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    nekonyanya82

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    nekonyanya82

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    ここ最近のSSまとめ!

    お互い忙しい身、それでも何とか正月気分を味わおうと立ち寄ったコンビニで見つけたのは、カップに入ったお汁粉だった。
    薄めに切られた餅が入ったそれを手に取って、大和は思案顔だ。甘いものは苦手ではないが、そこまで求めているわけでもない。ただ、このとろりとした温かさや甘さは、仕事に疲れた身体や頭を癒してくれるに違いない。
    でもなぁ、一人でこの量は多いな・・・と悩んでいると、肩越しに手元を覗き込んでくる男がひとり。
    「お、汁粉なんてあるんだな」
    耳元で話しかけられるこそばゆさを堪えつつも男の方に目をやれば、その男もいまいち思案顔だ。たしかに、この男も甘いものが得意ではない。でもあったまるだろうな、なんてところだろう。
    大和は、妙案とばかりに背後の男をポンポンと叩く。
    「半分こ」
    「それだ」
    背後の男、楽も妙案に目を見開いていた。

    箸をふたつもらい、温めてもらった汁粉のプラ容器は思ったより熱い。移動用の車の中で蓋を開ければ、湯気と共にほっとするような甘い匂いが立ち上った。
    「和むわぁ・・・」
    両手で包むように容器を持って、ほわりと目元を綻ばせる大和。その中を覗き込んだ楽はあるものを見つけると、にやりと大和に笑いかけた。
    「お前みたいなのがいるぞ」
    「は?何が?」
    楽が指差す先の容器の中を見ても、餡子と餅が見えるばかり。餅にも餡子にも共通点を感じない大和はますます首を傾げる。
    「どゆこと?」
    「ほらこれ。・・・やきもち」
    その言葉に、大和はぶわっと頬が熱くなるのを感じた。餡子に半ば沈みかけている餅は綺麗に焼き目が入っている。だから、焼き餅。だが楽が言っているのはそのことではない。
    「お前にそっくりだな?」
    狼狽える大和を愉快そうに眺める楽。大和は負けじと、けらけらと笑う餅のように白い頬を跡が残らない程度につねる。
    「いだだ!」
    「ぷうぷうよく膨れるお前さんの方が、よっぽど餅っぽいんじゃなーい?」
    「誰が膨れてんだよ!」
    「よーく膨れてるじゃん、拗ねちゃってさ」
    「拗ねてねぇ!」
    「はいはい、今はね」

    運転席で、二人に差し入れてもらったコーヒーを啜りながら、運転手である男は考える。
    ヤキモチやきの大和も、拗ねてふくれる楽もいいな、と。
    そしてもう一つ。
    早く食べないと、お汁粉冷めちゃいますよ。
    そう思ったのだが、自分が口を出す場面ではなかろうと、空気になることに徹するのだった。


    ーーーーーーー


    お湯も沸いたし、コーヒーでも淹れるかと立ち上がった時、テーブルの上に置かれたスマートフォンが軽快な音楽を流し始めた。楽が見るとそれは大和のスマートフォンで、液晶には彼のメンバーである三月の名前が表示されている。どうやら昨日飲んだ際にここに置きっぱなしにしたようだ。彼らの代表曲を高らかに歌いながら震えるスマートフォンを手に取ると、楽は持ち主がいるであろう部屋に向かった。
    ドアを開けると、昼の光は遮光カーテンに遮られて部屋の中は薄暗い。向かった先は寝室で、ベッドの上の布団はこんもりと膨れている。爆音で流れる音楽に驚いたのか、布団の塊がもそりと動いた。
    「二階堂、電話だぞ」
    楽がスマートフォンを持って近寄ると、布団の塊はさらにもそもそと動く。大きな音を避ける様に丸くなるそれをポンポンと叩く。
    「二階堂、ほら、和泉兄から」
    「んんぅー・・・っ」
    楽がそういってスマートフォンを差し出しても、布団の中からはぐずるような声がするだけで中にいる大和はいっこうに顔を出さない。布団を捲ると、低く唸られた。めげずにがばりと布団をめくると、寒さに身を縮めた大和が現れた。相変わらず不満げに唸っては、枕をかぶって抵抗している。
    「電話、いいのか?」
    「ゔー・・・っ」
    「はぁ・・・しょうがねぇな」
    楽は大和が取り返そうと引っ張りまくる布団を離すと、画面をタップしてスマートフォンを耳に当てた。
    『あっ!やっと出たな!!どんだけ寝てんだおっさ・・・』
    「悪い、待たせたな」
    『あれっ?!八乙女?!』
    案の定、予想と違う声で返事が返ってきたことに三月は驚いていた。楽は状況を説明してやろうと話を続ける。
    「二階堂、まだ寝てるんだ。どうやっても起きないから、代わりに出させてもらったぞ」
    『あー・・・そうなんだ。・・・ってか、八乙女、今自分で言ってる意味、分かってるか?』
    「ん?」
    何か言いたげな三月の声に首を傾げる楽。何かおかしなことでも言っただろうか。大和はまだ眠っているから自分が代わりに電話に出た、ただそれだけなのだが、と思案していると、楽の困惑を察知したのか三月は苦笑いだった。
    『まぁいーよ。じゃあ八乙女、大和さんのこともうしばらく頼むな。急ぎの用じゃないから、ラビチャ入れとくし』
    「そうか、わかった。伝えておく」
    三月は最後まで何か言いたそうにしていたが、用は住んだようなので電話を切った。大和が丸まっているベッドに腰掛けると、がばりと背中に重みが掛かってきた。
    「・・・でんわ、だれ」
    楽を後ろから抱きしめる様にして、大和は掠れた声で聞いた。巻きついてくる何も纏わない腕を撫でて楽が答える。
    「和泉兄だよ。出なくていいのかって聞いたぞ」
    「うぅー・・・」
    楽の背中にべたりと貼りついた大和はまた低く唸る。そして何を思ったか、シャツの襟首から覗く楽の白い首にがぶりと歯を立てた。痛い、というほどでもないが僅かに歯形が残るくらいの力で、あぐ、あぐ、と何度も噛みついてくる大和。
    「なんだよ」
    楽が寝癖のついた緑の髪を撫でると、薄らとついた歯形をちるちると舐められた。
    「・・・でんわ、やだ」
    掠れた声でそういうと、大和はぐいぐいと楽の背中を掴んで引っ張った。引っ張りながらベッドに倒れ込むと、楽も道連れにする。何だ何だと向かい合う様に楽が寝返りをうてば、すかさず唇を舐められた。何度も舐めてくる舌にちゅるりと舌先を絡めてやると、大和が捕らえるように脚を巻き付けてくる。距離を詰めるのを手伝って腰を引き寄せると、ちゅぷりと濡れた唇で吸い付かれた。
    腰も腹も胸もぴたりとくっつけて、腕や脚まで巻き付けてくる大和に、内心驚きを隠せない楽。朝からこんなに可愛く熱烈に求められてバチが当たりはしないかと、つい口元がにやけてしまう。
    ちゅぷ、ぴちゅ、と粘膜の触れ合う音だけが薄暗い寝室に響く。時折混じるのは、熱い吐息に甘い声。食べられてしまうのではないかと思うくらいに何度も唇を交わらせて、大和は不機嫌そうな声で呟いた。
    「・・・こっから、でたら、やだからな・・・」
    可愛らしいおねだりに、楽は心臓が熱くなるのを感じた。抱きかかえた腰やらその下の柔らかいところやらをさわさわと撫でて、少し腫れたような唇に再びかぶりつく。
    大和は、自分の言っていることの意味が分かっているのだろうか?
    先程三月に尋ねられたことを、そのまま大和にも尋ねてやりたい気分だった。


    ーーーーーーー


    シンクに水が流れ落ちる音の隙間から、耳慣れた曲が聞こえた。
    テーブルを拭いていた楽が振り返ると、シンクで洗い物をしている大和の背中が目に入る。せっせと皿についた泡を洗い流す音に紛れて、わずかに大和の声。よくよく耳を澄ましてみると、音楽のようだ。
    「二階堂、こっち片付け終わったぞ」
    楽は台拭きを手に大和に声を掛けたが、水の音にかき消されてしまったのか、返事はない。
    聞こえるところまで近寄ろう、と歩いて行けば、大和の声、鼻歌を歌っているそれがはっきり聞こえるようになった。
    ふんふんと機嫌良く歌われているのは、大和や楽の尊敬すべき先輩であるRe:valeの曲だった。ギターで奏でられる爽快なメロディが、ゆったりとテンポを落とし、鼻から抜ける甘やかな声で響いている。
    いい曲だな、と楽も思う。美しくて、激しくて、格好いい。尊敬に値する、大切な人達の曲。
    でもなぁ、と、楽は唇を小さく尖らせた。そして何も知らずにふんふんと歌い続ける大和の肩に、どん、と強めに肩をぶつけた。いきなりぶつかられた大和は驚いたのか、持っていたスポンジをぽいっと投げ出してしまう。皿を持っていないのは確認済みなので、泡まみれのスポンジが落ちる軽い音だけが響いた。
    「うおっ?!なんだよ、危ねぇな」
    大和はスポンジを拾うと、楽の方を見た。下の兄弟を叱るような表情をしていたが、楽のむっすりとした顔を見た途端、わずかにその表情が緩む。
    楽はごんごんと大和の肩に自分の肩をぶつけると、拗ねた声を隠しもせずに言った。
    「・・・・・・なぁ、俺たちの歌は」
    きょと、と目を見開く大和。何度か目を瞬いた後、によりと口元を緩めると、ごつん、と楽の肩にぶつかり返した。
    「なーに拗ねてんだよ」
    「拗ねてねぇよ」
    「うそつき。タコさんみたいになってんぞ」
    「誰がタコだよ」
    拗ねている、と指摘された楽はますます唇を尖らせる。抱かれたい男ランカーに似つかわしくない子供っぽい表情に、大和はいっそう笑みを深めた。
    「なーぁ、何歌って欲しいんだよ」
    ぶつかってきた肩に頭を乗せてそう尋ねると、楽の肩がぴくんと跳ねる。
    「いいのか?!」
    「拗ねてる八乙女くんのために、ご機嫌取りしてあげる」
    「・・・・・・じゃあいい」
    「あーウソウソ!ごめんて。揶揄いすぎた」
    ぷいんと向こうを向いてしまう楽に、慌てる大和。楽の背中をきゅっと掴むと、白い頬にぴとりと唇を当てた。低く唸る楽に、大和は緩めた声で囁いた。
    「・・・ごめんて。な、ゆるして?」
    「・・・お前、こういう時だけ可愛こぶるんだもんな・・・」
    降参、という様に首を振る楽。大和の脇腹をつねると、
    「・・・今夜は、とことんリクエストに応えてもらうからな」
    と、唇を尖らせていうのだった。


    ーーーーーーー


    懐いた、という言葉が端的に頭に浮かんで、楽は思わず口元を緩めた。満足げなにやけ顔はマネージャーが見つければ咎められそうだが、幸いにも今は目ざとい人間は誰もいない。
    楽は、ソファに寝そべった自分の胸に乗った緑の髪を撫でると、掲げて読んでいた台本のページをめくった。
    しかし正直なところ、申し訳ないが台本の中身はほとんど頭に入ってこなかった。世間も寝静まる深夜、大した物音もしない部屋だが、全くと言っていいほど集中できない。
    その原因は、楽を下敷きにして眠る恋人、大和のせいだった。珍しく合鍵を使って部屋にやってきた大和は世間話もそこそこに、むにゃむにゃ不明瞭な声を出しながら楽の体にもそもそと乗り上げると、すとんと眠ってしまったのだ。それからと言うものの、数十分、楽がページをめくろうと、身じろぎしようと、スマホのカメラを構えようとも、大和は目を覚ましていない。
    ふす、ふす、と小さな寝息と、存外長い睫毛に、薄く開いた唇。楽の脇腹にゆるりと下された手は、楽のシャツをきゅっと握っている。
    もし猫を飼っていて、その猫が自分の上で昼寝を始めたら、可愛くて堪らなくなるだろう。今まさに自分はその心地であると、楽はふふんと笑った。あの大和が、自分の上で無防備に眠っている。それが嬉しくて仕方がない。
    普段はなかなか撫でさせてもらえない艶やかな髪を、何度も何度も撫でる。本当ならそれ以外のところにも触れたいが、起こしてしまいそうで。
    「んぅー・・・」
    大和が小さくうめいて、楽はぴたりと手を止めた。起きたか、と思ったが、大和は口をむにゅむにゅと動かして身じろぎしただけだった。んー、と小さく声を上げながら、楽に擦り寄ってくる。肌寒いのか、触れ合う面積を増やすようにしてくる大和を、いっそのこと抱きしめてやろうかと思ったぐらいだ。
    こんな風に甘えられているのは自分だけなんだろうな、と楽は誇らしい気持ちになる。以前は、大和に甘えたようにわがままを言われる歳の近いメンバー達を羨ましく思ったりもしたものだが、最近になって、大和は、楽だけにしか見せない甘え方をもっていることがわかった。その一つが、今夜のような触れ方だった。
    「・・・・・・ぅ、ん・・・?」
    そんなことを思っていると、大和がうっすらと目を開けた。ぱち、ぱち、と数回ゆっくり瞬きをすると、あたりを見回して、楽を見つけた。
    「はよ。起こしちまったか?」
    「がく・・・?」
    にこ、と楽が笑みを向けると、ぽやんとした口調で名前を呼ぶ大和。まだ寝ぼけているのか少し間を開けたあと、ふにゃ、と目を綻ばせた。
    「・・・おはよ」
    眠気にとろけた目のまま、大和はずりずりと楽の身体の上をずり上がってくると、ちゅ、と楽の唇にキスを落とした。ちゅ、ちゅう、ちゅ、と何度も小さく吸い付いてくる大和の頭を撫でて、楽も同じように吸い付き返してやる。合間にぺろりと唇を舐めてやると、大和の腰がふるりと震えた。
    ちゅ、と少しだけ強く吸い付いて離れると、大和は満足げに、はふ、と息をついた。そしてもそもそと体勢を変えると、また楽を枕にしてうとうとと目を閉じようとしている。
    「・・・もうちょっと寝るか?」
    楽がそっと聞くと、今にも眠気に攫われそうな大和が、こく、と小さく頷く。
    「・・・ねる・・・」
    「ん。そうか。おやすみな」
    すとんと眠りに落ちた大和の前髪をかき上げて、額に唇を落とす。今度は遠慮なくぎゅっと抱きしめて、少しでも多くの体温が大和に移るようにする。
    甘え上手になってきた猫が風邪をひかないように、しっかりあたためてやらなきゃな、と楽は嬉しい使命感を感じたのだった。
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