メロンは甘い オベロン・ヴォーティガーンは自問する。我は何者か。ブリテンの嘆きに応えた竜であり、森羅万象を呑み込む虫であり、呪いを振り撒く嵐の王であり、そして辺境の森を治めた妖精の王である。
最後の一つは余計だった。破壊を司るだけの装置が狂ったのはそれが原因と言えよう。要らぬ感情を取り込んだせいで俺のアイデンティティは塗り替えられた。
そもそも妖精の王がチェンジリングの被害に遭うなど笑い話にも程があるし、おかげでちっぽけな人間に付けいられる隙ができてしまった。その後の顛末は語るまでもない。件の人間──異邦の魔術師は見事妖精王を打ち倒し、竜の腹から抜け出して、黄昏の國の終焉を見届けたのでした。
おしまい。
「って事で俺は役目を果たしたし、ゆっくり隠居するつもりだったんだけど」
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