雪降る駅、人が行き交う中でもその人は輝いていた。
まるで燃えるように輝く太陽のような人。
俺は思った、何百何千の人がいようとも俺はきっとこの人を見つけられると。
「鯉登中尉殿!」と声を掛けるとそれは間違いなく俺の待ち人であった。
「月島!すまなかった……っ」
線路が雪で埋もれて汽車の到着が遅れると駅の車掌が待合室で説明しているのを聞いていたので事情は知っていた。
「この大雪では仕方ありません。貴方こそ、線路の雪かきを手伝いは大変だったでしょう」
まるで見ていたかのような俺の言い分に中尉の目が見開かれる。
先程まで乗車していたはずなのに中尉のコートの袖が濡れていたのことを指摘すると「全くお前には隠し事は出来ないな」と半分嫌味なことを言われた。残り半分は誉め言葉として受け取っておこう。
「大分待たせてしまった」
手袋越しに頬を撫でられ白い息が漏れる。布越しでも感じるこの体温を早く直に感じたい。
「貴方をお待ちしている間、待合室でうたた寝をしていたのであっという間でした」
何か夢を見た気がするのだがはっきりとは思い出せない。
「けれど良い夢でした」
「覚えていないのにか?」
「はい」
貴方が出てきた気がするので。
そう答えると寒さで強張った中尉の表情が雪解けの草木のように優し気で柔かなものへと変わる。中尉はふふと上品に笑うと、駅舎を出たところで待たせていた場所へ乗り込む。車の中は温かなランプの光に包まれており、真っ白な街の中から切り離されたような空間が広がっていた。
「さあ帰ろう月島」
帝都から久方ぶりに帰ってきた貴方が喜びそうな食事を用意した我が家まであと少し。