また会うまでの…また会うまでの…
「アーノルド、これを持っていてくれるか?」
愛し合った後、ナタルがベッドの頭元にある棚に置いてあったものを俺に渡しながら言った。
ナタルが離艦する前日の夜。
俺は最後の日をナタルの部屋で過ごしていた。
手の上には小さな皮の巾着袋。
「中、見ていいですか」
俺が聞くとナタルは「ああ」と言った。
紐を解いて逆さにすると手の上にころりと転がり出たのは紫色の小さな石。
「これは?」
「アメジストというそうだ。きれいな色だろ?」
「これを俺に…ですか?」
「そうだ」
そう言うとナタルもハンガーにかけてある自分の上着のポケットから同じ袋を取り出した。
中から出たのは緑の石。
「こっちは翡翠」
ナタルに俺に見せながら言った。
「先日武器の買い付けに行った時、交渉が終わったあとに待ち合わせまで時間があったのでな」
「トノムラ軍曹と食事をした後バザールを見てたら色々な宝石を売ってる店があったんだ」
トノムラ軍曹が石を見ながら、これで指輪を作ったら素敵ですよねと言ったから、それだったらお互いの瞳の色で作ってみるといいんじゃないかと思いついて」
「私たちは何一つお互いに記念になるようなものを持っていない。だから何か持っていたいと思ったんだ。もっと早く渡そうかと思ってたんだが、恥ずかしくて…」
「明日、私が艦を降りたら、君と会えるのは今日が最後かもしれない」
ナタルが伏し目がちに言った。
「でも、私はまた会えると信じたい」
「もしまた2人が会うことができたなら、これで指輪を作って君は紫の水晶を私に、私は緑の翡翠を指輪を作ってお互いに贈り合うのはどうかと思ってな」
「だからこれはまた会えるまで持っていてくれるとうれしい」
ナタルはそう言って寂しそうに笑った。
BAD END
アークエンジェルが連合軍から遁走した事で俺達は敵対する者同士になってしまった。
ドミニオンからアークエンジェルに向けて放たれたローエングリンはフラガ少佐の咄嗟の行動で回避された。
「ローエングリン照準…」
艦長が感情を押し殺したような声で命令すると光の筋が一直線にドミニオンのブリッジに向かっていく。
俺はポケットの中の石をきつく握りしめた。