路地裏に至る病〜龍の眼———スッ、サスッ
——スースッ、スッ
「如何かしましたか先輩、手が止まっていますが」
とある静かな日暮れ前、前夜に大なり小なりドンパチを繰り広げた後の独特な空気が漂っているポートマフィアにて。上がって来た報告書を手にした儘の芥川は部下の樋口一葉からそう指摘される。
「お渡しした報告書に何か不手際でも?難しい顔をされて何やら考え込んでいる様に見えましたが……」
「む?」
「口元に当てている手の指で、こう、スッスッとなぞられていました」
「!」
樋口の仕草を見て、芥川は自分の無意識の行動に目を軽く見張った。思い当たる節があるからだ。
「そうか……否、唯此の報告書を見て僕なら如何動くか、と想定していた迄だ。特に他意は無い故、貴様は貴様の仕事をしろ樋口」
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