妖精王の妃に選ばれたヴォだけど国からの反感が強くて、表では違う女の人を妃にしたオベ。自分がオベの本妻だと誰にも知られてはいけないから城のメイドとして働くことにしたけど、どう見てもオベと偽物の妃の方が似合っていて、それどころか自分たちは名前を呼ぶことも触れ合うことも許されてなくて自分は本当に選ばれたのかな、って疑問に思うヴォ。
ヴォはオベベの相手に選ばれたことが嬉しかったけど、それを誰も望んでいない、もしかしたらオベベすらも望んでいないんじゃないかって思って過ごしていたら、オベベ不在の時に城が襲われてしまう。
妃が人質に囚われて襲われそうになったところをヴォが助けてあげる。かわりにヴォが襲われるんだけど、オベベと初夜も迎えてないのに処女を散らされてしまう。
でもまぁ、いいか。って本物のお妃様は無事だしって言い聞かせたんだけど、やっぱり選ばれたことが嬉しかったからオベベに処女あげたかったし初夜も迎えたかったなあって誰にも言えないでひとりで泣いたヴォ。
そのうちに賊は捕まって、オベベも帰ってきてお妃様を心配するのを見て、よかったよかったって1人傷も隠して部屋に戻るヴォ。
心配されたかったなあとか羨ましいなとかぐるぐるしちゃって部屋に戻ってもシクシク泣いていたヴォのところに深夜になってオベベがやってくる。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。お妃様怖かったと思うから、ダメだよ近くにいないと」
「君が襲われたって」
「平気だよ」
妃が傷つく方がお前は辛いだろ。
本当は怖かった。今だって怖い。身体も痛い。でもそんなこと言えないからヴォは笑って大丈夫だよと蹴り返した。
「それじゃあ、早く部屋に戻ってあげて。おやすみなさい、妖精王」
話ができただけでも嬉しかった。選ばれた時以来かもしれない。あの時も、こんなに会話をしなかった。
扉を閉じかけた時、オベベが急に足を滑り込ませた。驚いたヴォは思わず後ずさった。
そのヴォをオベベは抱きしめて部屋の中に連れ込んだ。扉が閉まって、部屋が暗くなる。オベベの顔見えない。
「ごめんね、怖かっただろ」
「……へいきだよ」
「震えてる」
「そんなことない」
「痛かっただろ」
「いたく、ない」
やめて、心配しないで、優しい声をかけないで。
自分が傷ついたことは誰も知る必要はないし、オベロンが心配することじゃない。
だって、自分はお妃様じゃない。
こんな部屋に隠れないと抱き合うことすらできないのに。誰も望んでいない妃なのに。
「ごめん、ごめんね、守ってあげられなくて。怖かったね」
「わたし、わた、しは、平気、へいきだよ、」
「顔に傷までできてる。可哀想に」
身を屈んで顔を覗き込んでくるオベベにヴォはついに泣き出してしまう。
「こわかった、いたかった、わたし、しょじょじゃなくなっちゃった……」
「大丈夫だよ、泣かないで」
「わたし、おべろんの、おきさきさまなのに、しょじょじゃなくなっちゃったの…………もう、わたしは、おべろんの、なんでもなくなっちゃった……」
「ヴォーティ、泣かないで。ごめんね」
子供みたいに泣きじゃくるヴォをまた抱きしめてオベはベッドまで運ぶ。
オベロンの胸で泣き続けるヴォの背中をさすりながら眠るオベの背後でドアがノックされる。
ヴォは我に返って声をあげた。夜勤の交代だろうか。
「オベロン様」
ドアの外で呼ばれたのは妖精王だった。
「お妃様がお呼びです。お部屋にお戻りください」
「ぁ」
ヴォは自分の立場を思い出して立ち竦んだ。
そうだった。自分はメイドで、オベロンとは言葉も交わせない身分だった。
ヴォを背後から抱き寄せて、オベロンはしーっと人差し指を立てる。
「わるいね、今立て込んでいるんだ」
「!?」
何言ってるんだお前!ここは私の部屋なんだぞ。
そんなところにいて何かあるっていうならそれはもう不祥事だろ。
「それはどういう意味ですか!?」
ほ、ほら、部屋出て行けよ。
「言葉の通りだよ。僕は今妻のケアで忙しい、その通りに伝えてくれ」
「え?」
扉の外との声とヴォの声が重なる。
「さぁ、おいで。ボクが優しく抱いてあげよう」
「ま、待って、おべろん、さま!あの、わたしは」
わざと大きな声で話すオベロンに再び抱き抱えられてベッドに連れ戻される。
いい感じの初夜は持っていく雰囲気が壊れた。
ヴォを慰めてる時に空気読まずに口を挟んでくるモブにキレるオベが見たかったんじゃ…………