エプロン何やらいい匂いがしてきて俺は目が覚めた。
朝の6時。
そろそろ起きないといけないな…。
今日はナタルが朝食を作る番だ。
一緒に住み始めた当時は料理が苦手だったナタルも、今ではトーストやハムエッグを焦がさず作れるようになった。
もう少しだけ、と、ベッドの中でまどろむ慌ただしさの前の至福の時間。
「バン!」
「おい、起きろ!もう7時だぞ」
ナタルがドアを蹴破る勢いで入ってきた。
「ふえ?」
どうやら俺は寝てしまっていたらしい。
眠い目をこすり起き上がるとふとナタルか身につけているエプロンに目がいった。
見たことないピンクのエプロン。
買ったのかな?
ふと見ると
「Du bist heute auch süß!」ー今日も可愛いぞー
とドイツ語の刺繍がしてある。
「ナタル、その新しいエプロン、どこで買ったんだ?」
「あぁ、キッチン用品売り場で、安売りをしてたんだ。すぐ汚れるものだから安くていいかなと思って」
「ナタルは今日も可愛いよ」
俺は意味が分からず、きょとんとしているナタルにそう言った。
「あ、そういえば」
ナタルは言うと
「アーノルドの分もあるぞ。お猿さんの刺繍が可愛くて本当は私が欲しいのだが…。アーノルドの方が似合うと思って」
そう言ってもう一枚エプロンを持ってくると、ナタルはそれを広げた。
するとそこには可愛いおさるさんの刺繍と
「mein Popo ist immer rot.」ー私のおしりはいつも赤いー
とやはりドイツ語の刺繍が入っていた。
ナタルが「どうだ、かわいいだろう」
得意げに言った。
「そ、そうだな」
せっかくナタルが買って来てくれたものだ。
俺はどういう反応をしていいのか。
俺はエプロンを持ったまま固まった。