深淵の輝石箱 ハデス館の外れ、冥界王子の秘密の裏庭で暇を持て余した骸骨男は、組み合わせた両手の関節をポキポキ鳴らすと恨めし気な視線を壁前の一角へと向ける。
「坊ちゃん、そろそろあっしにも《仕事》をさせてくだせぇ!……《掃除》ならあっしと同じくらい働き者のゴルゴンにでも頼めばいいじゃないですかい?坊ちゃんには似合いやせんよ!」
「―もう少し待ってくれ、スケリー。これが済んだら、ちゃんとおまえの《手入れ》もしてやるからさ!」
背を向けて黙々と作業していたザグレウス王子は少しだけ振り返ると悪戯っぽく笑う。
「……はぁ、口ばっかり達者になられやしたね」
骸骨男の呆れた風な呟きと共に口蓋の中の2オボロス貨がからりと乾いた音をたてた。
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