オベぐだ♂現パロ(学パロ)タイトル未定『今度はきみが何処かへ連れて行ってよ』
始まりは、その一言。
大学三年生になって迎えた初夏、レポート作成に勤しんでいた藤丸立香へと投げられた一言。
言葉を発した主はにこやかな笑みを携えたオベロン・ヴォーディガーン。
『えっと、…急にどうしたの?』
『いつも僕がきみを連れ回していたけれど、今度は立香が連れて行ってくれたらなぁって思っただけさ』
『はぁ…言われてみれば、確かに』
『だろう?お互いとレポートとバイトで忙しくなるけど、冬頃に行きたい』
『(また期間が微妙な……。冬か、何かあったっけ…)』
『そんなに先の話じゃないと思うけどね』
『あはは……まぁ、うん。予定は立てとくよ』
『了解。じゃあその時を楽しみにしてる』
そう言って彼は楽しげに去っていった。
……… そして、時はあっという間に流れて冬になり約束通り二人で旅行に出た。
行き先は特に決めていない。気になった場所があればそこに行くという何とも適当なものだった。
ただ、一つ言えることは―――とても楽しいということだった。
待ち合わせ場所ではぁ…と息を吐いて手を暖めて待っていた立香の元にオベロンがやって来る。
『相変わらず時間ピッタリ』
『僕が待ち合わせ時間に遅れた事ある?』
『ううん、一度もない。にしても寒いね…』
『冬だからね、手袋忘れたのかい?ほら貸して…これなら温かいだろ』
そう言うと冷えて赤くなった立香の手を握って自分のコートのポケットに招き入れる。一瞬だけ驚いて肩を跳ねさせたけれど、立香は照れくさそうにポケットの中でオベロンの手を緩く握り返した…。
彼らが“こういう”関係になったのは、ちょうど大学一年の初冬頃。
写真部に所属する立香が、一眼カメラを手に構内の空模様を撮影していた時 たまたまレンズ越しに写ったオベロンを撮影したのがきっかけだった…
あの日、いつものようにキャンパス内を歩いていた彼の横顔を撮った瞬間、立香はその写真をどうしても手元に置いておきたくなって、現像した後にオベロン本人に手渡したのだ。
『あの…これ、この前の写真なんですけど』
『おや、いつの間に撮られていたんだろう…全然気が付かなかったよ』
『偶然ですよ、本当に』
『ふぅん……きみ、名前は?』
互いに互いを認識したのはこの日のこの時が初めて。互いの名前を知ったのもこの時。それから数日後には二人は連絡先を交換していて、頻度は少ないがにメッセージを送り合うようになっていた。
そして季節は巡って大学二年の夏に入る頃、二人の関係は友人から恋人に変わった。告白したのは、意外にもオベロンからだった…。
『あの時びっくりしたよ、食堂で“きみが好きだ”って言われた時は食べてたカレー吹き出しそうになったんだから』
『そう?中々の驚きがあって良かっただろ』
『人前で!ご飯食べてる時に言うセリフじゃないだろ普通!』
『我儘さんだなぁ』
旅行先へ向かう船の中、甲板デッキへ出て冬の海飛沫を体験しながら出した話題で会話が弾む。その当時起きた出来事を思い出して頬を赤らめる立香を他所に楽しげに揶揄うオベロンを見て立香はむぅっと頬を膨らませる。
『でも、嬉しかっただろ?』
『う、うぐぐぐ………っ』
悔しい事に図星のようで反論出来ない。そんな立香の様子に満足気に微笑んで隣に立つと、そっと手を伸ばして頭を撫でてやる。暫くそうしていると、恥ずかしさが限界に達したのか立香が声を上げた。
『もーっ!子ども扱いしないで‼』
『あはは、ごめんってば』
『全くもう……あ、そういえば。オベロンはさ、どうして俺の事好きになったの?もしかして、一目惚れ?』
『さてね、内緒……だよ』
クスリと悪戯っぽく笑ってそう返せば人目が無いのをいい事に立香の額へ口付けを落とす。突然の出来事に目を見開いて固まる立香を見て楽しげに笑うとそのまま船内へと戻っていった……。
『~~~っ、ズルい…』
(今のは、反則だろ……‼)