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    Lemonn

    Lemonnです!
    色んな絵やイラストや落書きを描いてます!
    最近は多分主にシンレナです。
    偶に別ジャンルもあるのかもしれません。
    宜しければツイッターの方もどうぞ!
    https://twitter.com/Fruits_L_Claire

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    Lemonn

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    かっこいいシンとレーナはいません。
    アホネタです。
    本来ならばこれは永遠に封印するつもりでした。けど出したものは仕方ない。
    なので全ての批評も甘んじで受け入れます。
    感想や批評などもマシュマロへ投げてくださると助かります。

    好きと言って…?「うふふっ。」
    と機嫌がいかにも良さそうな銀髪少女は長い髪をふわりとなびかせて廊下にスキップしながら歩いてるのを多くの人も見かけたと言う。
    手に持ったのはスイーツ類の箱であり、この機嫌良さげな女王様は恐らく彼女の王子様のところへ向かっているのだろうと皆思い、笑顔でお見送りすることにした。


    訓練が一通り終わって、ふっ、と一息付いたところ背中から肩を叩かれた。
    「ほら、女王様が待ってるぞ。」
    ライデンがシンの肩を軽く叩いてレーナが外にいるぞという視線を送った。
    「わかった。」
    と軽くシンも頷いて、彼女のいるところへ向かった。
    嬉しいくせに。そんなシンを見て思わずやれやれとライデンは密かに思った。


    「シン... もう終わりました…」
    満面な笑みで彼女は名前を呼んでくれるのが何故かとても癒やされる感じがするのは彼女だからだろうか。と自分の中でどうでもいいかもしれないことを思いながら。
    「ああ。レーナはどうしてここに」
    「えへへ。今日はですね…差し入れを持ってきたんです…」
    よくよく見たら彼女は何かを後ろに隠した様子で得意げに笑った。
    「これです アップルは甘いのでシンにはダメだと思って…レモンパイにしました…」
    差し出した箱を上から見ると確かに美味しそうなレモンパイが丸一つ入ってる。
    これは…丸いのか…
    と疑ってしまう形だが。多分丸だろう。
    「食べても?」
    「え? あっ、はい もちろんです…」
    慌てて箱からパイを取り出してとっくに切り分けた一切れをシンに差し出す。
    何も考えずにがぶっと大きく一口食べる。
    「ウッ。」
    この味は一体…。
    奇妙な味で美味しいかと言えばそうでもなく、不味いと言えばまたそうではなく。
    砂糖の味はちゃんとあって、それ以上に舌の上に広がるこの酸味と苦味は何なんだ。
    「ど、どうですか…。その、味は…」
    何故かもじもじと両手を弄るレーナ。
    「はっきり言って。買った方がいいと思う。」
    「…ふえ?」
    「どうせリッタが作ったのだろう。」
    「美味しく、ないんですか…」
    「まあ。美味しくないわけでもないが。やっぱり買った方がいいと思う。」
    「…。」
    「ま、レーナ…」
    何故か彼女は顔を風船みたいに膨らんで泣きそうな顔で地面を見てる。
    「シンの…ばか…っ」
    思っきりパイを押し付けられたと思ったら彼女は振り向くとまた思いっきり走り出した。

    はあ。と後ろから溜息をつくライデン。
    「やっちまったなあ。」
    「何が…」
    後ろにずっと見守ってるセオとライデン、それとアンジュとクレナ。それぞれ目線を交わし、呆れたような顔になってる。
    「だってシンくん…あれ、ハートかしら?どう見ても…」
    「そうね…わたしでもわかるくらいなんだから。」
    「手作りなんじゃないのあれ。」
    「それにあんな嬉しそうな顔して…謝った方がいいと思うぞ。」
    それぞれが言いたいこと言ってまるで何かの会議が終わったかように散って行った。

    手作りの…レモンパイ。
    ハート型の…。
    まさか己の鈍感さを呪う日がくるとは。こうもわかりやすいのになぜ気づかない。
    無言なままシンま走り出して行った。

    さっきのふんわり柔らかい雰囲気と正反対で今回はむっと顔を膨らんで近寄るなあと言わんばかりな雰囲気を出してレーナは廊下を歩く。

    それは。そうなんですけれども。
    買った方がいいなんて。あんまりじゃないですか。
    せっかく…。頑張って作ったのに…。

    彼の一言は脳裏に焼き付いたまま離せなくて一人で考えれば考えるほど怒りが上がってしまう。
    「むっ。」
    と可愛らしい顔は今までない程に膨らんだ。

    「レーナ。」
    脳裏に焼き付いた腹ただしい声の持ち主が後ろから声を掛けられて、顔だけ少し後ろを向く。
    「なんですか。」
    「いや、さっきのパイだけど。」
    何かと思えば。
    「ああ、あれですね。全然捨ててくださって構いませんよ。」
    「いや、」
    「それとも…今から買いに行くつもりでしょうか。」
    「それならおすすめなお店がありますけど。教えましょうか まあわたしはこれから予定がありますので、一緒には行けませんけど。」
    「そうじゃなくて。さっきのは、」
    「いいえ。結構です。これ以上言わなくてもわかります。ほら形とか可愛くないですし、味もね。確か…美味しくないわけでもなく そんなものでは確かに食欲もわきませんね。」

    言わせません。それ以上。
    聞きたくないから。

    「だってそれはレーナが作ったものだろう?悪い、怒らせるつもりは…っ」
    あらまあ。よくご存知で。
    「いいえ。謝ることはないですよ そもそもわたしがいけないですし…料理下手くそで、すみません。本当に。どうしてこんなものを作って食べさせようとしてるのが今でも後悔してる訳で…。今後気をつけますね大尉。」
    「…っ。」

    では。と小さく声を残して彼女は去って行った。
    まずい。
    これは本気で怒らせてしまった。
    大尉という呼び名が出で来る時は大体『話かけてないください』という合図で。多分かなり怒ってる時にだけ出て来る。
    が、そんなことで諦められるシンでもなく。やはりあの手を使うしかないなあと、シンは一人で思った。

    遠く離れてチラッと後ろを見て彼はただ現地に立ったまま。追いかけて来る様子はなく。何故かまたさらに憤怒が推しかかって来る。

    追いかけて来ないでと誰も言ってないですし。
    もう少し話してくれてもいいじゃないですか。
    呼び止めてくれればもしかしたらわたしも応じてくれたりするんじゃないですか…。
    なんで何もしないんですか。

    なんでこんな複雑で矛盾した気持ちになったのか自分でもよく分からず。とにかくこの男とは暫く顔も合わせたくないのはわかった。


    書類仕事も一通り終わって、時計を見て見るとまだまだ5時で、今日はやけに早く終わったのだなと思った。
    少し…思考も冷静になれた気もする。

    あれは…どう考えてもわたしがいけないんじゃ…料理が出来ないのは完全に自分自身の原因で。彼は率直に感想を伝えてくれたに過ぎなくて…。思わず血を回しすぎました。
    なんてことだと自分の頭を拳で何度も叩く。

    そんな時に。コンコンと。扉を叩く音がする。聞き慣れてるその叩き。

    謝りましょうか。
    …。
    けれど。もしかしてこれは…いい機会では…
    いやいや。そんなことして彼が可哀想過ぎるのでは。
    ですが。これはまたとないチャンスですよ…
    己のうちに天使と悪魔のやり合いが繰り広げられる。
    最後は悪魔の囁きがあまりにも魅力的で負けてしまい、私欲に従うことにする。

    ガチャと扉を開ける。
    「どうしたんですかこんな時間で。お忙しいのだろうに。」
    あえてこの口調で話しかけてみる。
    「…。入っても」
    「ええ。構いませんよ。」
    案の定少ししょんぼりしてるようで、レーナは密かに心の中で踊っていた。

    さて。シンを執務室に入れさせ、ソファーに腰をかけて貰い、紅茶は…淹れないことにする。その方が自分が怒ってるように見えるのではないのかと。
    あとはそっけなく。
    「ではわたしは仕事に戻りますので、大尉はご自由にくつろいでくださいね。」
    シンに向けて微笑んでみる。無論意味含め的なもの。

    圧のある笑みを前にしてこれは仕方ない、こうするしかないなあ、と思った。
    「待って。話したいことがあるから。少し、時間をくれないか。」
    ずっと立ったまま座ってくれない彼女の腕を掴んだ。
    依然と彼女は振り向いてくれないのだが。

    掴んだ。わたしの手を。
    うそ。何なんですか…あんな、いつもと違った声色は…弱々しくて…なんか…可愛い。
    「話したいことならこのまま聞きます。」
    もっと。意地悪してみる。
    「悪かった…。欲しいもの何でも買うし、して欲しいこととか。とにかく許して欲しい。」
    チラッと彼を見て、

    ぐっ。

    何という…まるで主人に見放された犬みたい…。可愛い過ぎません
    と胸のうちで叫びながら。

    少し眉を下げて…いかにも主人に行かないでと言わんばかりの犬みたいな目つきを。
    これは本当にあのかっこいいシンエイ・ノウゼンなのだろうか。
    密かにあわあわとなってるレーナだが。

    でもまだですよ。まだまだです。もっと。
    そんな彼を見てさらに加虐心が増し、なるほど。これがいつも自分をからかう彼の心境だと思いながら感心する。
    意外と心が満たされるかもしれない。

    彼にかけられた言葉の数だけ自分がどれほど彼に好かれているのがわかる。自分は彼にとって大事なのだと。
    知るのが嬉しい。認識するだけで嬉しい。
    だからもっと。足りないからもっと。

    レーナからの反応がないため、今度は両手で彼女の手を掴む。
    「怒らないで。お願い。」

    な…。ななななななななな....っ
    待って待って待って…これ、ダメ…
    やだやだ心臓が…持たない...あわわわわわわわわわわ…っ

    ばくばくと跳ねてしまう心臓がうるさくて、無駄なことだとわかっていながらレーナはこっそり空いた手で胸を強く抑えた。

    「ううううううう…」
    内心で自らとの抗争で変な唸り声が漏れ、掴まれた左手と肩も小刻みに震えたことは自覚もしておらず。

    そろそろ許してもいいのでは…と自分に問いかける。
    あんまりすると酷すぎるのでは。
    でもでもこれは良いチャンスでは…
    いつも感情をあまり出さない彼に、自分への気持ちを知られるチャンス…。
    最初からこういう算段だったのだ。ここで諦めるわけには、
    と。計画は続行だ。

    「レーナ。」

    名前を呼ばれたのだ。思わず振り返ったのは誰もがすることで、仕方ないのだ。そう。仕方ないのだけれど。

    「おれを、嫌いになった…?嫌いになったとか…言わないで欲しい…傷つく。」


    がっは…っ

    まるで矢でも心臓が射抜かれたようだった。

    なんで小犬のような目でみるの?なんであんな言葉を軽々と口から出せるの???
    無理無理無理無理…っ

    「す、すみません…。わたしがいけなかったです…。」
    「… なんで…」
    「わたし…変な算段を…、ううううう…」

    事情を全て彼に打ち明けた。正直に。

    「ふっ。」
    「だ、だって... 普段言ってくれないじゃないですか... 好きとか…その…。わたしだって…」
    ますます小さくなっていくレーナの声だけど、シンはそれを逃さない。

    顔を真っ赤になった彼女のほっぺにちゅっと。口付ける。
    「ひゃあ…っ」
    びくっと彼女は肩を震わせてこちらを見た。
    「ななな、何を…」
    「聞きたいだろう『好き』を。」
    シンは口角を少し上げ、笑う。

    確かに言葉にならなくても表現出来る方法は色々ありますけど... ありますけど…
    けど不意打ちは心臓に悪過ぎてやめて欲しいと思ったどころ、

    ちゅっ。と今回は首が口付けされた。

    心臓が言うこと聞かずドキドキと跳ねて、今にも口から飛び出で来るじゃないのかと思うくらいに。

    「さっきのが一回目で、これが二回目。」
    無言なまま手のひらや手の内を三回目や四回目など言われ口付けをされた。

    やっと終わったのかと思って、ふうと息を吹き出した時、耳を彼に甘噛みされた。
    「ふああ…っ」
    自分でも信じられない程にはしたない声だった。
    片手で耳を押さえ、目を丸くしシンを見据える。

    「ちなみにこれが『大好き』で。」
    少し考える素振りをして、シンはまた微笑みを見せた。

    「『愛してる』はまだダメ。夜まで我慢しないとダメだよレーナ。』
    「はい… なななななにを言ってるんですか…」
    あわあわと茹で上げた赤い頬を見つめ、シンは満足げに笑った。

    「さて、まだやることが残ってるのでもう行くけど。レーナの『好き』も聞きたいところだが。」
    「どうせ夜になったらいっぱい聞けるしな。」

    ふっ。と彼は笑い、シンはソファーから立ち上がり執務室を出て行った。

    可哀想なくらいに顔を真っ赤に染まったレーナだけを残したまま。


    これでこの男の、恋人への認識がまた増してしまった。
    猛犬から子犬へ。
    子犬からはまだ一瞬で猛犬ヘ。
    変換が一瞬で出来、とてもとてもずるい男。

    自分が恋したのがこういう人だと思うと背筋もぞっくとする。
    また自分は彼の手の上に踊らされたのではと自分を疑う。

    さっき向けられた彼の獰猛で欲情まみれた目にぞっくりしながらもドキドキで少しだけ…少しだけ夜の到来を心待ちしてしまったのである。

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