幼馴染の言うことは、素直に聞くが吉?「——っぽ……独歩ってば!」
「ううん……まだ寝かせてくれ……」
小学校以来の幼馴染である一二三に肩を揺らされ、俺は覚醒しきらない頭で、奴の手から逃れるように背中を丸めた。その腕の中に、馴染みのない温かな感触がある。
長い毛並みに覆われたやわらかなそれは、どうやら生き物らしい。俺の呼吸と近いリズムで、膨らんで、しぼんで、と繰り返している。ちょうど、俺の顎の下辺りから腹の辺りで丸くなっているようだった。少しごわついた長い毛足が首筋や手のひらに触れて、くすぐったいけれど心地よい。
煙草を思わせる少し煙たい匂いのするその毛並みに、俺は擦り寄るように顎を埋めた。毛布に包まれるようなやさしい睡魔が、再び意識を覆い隠していく。
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