては大事件だろうが、タケミチにとっては

    「おっ?新能力か?」

    といった感じだった。
    タイムリープと未来視に比べれば、まだしも説明が付きそうな能力でさえある。
    幽霊も、血みどろホラーな感じではなく、普通の人間が薄ぼんやり透けている見た目である。
    それでも慣れるまでは幽霊を見かけるたびに絶叫していたタケミチだったが、人間というのはどんな異常にもいずれは慣れるものである。
    一週間もすると、道端にふよふよと半透明のおっさんが浮かんでいても、完全に無視出来る様になっていた。
    幽霊側も、少なくとも今のところは、タケミチに危害を加えたりはしないようだ。
    観察したところ幽霊には2タイプいるようで、ひとつは特定の場所とか物についてるヤツ。
    こういうやつは、その場所に薄ぼんやり立っているだけで、あんまり反応がない。時々、濃くなったり薄くなったりしている気がする。視線が合わないことがほとんどで、タケミチもできるだけ気づかない振りで通り過ぎている。

    もうひとつは、人間に憑いているヤツ。
    こっちは、結構自我がある。
    なんなら、口をパクパク動かして話しかけてくるヤツまでいる。幽霊の声はタケミチには一切聞こえないのだが、場地くんが犬歯を見せながらニカッと笑い、『タケミチ!』と口を動かしていることくらいはわかるのである。

    ーーーそう、場地くんだ。

    幽霊が見えること自体に、大きな問題はない。
    問題は、悲劇的で残酷なことに、その幽霊の中に知り合いが多数いることだった。

    ***

    「ぶふぉっ!!」
    「ウワッ、キタネ!」
    「タケミチ、最近飲み物噴くこと多すぎねぇか?」
    「しかたねぇやつだな。ほら、ハンカチ貸してやるよ」
    「千冬、ハンカチ持ち歩いてんの?遠足かよ」
    「ハンカチくらい持つだろ……」

    千冬が差し出してくれたハンカチをありがたく受け取りながら、タケミチは千冬の背後をじっとりと睨んだ。何もない空間……であるはずだが、タケミチにはしてやったりと八重歯を見せて笑う場地くんが後頭部で腕を組んでふよふよと漂っているのが、きちんと見えている。

    最初は、そりゃ、ちょっとは泣いた。

    場地くん。
    エマちゃん。
    イザナ。
    稀咲。

    タケミチの力不足で、助けることができなかった人々。
    千冬を見守る場地くんを、ドラケンとマイキーを慈しむ目で見やるエマちゃんを、カクちゃんの後ろで静かに漂うイザナを、そしてヒナと会うとき一瞬だけ目にする稀咲を見るたびに、タケミチの涙腺は耐え切れずぽろぽろと涙をこぼした。
    その感傷が続くのも、それほど長くはなかった。
    というのは、幽霊というのは結構ヒマ人なのである。
    生きている人間には誰にも見てもらえないし、気づいてもらえない。
    ただただそこにいるしかできないというのは、実際かなり退屈なのだろう。
    人に憑くタイプの幽霊は、生前大切に思っていた人間の背後を行ったり来たりできるみたいで、場地くんは時々他の東卍創設メンバーの背後にもちらっと現れる。きっと獄中の一虎くんのところにも行っていることだろう。
    それでも、ヒマはヒマらしい。
    タケミチが見られるようになったと気づいてから、場地はタケミチをからかうのをライフワークに決めたようだった。具体的には、何かを飲んでいるときに変顔をしてくる。場地の変顔はヤバい。生きている人間にはできない豪快さがそこにはあった。エマちゃんでさえ、時々タケミチを驚かしてはくすくすと笑うしぐさをする。
    イザナには今のところそれほど会う機会がない。稀咲は、タケミチが視界に入ると舌打ちをして消えてしまう。

    そして、真一郎くん。

    真一郎くんは神出鬼没だ。
    どういうわけなのか、生前繋がりがないはずのタケミチのもとに、真一郎はひょいひょい現れるのである。
    タケミチは自室の壁にかけてある黒龍11代目のトップクが彼との御縁を作っているのではないかと睨んでいるのだが、とにかく、いつでも好きなときにタケミチのもとに現れては好き勝手くつろいでいくのである。

    今週も、彼はマガジンを読みにやってきた。人が読んでいる後ろから覗き込むように読まれるので、正直気が散るからやめてほしい。だが、幽霊はヒマ人らしいのである。マガジンくらい好きに読ませてやるか……という慈悲の心で好きにさせてあげていた。

    そのやさしさが、仇となった。

    増えたのである。
    マガジンの発売日。タケミチの部屋には、真一郎くんの他に場地くんとイザナがいた。どうやったのか知らないが、幽霊の皆様でお誘い合わせになったようなのである。

    「ちょっと、オレの部屋を幽霊の寄り合い所にしないでくださいよ……」

    タケミチが半眼で言うと、真一郎くんは何事かをしゃべりながらニコニコと笑い、タケミチの肩を叩く仕草をした。何を言っているのかは、まったく音にならない。だが、『タケミチ』の口の形は何故だかはっきり読み取れた。
    幽霊同士は会話ができるらしく、場地くんが真一郎くんに深々と頭を下げる。その頭をぐりぐりと撫で、真一郎はもう片方の腕でイザナを抱き寄せた。

    感動的なシーンであった。
    そのすぐ後に、「はやくマガジン読めや」と仕草で催促されなければ、であるが。

    タケミチは諦めて、買ったばかりのマガジンをめくり始めた。
    背後から三対の幽霊の視線を感じて、なんとも居心地が悪い。しかも場地くんは読むスピードが遅めの人らしく、タケミチが自分のペースでページをめくろうとすると「待った」とばかりに透明な手をタケミチの顔の目の前に差し出すのである。

    タケミチは途中でポテチの袋を開けた。漫画を読みながらポテチを食べるのが、タケミチの贅沢であった。ふと視線に気づいて顔を上げると、ポテトを食むタケミチを真一郎がじっとみつめている。

    ちょっとした思い付きだった。

    タケミチは真一郎のほうへポテチを一枚置いて、手を合わせてみた。

    「お供え物です」

    すると、真一郎がにかっと笑い、ポテチを持ち上げたのである。
    いや、よく見ればポテチは置いた場所にそのままあり、半透明のポテトの幽霊みたいなものを真一郎がぱくりと食べたのだった。

    「あっ!」

    タケミチは場地とイザナにもポテチを供えた。三人の幽霊はポテチをうまそうに食べながら、マガジンの続きを催促してくる。
    タケミチは供えた後のポテチをぱりぱりと頬張りながら、お供えものってちゃんと届くんだなぁ……と思った。

    ***

    会話がしたい。
    幽霊諸君と、会話がしたい。
    せっかく見えるのに、話せないというのはかなり不便である。
    マイキーくんを闇落ちから救う会実行委員実行委員長として、タケミチは真剣に考えていた。
    せっかく実行委員に一気に4人もメンバーが増えたのに、その4人と会話できないのでは片手落ちもいいところだ。しかもメンバーは真一郎、イザナ、エマ、場地。佐野家(仮)と幼馴染という、マ闇救会としては強力なメンバーが揃っているのである。

    タケミチは考えた。そして、思いついた。

    ーーー憑依合体すればよいのでは!?

    ……シャーマンキングを借りて読み、タケミチは背後を振り返った。タケミチが小学生高学年くらいのころにアニメがはやっていた漫画である。よみが~え~れ~♪というオープニングテーマをよく覚えている。
    背後では、場地がさっそくタケミチの体に重なるように動き出していた。

    しゅるっ……というなんとも言い難い違和感がした。意外と寒気はなく、生温かい風のような気配だった。見えなければ、気のせいで済ませていたに違いない。
    だが、憑依することはできなかった。
    それから何度かタケミチの体を通ったり、手を繋ぐ仕草をしたり、背後から重なってもらったりしたが、どれもダメだった。
    筆談をしようにも、ペンが持てない。

    「ポルターガイスト現象とかは起こせねーんすか?」

    タケミチの言葉に、真一郎がすっくと立ち上がった。その真剣な表情に、タケミチはごくりと息を呑む。真一郎はがばっとカメハメ派のポーズをとり、音は聞こえないが「か、め、は、め」と口を動かし、そして「はーーー!!!」と力強く撃ち放った。

    そよ……。

    ほんの少しだけ、ティッシュが揺れた。
    エマが腹を抱えて笑っている。最近、エマちゃんまでタケミチの部屋に来るので、タケミチはエロ本の隠し場所を変えた。
    タケミチは、深くため息をついた。

    ✳︎✳︎✳︎

    「あ、ペヤング。場地くんにお供えしよ?」
    「……は?」
    「……あっ。あの、ほら。なんか、この前寺で!和尚さんが!生前好きな食べ物はどこでもお供えするといいって!言ってた!」
    「相棒……、そうだな。あんがとな」

    千冬は根が優しいので、タケミチが急にスピリチュアルなことを言い出しても嫌な顔一つせずに納得してくれた。律儀に手を合わせて、「場地さん、ペヤング、半分こですよ」と目を閉じている。タケミチも手を合わせた。タケミチと千冬からペヤングをお供えされた場地くんは、嬉しそうに半透明のペヤングを啜っている。

    千冬には、幽霊が見えるようになったことは伝えていない。
    だって、言ってどうなる?
    今ここで場地くんが千冬を見守ってるんだよと伝えて、どうなると言うのだろう。
    話せるわけでもない。見えるわけでもない。声は聞こえないから、場地くんからの言葉を伝えることさえできない。
    それに、見えるのは知り合いの幽霊ばかりではない。
    踏切に立つサラリーマン。
    交差点から動かない小さな子ども。
    イヌピーの後ろに時々いる、良く似た綺麗な女の人。

    結局、タケミチはこの新しい能力のことは誰にも教えていなかった。

    「……なあ、千冬。もしもなんだけど。幽霊の姿だけ見えて、声が聞こえないとするじゃん?どうすれば声が聞けると思う?」
    「はあ?……あ〜、墓参りに行くとか?」
    「墓参り?なんで?」
    「いや、なんとなく。ドラマとかで、墓参り行くとちらっと声聞こえたりするシーンねえ?」
    「うーん……まあ難しいことじゃねえし、とにかくやってみるか……」

    ✳︎✳︎✳︎

    佐野家の墓に行くと、ドラケンくんがいた。今日がエマちゃんの月命日だということに、タケミチはそこで初めて気づいた。

    「ドラケンくん……」
    「タケミっちも来てくれたのか。エマ、喜ぶぜ」

    桶を片手に、ドラケンが言う。
    エマちゃんなら、ドラケンくんの背中を抱きしめるようにして、少し哀しげな顔をしている。
    ドラケンくんが忘れないでいてくれるのは嬉しいけど、ドラケンくんがいつまでも悲しいのは哀しい……。
    そんな表情だった。

    タケミチはいても立ってもいられなくなって、ドラケンの手を握った。

    「タケミっち?」
    「エマちゃんは!……エマちゃんは、絶対、ドラケンくんに幸せになってほしいって思ってます!」
    「タケミっち……」

    ぎゅっと強く握った手のひらに、ふわりと華奢な、透明な指が重なる。
    ぽうっと暖かい何かが身体の中を通り過ぎた。

    『そうだよ、ケンちゃん。ずっと大好きだよ。だから、ケンちゃんが幸せになってくれなきゃ、やだよ!』

    ドラケンの瞳が、ゆっくりと大きく見開かれる。

    「エマ……?」

    タケミチは、驚いた顔をしてエマと顔を見合わせていた。

    「タケミっち……そこに、エマがいるのか……?」

    握ったままだった手のひらを、痛いほど強く握られる。
    縋るような目をするドラケンに嘘をつけるはずもなく、タケミチはこくりと頷いた。

    ***

    「え~……では、第12回マイキーくんを闇落ちから救う会を始めます。まず今回は新しいメンバーを紹介します。といっても、みんなご存知ドラケンくんです。はい拍手~」

    幽霊たちは各々、拍手をしたりしなかったりしている。もちろん、ドラケンには見えない。見えているタケミチには、室内はかなりの人口過多だ。エマちゃんはちゃっかりドラケンの隣でこてんと肩に頭を乗せていた。

    「え~……じゃあ、ドラケンくんに改めてメンバーを紹介します。えっと、まずエマちゃん。ドラケンくんのすぐ横にいます。イザナがその辺に浮いてて、場地くんが勝手にオレのベッドに寝っころがってます。そんで、そこに真一郎くん」
    「本当に真一郎君もいんのか……」
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    DONE🎏お誕生日おめでとうございます。
    現パロ鯉月の小説。全年齢。

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