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    redapple555

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    Webオンリー典包祭ありがとうございました!&おつかれさまでした!
    イベント参加できて幸せでした❤️
    と、いう気持ちを込めた小話。

    #典包
    packetOfFood

    夜の店先で待ちあわせ「……」
    夜の闇の中、万屋街の通りに居並ぶ店達は明かりが灯り、通りに人出はまだまだある。
    そんな中、白い息を吐き出しながら、とある店の前で立つ刀剣男士。
    はあ、とまた白い吐息が冬の空気に溶け込んでいく。
    真冬の夜は、気温も日中よりも遥かに下がり、今晩は氷点下らしい。
    軽装の中にたっぷり重ね着をし、羽織も羽織った状態だが、やはり寒いものは寒いのだろう。
    身を縮こませ、手は袖から出そうとせずに、ただただそこに立っている。
    闇のように溶け込んだ着流しの色、その上に羽織る羽織は濃い墨色の軽装姿。
    「…毎回思うのだが、何故店先で待ちあわせをする」
    そんな刀剣男士に声をかけるのは、こちらも軽装姿の刀剣男士だ。
    「……」
    寒さでついに震え始めている、店先の刀剣男士に手に持っていた襟巻きを巻いてやる。
    「何故、忘れるんだ。毎回寒い思いをするくせに」
    巻かれた襟巻きは、羽織の墨色よりも、少しだけ薄い墨色で、着流しから襟巻きまでが一揃え、とでも言うように装いがしっくりくる。
    「……」
    ふん、と不満げに鼻を鳴らし、先にいた刀剣男士、大典太光世は一言こう言ってのけた。
    「あんた、分かってないな」
    そう言われた、もう一振の刀剣男士、大包平は、はあ、と気の抜けた言葉を返すのみだった。



    待ちあわせ場所に指定した店は、拉麺屋だ。

    【■時、いつもの場所で】

    そう書かれた置き手紙が、自室の卓上に置かれている時のみ訪れる店だ。
    店内に入ると、全身が暖かく柔らかい空気に包まれ、強張った身体から力が抜ける。
    「いらっしゃいませ」
    「食券を先にお求めください」
    店内を慌ただしく動き回っている店員からそう声を掛けられ、食券機の前のメニューを見る。
    「お前、今日はどうするんだ」
    そう声を掛けたかどうかで相手は食券機のボタンを押していた。
    かたん、と音を立て取り出し口から出てくる小さな紙。
    「あんたは?」
    「…」
    あの置き手紙は、何時も晩飯前に置いてある。
    だから、腹には余裕を持たせてはある。
    が、こんな夜更けにハイカロリーな物を食べる気にもならずに、いつもシンプルな[並]のボタンを押すことになる。
    「…」
    ふふん、と今度は満足気に鼻を鳴らした大典太光世は、二振分のチケットをこちらへ来た店員に手渡していた。
    案内されるまま、カウンターの一番奥の二席に腰掛ける。
    「何故、同じ本丸同士なのに、毎回わざわざ先に出ている?」
    「……」
    「連れ立って出た方が、お前もあんなに寒い思いをして待つこともないだろうが」
    「あんた…男の浪漫がわかってないな」
    「は?」
    「おまたせしました」
    タイミングが良いのか悪いのか、割って入ってきた店員がそれぞれの丼ぶりをカウンターへと置いていく。
    「ごゆっくり」
    店員は、にっこりと笑い、そうしてさっさと立ち去っていった。
    「…まずは食べるか」
    自分の拉麺はシンプルな並。
    片や大典太光世の拉麺は、トッピングが全て盛られた全部盛り。
    「……」
    慣れた手付きで、ひょいひょいとこちらの丼ぶりにトッピングを移してくる。
    まただ、
    いつも止める間もなく、そうされてしまう。
    しかもそのチョイスが、自分の好みなのがまた悔しい所だ。
    「…ありがとう」
    今回も不本意ながら礼を述べると、相手は大変満足そうな表情を返した。
    「いただきます」
    「いただきます」
    手を合わせ、とりあえずは、あたたかい内に手を付けることにした。




    粗方食べ終わった頃。
    「で、先程言っていた【男の浪漫】とはなんだ?」
    温かいものを摂取し、少し汗ばんできた。
    体の中を冷やすために、水を飲みながら聞いてみる。
    相手は、つるり、と麺を口に運び終わったタイミングで暫く咀嚼を繰り返していた。
    ごくん、
    「…男の浪漫だろ。
    こうやって夜に忍んで逢い引きするのは」
    「それに、逢い引きには待ちあわせがお約束だ。共に出掛けたらそれが出来ない」
    ふん、とまた不満気に鼻を鳴らす。
    「俺も男だが、その浪漫は理解できんぞ」
    「そもそも、外出届けを近侍達に提出しに行く時点で、全く忍んでないだろうが」
    当然だ。外出の際は必ず届けを出さなければならない。
    今日の近侍に届けを出した時にも、自分と同じ疑問を聞かれ、何と答えれば良いものか言い淀んだばかりだ。
    「……」
    むう、と今度は不貞腐れた顔で、残りの麺を口へと運んでいる。
    こちらはやっと食べ終わり、相手が終わるのを待っている。
    「お前、毎回思うが今度から頼むものを変えたらどうだ?流石に全部乗せは多いだろ」
    今度はむぐむぐと煮玉子を丸々一個口に含み咀嚼しているため、中々話すことが出来ないらしい。
    咀嚼しながらも、更に不貞腐れているのは空気で分かる。
    「…俺は…あんたと分け合うのが好きだ…だからこれでいい」
    成程、それも【男の浪漫】に含まれるらしい。
    なんとも面倒な【男の浪漫】だ。
    全く合理性がない。
    相手はその不貞腐れた表情をしたまま食べ終わる。
    店内は人が多くなってきた。
    飲んだ後のシメ、とやらで訪れる客が増える時間帯になってきたらしい。
    「出るぞ」
    声を掛け、二振分の襟巻きを手に取り席を立った。




    「……」
    店の外に出たが、まだ不貞腐れている。
    「おい、大典太光世」
    呼ぶと不貞腐れたまま、ちらりとこちらへ視線を寄越してきた。
    「ほら、巻いてやるからこちらを向け」
    襟巻きを上げながら声をかけてやると、
    ん、と首を差し出してくる。
    「……」
    少し考えてから襟巻きを巻いてやり、こちらも自分の首に襟巻きを巻いた。
    大典太光世は、ぱちり、ぱちり、と瞬きを繰り返している。
    「やはりお前はこの色も似合うな」
    ふ、と笑いながら相手に巻いた襟巻きの形を微調整する。
    その首に巻かれたのは臙脂色の、自分用
    の襟巻き。
    対する自分に巻いたのは、大典太光世の薄墨色の襟巻き。
    「折角二振でこうして出掛けているのに、不貞腐れていたままでは勿体ないと思わないのか?
    …なあ、光世?」
    最後の一言は囁くように告げる。
    恋仲になったからと言って、急に態度を変えられない不器用な自分が出来る精一杯の恋仲らしさが、二振のみの時にその名を呼ぶことだった。
    一気に顔に熱が集まった、かと言うように真っ赤に色付いた大典太光世の頬に手を添えてやる。
    「…大包平の匂い…男の浪漫…もう…大包平が浪漫そのものだった??」
    ぶつぶつと取り留めのない独り言を呟いていたが、添えられたこちらの手に、我に返ったらしい。
    その手を自分の手で重ねそのまま握られる。
    「…寒いから、こうして帰りたい…いいだろうか?」
    「恋仲だからな、…まあいいだろう」
    その答えは大変お気に召したようで、今度は緩んだ表情のままの大典太光世と、本丸への帰り道を歩き出した。



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