君にもらった靴で君の元へと歩き出す 希望ヶ峰学園を卒業したゴン太は素足の生活からちょっとずつ靴を履く生活へと日常を変化させていた。確かに冬は寒いから靴はあったかい。けれど窮屈で仕方がなく、でもこれも紳士になるためと頑張って靴に履き慣れ始めたかな?と思いはじめたある日の卒業して初めてのゴン太の誕生日のことだった。
宅配物が届けられる。一枚のメッセージカードと共に。それはもう会うことはないと言っていた友人からのものだった。
『お誕生日おめでとう。卒業式ぶりかな?悪の総統としては手下の一人くらい労ってやらなきゃだからプレゼントを贈ります。じゃあまた、次のお前の誕生日に。 悪の総統 王馬小吉』
そう綴られたメッセージには【嘘】という言葉は何一つ書かれておらず、けれど来年も祝ってくれる。そう書かれたことがとても嬉しかった。そしてそれから毎年、毎年、王馬くんはゴン太と直接会うことはなくそれでもプレゼントを送ってくれた。律儀にメッセージカードと共に革靴を。驚くくらいゴン太の足のサイズにぴったりで、それでいて王馬くんの愛情を感じるのにも十分なもので、いつしか真正面から王馬くんと会えるようになってもそれでもこれは続いていく。それがくすぐったいようなよく分からない思いだったけどゴン太は好きだった。
ーーそして今日は、そんな王馬くんとゴン太が初めてデートする日だ。
王馬くんにこれまでプレゼントしてもらった革靴がずらりと並ぶシューズラックを見て考える。今日は特別な日だ。何を履いていこうか…そう考えて、初めて王馬くんにもらった革靴を手に取った。これはゴン太にとっても特別で、王馬くんとの関係がこれまで切れなかった理由でもあるから。
(王馬くんは気づいてくれるかな…)
きっと気づいてくれるに違いない。だってあの王馬くんなら、嘘を大事に、言葉を大事にする王馬くんならきっといの一番に気づいてくれるのだろうという確信が心の中に広がった。
靴を履き終え全身鏡で服装をチェックするとそのまま外へと扉を開けて歩き出した。
君にもらった靴で君の元へと歩いていく。どこにだって行けるゴン太はそうやって君の隣を選んで歩き出すのだ。
-Fin-