ちびあばちゃんと魔王とじいじ「うわあ、すごいですね〜」
空を行く竜の背から遥か下、見渡す限りの青の海面を眺めるアバンは、小さな身体をこれでもかと乗り出して今にもこぼれ落ちそうだった。その後ろ姿を見て、ハドラーは慌ててちびアバンの背負ったカバンを指に引っ掛け、自分の膝に引っ張りあげる。
「おい小僧、じっとできないなら縄でしばるぞ」
「そうしていただければ安全にもっと下まで見えるかもしれませんね! お願いできますか!」
「お前な」予想外の回答にハドラーはうんざりした気分でため息をついた。まだまだ暴れて逃げ出そうとするアバンの腹をギュッと抱き抱えて、そのまま考えに耽る。
泣く子も黙る獄炎の魔王ともあろうものが、なぜ子守りをしているかというと小一時間前にさかのぼる。
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