夏を編む『オレ実は、吸血鬼なんだよね』
久々に見る、癖のある筆跡で書かれた手紙は、そんな尖りまくった言葉から始まっていた。
場地さんは今も生きていて、実は吸血鬼らしい。
ある日突然届いた俺宛の手紙には、そんなにわかには信じがたい内容が、白い便箋三枚に渡って書き綴られていた。
場地さんは血ハロで死んでなかったこと、その理由が吸血鬼だからということ、訳があってすぐには連絡が取れなかったこと、そして場地さんは現在、場地さんの母方の祖母の田舎で暮らしていること。
淡々と、落ち着いた文字が並ぶ手紙に冗談めいた雰囲気はない。
近況を綴る文章の最後には、今度の週末になったら会いに来て欲しいと一言だけ。
会いたい。
便箋三枚の中にうまく紛れ込ませた場地さんの本心を見つけた気がした。
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