アス観アス 革手袋をはめ直し、アストシスはよし、と小さく独り言ちた。
コートにもスーツにもシワひとつ無い。クロージュの縫製は今日とて恐ろしいまでに完璧で、彼に言い訳も逃走も許さない。
「あっ、アストシスさ~ん、お待たせしました!」
「やあ観主、私も今来たばかりだとも」
アストシスは現在所属している事務所のサイドキックの仕事で地球に寄ることになった。どうせ泊まりになってしまうし、少しだけでも話がしたいな、と観主にメッセージを入れてみたところ、じゃあ帰りに飲みましょう! とありがたくも約束を取り付けることができた。
「忙しいところ、突然すまないね」
「いえいえ、別の事務所の方と交流するのも仕事ですから」
「おや、ではプライベートの時間はいただけないのかな? それは少し残念だ」
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