愛されたら愛せない絶対に私を愛さない男
いとおしい古き血のおまえよ




私は生来、魅了使いだ
女はもちろん男でも
私が瞳を覗き込み
優しく笑って、ひとこと褒める
それでもう全ての男女は思い通り
私を賛美し褒めそやす

だがそれに何の意味があるだろう
移ろう心に価値などない

愛とは時に恐ろしいもの
幼い頃は力の制御が上手くいかず、
命を狙われる事もよくあった
銀で足止めを、
十字架で監禁を、
聖水で命を、
種々様々な方法で
愛と言う名の免罪符を手に
それらは私を苛んだ

皆、口々に叫ぶのだ
「愛しているから、こうなった」
「こうするしか他に手はなかった」と



愛などというモノはない
独占欲と執着心、
対象を入手する事により得る優越と虚栄だ


だから私は能力を磨き
魅了を強めるしかなかった
相手の意思を刈り取る為に

私を害そうなどという
思考自体を壊せば良かった
もちろん人格に障害が出たが、
私は迷いなくそうし続けた
吐き気がしたが、そのうち慣れた
身を守るためには
それが1番確実だった


私は、誰とも愛し合わなくなった
いや、初めからそうだったのかも知れないが
皆、私が覗き込めば、私を愛する
身を呈する事も躊躇わない妄信だが、
その瞳は常に濁っている
私は、彼ら彼女らを愛してはいない
愛されたら愛せない
吐き気しか覚えないから

ただ、花を愛でるように眺めるだけだ
己が手ですり潰した人格を愛する程には
私は歪んでいなかった



「さースディン！」

鮮烈な稲妻よ
白銀の狼よ

私に
他者を愛さない私に
無害な愛を見せてくれた唯一
強大な竜の血に裏打ちされた、
傲慢な程に善良なおまえ
私の魅了に掛からない男よ

「息子を頼みたいんだ」

1番大事な存在を、笑顔で私に預けると語る
何でもない事のように
素晴らしい事かのように

何故なら其処には、
友愛があるからだ
信頼があるからだ
真っ直ぐな意思の光がある
私にとって猛毒のようなおまえ
この身を炙る地獄の業火よ
私を性愛では愛さない唯一

「ミラさんがさぁ」
「なぁ親友！」
「ドラルクがぁぁ〜！」
「どうしよどうしよ！」

騒がしく愛おしい
どうかおまえはそのままで。





という感じの妄想を