レオナの視界から太陽が消えた。一瞬のことで、レオナが反応したのは半拍ほど遅れてからだった。レオナの口から零れた間の抜けた声は、喧騒に掻き消されて誰にも聞こえなかったことだろう。呆けるレオナの目の前を幾人もの人が慌ただしく行き交い、砂埃が渇いた空気に乗って舞い上がる。
「早く救助を!」
「木に引っかかっている!王はご無事だ!急げ!」
崖下を慎重に覗き込みながら騒ぐものや、その声を受けて走り去るもの。周囲の時間から置き去りにされたようにレオナはただ立ち尽くしていた。そんな空気を甲高い声が切り裂いて、レオナはようやく声の方へと向き直る。一人のカラカルの獣人の男が大きな耳をぐるりと回し、レオナを指差し叫んでいた。
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