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    sakatori

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    WT 蔵王
    ただいちゃいちゃしている二人。王子関係のCPでは蔵内が一番彼に振り回されそうだなあというイメージの小話です。
    (初出2021年11月28日、更新日2021年12月30日)

    ##蔵王
    ##WT

     視線を感じながらもきりのいいところまで読み進めて本を閉じる。ベッドに備えつけたサイドテーブルに置いた後でスピンを挟み忘れたということに気づいたがもう遅い。
     目線を真下に落とすと、蔵内の太腿を枕代わりにして王子が横たわっていた。スカイブルートパーズを思わせる目はじっと蔵内を捉えていた。
    「やっとこっちを向いてくれた」
     作戦室にいるときよりやや高い声。爽やかな見た目に反して低く落ち着いた声はいつも揺るぎないが、たまにこうして弾むことがある。ある時間だけ聞くことのできるこの甘い音が好きだった。
    「誰かさんが邪魔してくれたおかげでな」
     未だに腿を占領する王子の頭を撫でる。癖のある直毛に手櫛を通すと、蔵内の指からさらりと髪が逃げていく。繊細な感触を楽しんでいると、王子に手を取られた。
    「ここで読書するなんてらしくない。こうなることを分かっていたんだろう」
     確かにリビングでなく部屋を選び、しかも彼を連れてここにいる時点で今から起こることは想像できたのだが、それは王子が蔵内にべったりしていたからで。
     サイドテーブルからマグカップを手に取り、中に半分ほど残った黒い液体を一気に飲み干す。底に溜まっていた粉っぽい濃い味が舌を刺激する。ただの水のように冷たくそして苦い。部屋に入る前に淹れたから、こんなに冷めるまで王子が大人しくしていたのは意外だ。
     同じ姿勢でいたせいで張った首や肩の筋を伸ばすと身体が揺れた。蔵内につられたのか王子もゆっくりと上半身を起こした。生温かい掌が蔵内の太腿に触れる。ずい、と作り物めいた美貌が眼前に迫る。
     桜色の指先が蔵内の頬を滑る。なめらかな掌に肌を撫でられるのが心地よい。口づけを予感して目を閉じると、鼻先に濡れた舌が触れ、そして固い歯が当たった。
    「……っ、おまえな」
    「油断大敵だよ」
     少し肩を震わせて笑う王子が、噛んだ部分を指先で撫でる。そして今度こそ唇が近づいてきて、柔らかい粘膜が口に触れた。
     部屋の中も外もひっそりと静まりかえった夜。読書していたときはまるで意識しなかったのに、壁掛け時計の秒針すら今はやけに大きく聞こえる。そして自分の心音も。
     薄く目を開くとぼやけた視界に王子の顔がある。もうすっかり見慣れた容姿なのに時折こうして心を乱されるのは、彼に対する感情ゆえだ。
     上背のわりに薄い腰を抱き寄せる。何枚もの布を隔てて二人の身体が触れあう。早まった心拍を彼に悟られないかという考えが浮かんだがすぐに雲散した。今さらそんなことを気にする仲ではないのだ。
    「外に出るときは襟のあるシャツを着ないとね。羽矢さんやカシオには目の毒だし」
    「つけたのはおまえだが」
     首のわざわざ太い血管を辿るようにつけられた痕の数々。王子の整った手指がそれらを優しくなぞっていく。シャツのネック部分に指が入り鎖骨をつままれる。ぞわりと背筋に電撃が走った。
     王子の腰を抱いていた腕がびくつく。感じた衝動のまま身体を動かして彼をベッドへと押し倒した。長躯を受け止めたマットレスは少しだけ弾む。
     いつも微笑みを絶やさない彼の表情は今も変わらない。ベッドの上から蔵内へ向けてしなやかな腕が伸びてきた。誘われるまま蔵内も身体を倒す。
     後頭部を撫でられる。顔を近づけると鼻先がくっついて、頬には温かい吐息の当たった。そのまま唇を軽く重ねる。
     ただそれだけで四肢の先までじわりと熱くなるような気がした。一度顔を離して視線を交える。どちらともなく唇を近づけてまた口づけを交わす。
     両頬を掌で挟まれる。王子の手はひんやりしていた。いや、自分の顔が火照っているのか。
     王子の指が蔵内に触れる。耳輪を撫でていた指が下りてきて耳朶の肉の厚いところを揉み込んでくる。単にくすぐるだけではない動きに喉が鳴った。王子は機嫌のいい猫のように目を細めている。
     仕返しとばかりに蔵内は王子の手首を取って口付けると小さく笑う気配がした。
    「ぼくは痕がつきやすい体質なのか君が教えてくれないかい?」
     鼓膜をゆるく震わせる声にいつも蔵内は抗えなかった。
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