ヒーローとは何者なんだろう。
誰かを助ける人のことなのか。誰かに力を与える人のことなのか。あるいは、人からそう認められればヒーローになれるのだろうか。
ぽきりとシャーペンの芯が折れた。頭の中で言葉がぐるぐると渦巻き、だめだぁと声が漏れたと同時に丹心は握っていたシャーペンを放り出しリビングのテーブルに突っ伏した。
「なんだ、悩み事か?」
からかうような声とともに、頭の向こう側で八起が椅子を引いた。
「兄ちゃん、うるさい」
「もう二時間過ぎたぞ」
「宿題がむずすぎるんだよ」
さっきまで向き合っていたレポート用紙を力なく滑らせる。覗き込む八起の影が視界を覆った。
「ヒーロー社会とメディア……へぇ、随分難しいことをさせるんだな」
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