Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    Chigiri_idv

    @Chigiri_idv

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 7

    Chigiri_idv

    ☆quiet follow

    140文字仕分け中

    140文字SSトラチャン詰め合わせセット『愛してるも役不足』

     報われたい、と云う訳ではない。
     身体と魂全てを捧げ、ひいては自らの生すら削る様な愛を献上していると云うのに。
     
     ―― ……私は、貴方様の御傍にお仕えしたいだけです

    「もっと見返りを強請って良いのだぞ」
    「……はい?」
     愛玩動物程度の扱いで満足している青年の頭を撫で、王は諭す様に呟いた。



    『出来るなら苦労はしない』

    「成程」
     ゴロゴロとご機嫌に喉を鳴らす仔虎を膝に載せ、王は小夜啼鳥の手紙に目を通していた。
     要約するならば、『衣装バグです』。
     自我も記憶も失い、愛しい王へと甘えてじゃれつく姿は大変愛らしい、が。
    「我は平素よりこの様子でも一向に構わぬのだがな?」
     彼にそれが出来るなら、だろう。



    『つくづく敵わない』

     きいろいふーどに、ふたつのおみみ。
    「……またバグという奴か?」
     じとりと無数の眼に睨めつけられ、膝に載せられた仔虎はしょぽりと耳を下げた。
    「いえその……今回は」
    「む」
     ぺたりと尾が垂れる。
    「……愛でて頂きたく、私が、自分で」
    「……」
     それ以上の言葉を遮る様に、王は天を見上げた。
     全く、つくづく敵わない。



    『素直じゃないとこも可愛くてよろしい。』

    「さて、此度はどちらだ?」
     改めて尋ねると、膝上の尻尾が居心地悪そうにもぞもぞと動いた。
     ……つまりはそういう事だ。
     一度バグ故に獣に扮した際に甘やかしたのが癖になった様で。
     それから時折わざとバグを装って虎の衣を纏い、我が元を訪れる様になった。
    (素直に申せば、何時でも構ってやるのだが)



    『反則だらけ』

     黄色いフードにしましま模様、まんまるお耳。
     ぴんぴんと左右にはねる元気なおヒゲ。
    「……また面妖な」
     青年を膝上に乗せ、王はジトと目を細めた。
     まさかの虎衣装おかわり。
     全く荘園の主は何を考え、
    「がぉ!」
     むに、と。
     王の胸に肉球を押しつけ、仔虎は吼えた。
     ……全く、反則だらけよ。



    『この、リア充が』

     鳥の羽の玩具で遊ばせ、
     黄金の毛並みを撫でつけ、
     おやつにはミルクとビスケット、
     満腹になったら膝上に載せてやり、
     日向で鳶色の髪を優しく梳いてやって、
     やがてスヤスヤと立て始める寝息に耳を傾け、
     そっと目隠しを外して愛らしい寝顔を覗き込む。
    「……充実しておるナァ」
     今日も一日。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works