月の大きい夜だった。忍者にとっては、明るすぎる夜は天敵。しかし忍者の学校で過ごしている生徒たちには、特に関係がなかった。もちろん忍務の時には別だが、特に今日のように、明日がお休みで、夜更かししたって大丈夫な夜は。
上級生になると夜な夜などこかへ出かけていく…なんて噂もあるが、夜な夜な出かけていく上級生は殆どが夜間演習である。たまに、先生の目を盗んで夜の街に繰り出す色男もいるにはいるが、五年ろ組、不破雷蔵と鉢屋三郎は夜な夜な出かけるタイプではなかった。2人は、自室で各々寛いでいた。
「雷蔵、その本いつまで読んでるんだ?俺はもう終わったけど」
三郎は変装道具の手入れをしていた。ひと段落ついたらしい彼は、雷蔵を急かした。
1992