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    ナチコ

    主にとらふゆ
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    ナチコ

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    リクエストでいただいたお題です
    とらふゆと場地君の小咄

    ##とらふゆ

    お題『喧嘩したとらふゆの虎とばじくん』「あーもう本当、しょうがねぇなあテメーは。てか、テメーらは」
     大仰なくらいの溜息。一虎は、場地の前でしゅんと項垂れる。
    「そんな冷たいこと言わなくてもいいだろ」
    「何回目だよ、千冬とケンカしたっつって家飛び出してくんの。で、オレんとこ転がり込むの」
    「……他に行くトコねーし」
    「マジでしょうがねぇなあ」
     呆れきった場地の前に、一虎は項垂れつつ、途中のコンビニで買ってきたカップ焼きそばをそっと置く。
     場地が冷たい眼差しでそれを見下ろした――気がする。
    「バカのひとつ覚え」
    「だってオマエずっとこれ好きじゃん」
    「まあいいけどさ。そんな顔すんなっての、もらってやっから。で、今日は何して千冬怒らせたんだよ?」
    「何でオレが怒らせたって前提なんだよ。……まあ、そうなんだけど」
     そもそも一虎が連日寝坊した。出勤にはギリギリ間に合ったが開店準備を手伝い切れず、でも千冬はそれを怒らなかった。
    「怒らないってことは、諦めてるってことじゃん?」
    「何でそうなんだよ。怒られなかったならラッキーじゃん、アイツ本気でキレるとコエーって言ってただろ、一虎」
    「成長とか改善の余地もないから怒らないんだよ。絶対オレ、クビになるんだ……」
    「いやなんねぇだろ。あいつがそんな中途半端な気持ちでオマエのこと雇ったワケがねーし」
    「でも、千冬もそう言ってキレるし……」
    「いや結局怒られてんじゃねぇか」
    「オレ、千冬と千冬の店のお荷物じゃん。いなくなった方がいいのかもしれないって思っちゃうだろ」
    「それ千冬に言ったんか」
    「言った」
    「で、キレられたんか」
     場地の冷たい目を見ていられず、一虎は立ち上る煙を避けるフリで、相手から顔を背けた。
    「ってか、そもそもオマエら、一緒に暮らすかって話になってんだろ? そんでクビにするとかありえねぇよ」
    「……一緒になんか暮らせねぇよ。あんま近くにいたら、絶対千冬、オレのこと嫌になるに決まってるし」
    「あーもう、めんどくせぇなあ。そんで悩みすぎてなかなか寝つけなくて寝坊するとか、バカじゃねぇ?」
     心底面倒そうに場地が言って、一虎の顔にまた煙が掛かる。場地は繰り返し溜息をついているようだった。
    「一虎はさぁ、どうしたいわけ? ってか、どうなりたいんだよ、千冬と」
     問われて、一虎は場地の前にポツンと置かれたままのカップ焼きそばに目を落とす。
    「……わかんねぇ」
    「いやちゃんと考えろよ」
    「場地が戻ってきてくれればいいんだよ」
    「あぁ?」
    「オマエいてくれたら、千冬と無駄にケンカしなくてすむし……」
    「甘えんな、千冬とテメェのことだろ」
     突き放すような場地の姿に、一虎は情けなく眉尻を下げた。
    「場地がいてくれたら、絶対、全部うまくいくのに」
    「……」
     場地は呆れきってしまったのか、もう、一虎にその声は聞こえなくなってしまった。


    「ああ、もう。やっぱここだったんですね」
     安堵したような声を聞いても、一虎は項垂れた頭を上げられなかった。見覚えのある革靴が視界に入る。
    「またそんな、座り込んで。場地さんも困ってるでしょ」
    「……何しに来たんだよ」
    「何って、場地さんに会いに決まってんだろうが。――場地さん、ペヤング持ってきましたよ。どうぞ」
     そう言って、千冬が一虎の置いた焼きそばの上に、同じものをもうひとつ重ねる。
    「被ってんじゃねえか、オレのと」
    「アンタが被せてんだよ、ペヤングはオレと場地さんの絆なんだから」
    「……」
     黙り込む一虎に、千冬が大きな溜息をついた。
    「もうオレ、大体一虎君の考えてることなんかわかっちゃうんですけど。オレは場地さんとアンタを比べたりしないし、どっちが大事とか考えたりもしませんからね。アンタはアンタで場地さんは場地さん。で、オレはあんたと一緒に働きたいし、一緒に暮らしたいと思ってんの。それだけじゃダメなの?」
    「……千冬が何でそんなこと言ってくれんのかわかんねぇ」
    「わかんないなら別に考えなくていいよ、今は。一緒にいたらそのうち絶対わかるから」
     そう言って、千冬が手にしていた線香の束から一本取り出すとライターで火をつけ、手で風を送って火を消した。
     丁寧に、恭しく線香立てにそれを立てる千冬の仕種を、一虎は地面に座ったままじっとみつめる。
    「だからほら、帰りますよ」
    「……千冬も呆れてんだろ」
    「場地さんも呆れてたんですか?」
     そう言って、千冬がそっと冷たい墓石に指で触れた。
    「まあ呆れてたとして、アンタのこと嫌いにはなりませんよ。場地さんも、オレも」
    「……何で?」
    「んー……口で説明してわかってもらえる気もしないんで、わかるまでオレんとこいたらいいんじゃないですかね」
     千冬は場地に触れていた手で、今度は一虎の手を取った。
     その手を振り解くことができない自分を、場地の前で、一虎はどうしても悔やんでしまう。
     千冬が一虎の手を握る指に力を籠めた。
    「……ま、場地さんとこいてくれるなら、見つけやすくていっか」
     独り言のような千冬の呟きを聞きながら、一虎は最後に場地を振り返った。
     何も言ってくれるはずもないし何が見えるわけでもないのに、場地はやっぱり自分を見て、「しょうがねぇなあ」と溜息をつきながら、笑ってくれている気がする。
     いつだって許されたがっている自分に、一虎は泣きたかった。
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