やがて殯(もがり)の刻を迎えても『こんにちはー』
あの日から数日経ったとある日の昼下がり。いつものように店を開ける準備をしていると聞き慣れた声が聞こえてきた。
店の主たるオベロンが扉を開ければ予想通り、そこには立香の姿があった。
『あぁ、きみか。いらっしゃい』
『診てもらう時間より早く来ちゃって、大丈夫でした?』
『良いよ、入って待ってて』
ありがとう、立香は小さく礼を言うと店内に入り、ソファーに座って大人しく待つことにした。店内ではオベロンが花達に霧吹きを掛けてやったり、水を替えたり剪定をしたりと仕事に勤しんでいる。普段見ない彼の《花屋の店主》の顔を垣間見た立香は興味深そうに目で追い続ける…
『…そういえば一つ気になってたんですけど』
『なに』
3948